頸損だより1999秋(No.71)

頚損から見た辱創

延澤庸行

前ページに載っているロンボ・ケアを7月から使っている延澤です。私は昭和60年に星ヶ丘厚生年金病院を退院したのですが、その際に整形の先生から「君は辱創ができやすい体質だから気をつけなさい。」と言われたのですが、その言葉の通り、受傷から16年の間に何度も辱創になっています。辱創になるメカニズムについては原田産業さんの記事に書いてありますが、頚損が辱創を作る原因としては、大きく分けてこすれと圧迫の2通りがあると思います。幸い私の場合はプッシュアップがかなりできるのでこすれが原因で辱創ができた事は無いのですが、自分で乗り移りをする人であまりプッシュアップのできない場合は、どうしてもこすりながら乗り移りをするので、仙骨や尾骨の所の皮がむけてしまうようです。私の場合は圧迫が原因で辱創ができます。辱創のできる場所は、坐骨、腸骨、足の小指の付け根です。坐骨については車椅子に乗っている時と車に乗っている時の圧迫が原因のようです。車椅子については側湾がきついのでロホクッションはだめだと言われたので、ずっと車椅子を買った時についてきたスポンジのクッションを使っていました。その時はほぼ15分おきに1分近くプッシュアップをして除圧をしていたのですが、プッシュアップが貧血の原因にもなるので、かなりしんどかったです。これだけプッシュアップをして除圧していても、5時間ほど車椅子に乗っていると、坐骨部は真っ赤になっていました。まだ会社に出社しているときは、会議中などにはそう頻繁にプッシュアップができないため、それが原因で右坐骨部に辱創ができて、半年近く自宅で寝込む事になってしまいました。数年前にJAYクッションを買ってからは、プッシュアップも20〜30分おきでよくなり、坐骨部の赤さもかなり薄くなりました。ただ10時間以上車椅子に乗っていたりプッシュアップが少なかったりすると、やはり真っ赤になってしまいます。車に乗っている時は右手をハンドルに固定しているためプッシュアップができないので、長時間運転しているとやはり真っ赤になってしまいます。腸骨については車椅子の背もたれ、車のシートの背もたれ、夜寝るときに仙骨を浮かすために腰の両側に入れるスポンジでの圧迫が原因です。腸骨に辱創を作った一番の失敗は、車に乗り始めた時は坐骨ばかりを気にしていて背中のことをまったく考えていなかったため、シートの背もたれにはクッションをつけていなかったので、シートが硬すぎて圧迫で右の腸骨部に辱創ができて骨までいってしまい、入院して手術をするはめになってしまいました。今は1枚物のムートンをシート全体につけています。足の小指の付け根は車椅子の足を置くベルトでの圧迫が原因です。何度も同じ所にできているので、車椅子の構造自体を変える事を考えないといけないかもしれません。

夜寝る時についてなのですが、今までは腰の両側にスポンジを入れて仙骨を浮かしていたのですが、これではかなり不自然な格好になってしまいます。10年以上これでやってきたので慣れてしまったというのがあるのですが、今回しいえすまんぼうさんから一晩べったり上向きで寝ていても大丈夫かもしれないという事で、ベッド用のマットを紹介してもらいました。最初は前ページに載っているソフトナースというのを借りたのですが、これだと仙骨と腸骨の所が少し赤くなりました。その次にロンボ・ケアを借りたのですが、これだと一晩べったり上向きで寝ていても、仙骨部も腸骨部もまったく赤くなりません。通気性も良いのでむれる心配もありません。これだけ辱創のできやすい体質の私で効果があったので、他の方々も試してみる価値は十分あるのではないでしょうか。ただ私の場合は徑性がものすごくきついので足をベッドに縛って寝ているのですが、そのためにかかとに必要以上の圧がかかり、かかとが少し赤くなります。それにしても、辱創を気にしてあちこちにスポンジを入れたりする必要も無く、自然な状態で寝る事ができるのでものすごく楽です。一度皆さんも試してみてはどうでしょうか。

辱創については体質というのがかなり影響しているようです。12時間ほど車椅子に乗っていてその間まったくプッシュアップをしなくても、どこも赤くならないというのを聞いた事があります。そういう話を聞くと、辱創のできにくい体質の人が本当にうらやましいです。しかし辱創ができやすい体質だというのはどうしようもない事なので、自分でいろいろと工夫をしたり情報を得たりしていくしかないでしょう。また、側湾の影響もあります。側湾がきついと左右どちらかの骨が出ているので、骨の出ている方に辱創ができやすいです。私の場合は右の骨が出ているので、いつも右側に辱創ができます。ちなみに、右の腸骨は辱創の手術のときに削ったので、それ以後は何とも無いです。とにかく辱創を作らないためには、いかにして摩擦を避けるか、いかにして除圧をするかという事を考えていくしかないでしょう。

実際に私はソフトナースとロンボ・ケアを使っているので、使ってみた感じについて話が聞きたいという方がありましたら、自宅の方に電話をしてもらっても結構です。できれば夜の9時前後が一番都合がいいです。

最後にしいえすまんぼうさんについてなのですが、今回は床ずれ予防マットの紹介だったのですが、あらゆる福祉用具を扱っておられます。福祉用具と聞いてすぐに思いつかないようなものを列挙してみます。シャワーチェアー、浴槽の底のすべり止めマット、体の一部を除圧するクッション、リフト、折りたたみ式の簡易スロープ、食事の自助具、ナースコールのようなコール装置等々本当に幅広く、細かなものから住宅改造まで扱っておられます。何か必要とされているものがあればたずねてみられたら良いと思います。

今回の話が皆さんの参考になれば幸いです。

延澤庸行(のぶざわつねゆき)

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