頸損だより1999秋(No.71)

淡路島だより 99秋

安藤ひさ子

初秋であるのに残暑厳しくエアコンから遠ざかることが出来ない。

夏7月の末に息子の車で川西市の親戚の家に運んでもらった。当然明石海峡大橋を始めて渡った。過去にはこの海峡を小さな渡船で島の人々を運んで居たことが今、懐かしく思った。海が荒れると怖い思いもしたのに現在橋が出来たおかげで、5分もあれば神戸に着く、本当に感無量の思いで渡った。橋を渡る前にトイレタイムを取るためにサービスエリアで下車をし暫く海峡大橋を眺めて遊ぶ、土用の風が吹いて海も荒れていた。軽量の車椅子が吹き飛ばされそうだったが、車椅子の身でありながらも旅気分になり幸せ者だと思った。橋を渡って阪神高速道へと進み震災で崩れ落ちた所も新しく補強されていたが当時の震災の怖さがよぎった。しかし、見渡す限り神戸の街も淡路島もすっかり復興の兆しを見てほっとしたことだ。

川西より用を終え帰路に至ったが、途中新しい大型スーパーに入り暫く店内で買物をしたり喫茶で休息をして楽しむ。又道中、美しい向日葵畑に目をまるくして一望したりしながら山陽道を経て明石大橋に辿り着いたのは黄昏刻であった。ここでトイレタイムを取るために再びサービスエリアに降りたところ大勢の観衆が手に手にうちわをもって、展望台に座っていた。花火大会かなと思って覗きに行くと係りの人が「今から始まります」と言いながら大橋写真入のうちわをくれた。「何が始まるの?」実は夜になると大橋に毎日ライトが点灯して美しく輝き、1ヶ月パターンでライトが変わるのである。運よくその説明会が始まった。一年中、月毎に変るライトアップパターンを実況しながら説明をしてくれる。帰りが遅くなるよと言ったが息子が「せっかくだから見よう」と言ってくれ最後まで見た。偶然の期会にめぐり合うことが出来、「宝石1→ガーネット」と説明に合せて繰り出すライトの煌きに暫く空想の世界に浸っていた。私は幸運だと感激である。日帰りであったが何か遠い所にでも旅して来た思いの夏の想い出と成った。膝の骨折もすっかり良く成り嬉しいことだ。リハビリも順調に進んでおり、PTの先生からもっと自立しなさいと励まされ通院の際に介護者なしでは行けないと思い込んでいた私に「一人で行けるよ」と言われ、人に頼りすぎとも言われ、勇気を奮ってタクシーで一人で通院を始めた。やれば出来るんだと大きな自信が出来た。その訳がもう一つある。乙武洋匡さんの「五体不満足」を一読して励まされたこともあった。乙武さんは、両手両足がない障害をもっての誕生であられる。色々なことに挑戦しながらすべてを克服され普通の子と同じ義務教育を受け現在大学で学んでおられる。何の違和感もなく、不自由はあっても不満はない、と語られ立派な生きられ方に感動した。読み終えて自分の事を振り返り、PTの先生から人に頼るなと言われた事も深く反省をしている。やれば出来る可能性は限りはない、神様が与えて下さる力なのだと信じる、勇気と努力は自分との戦いでしかないと思う。私が頑張れば周囲の方々も喜ぶ、その姿勢がお役に立つことではなかろうかと思う。これからも自立に向けて色々なことに挑戦して行きたいものと心を奮い立たせている。

土用波たつ大橋を渡りけり

星涼し「五体不満足」読み終へる

注 写真は省略しました。

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