頸損だより1999冬(No.72)

赤尾さんのシネマに首ったけ


「ラン・ローラ・ラン」を見てきました。

裏金の運び屋をしているマニはある日、地下鉄の車内に10万マルクという大金を置き忘れてしまった。このお金はかなりヤバいお金だから、20分後にある男に渡さなければ殺されてしまうかもしれないんですが、車内に置き忘れたお金はホームレスの乗客に持ち去られ...。窮地に立たされたマニは恋人のローラに救いを求めた。ローラは愛するマニを救うために、なんとかしてお金を調達しようとベルリンの街を走る!走る!走る!タイムリミットは20分。果たしてローラは時間内に10万マルクを工面できるのか?

81分という短い映画なんですが、そのうちの3分の2くらいはローラが走ってるシーンなんですね。このローラの走りっぷりが実に気持ちがいいんです。僕も頸損になる前は部活でよく走ってましたが、その頃はただ苦しくてしんどいだけだったから、部活を辞めたいと思ったことは数え切れないくらいありました。でも、走れなくなった今となっては、いくら「思いっきり走りたい」という気持ちがあってもそれは叶わぬ夢。走れないのはすごく悔しいです。もし頸損が治ったら、僕が真っ先にしたいのは「全力で走る」ことです。赤い髪をなびかせながら街を疾走するローラの姿を見てると、ふとそんなことを考えてしまいました。苦しいだけじゃなかった。風を切って走ることは気持ちが良かった。映画を見た帰りはもちろん、電動車椅子はフルスピードでした(笑)。結末は3パターンあって、それがRPG的に展開するんですが、途中でアニメーションになったり画面が分割したりして、「20分」というタイムリミットの緊迫感に興奮させられる作品でした。

オススメ指数70%

「ブロークダウン・パレス」を見てきました。

卒業旅行で自由の国タイを訪れたアリス(クレア・デーンズ)とダーリーン(ケイト・ベッキンセール)の仲良し二人は現地で親切にしてくれたハンサムな青年ニックに心惹かれ、彼に誘われるままに香港へ行くことにした。ところが、空港の税関でいきなり銃を構えた警察官に取り囲まれ、バックの中身を調べたら、そこから全く身に覚えがないヘロインが。麻薬密輸の容疑で逮捕された二人はそのまま刑務所に送られ、懲役33年の刑が下された...。

なんとも恐ろしい話でした。知らぬ間に麻薬の運び屋にされ、無実を主張するも通らず懲役33年の刑が下される。前にテレビで獄中から無実を訴える日本人の服役囚を見ましたが、これって誰の身にも起こりうることですもん。言葉が通じない上に司法制度が違う国で犯罪に巻き込まれたら、いくら無実を訴えてもなかなか聞き入れてもらえないし、何が書かれてるか解らない書類にうっかりサインをしてしまったら、それが罪を認める書類だったりすることもあるから、無実を証明するのは容易なことではない。海外で犯罪に巻き込まれる危険性は少ないかもしれないけど、もし万が一自分の身にふりかかったら...と思うと、僕は怖くて、とても海外に旅行する気にはなれないですね。ま、万が一のことを考えてたら何も出来ないけど。タイはすごくいい国らしいんですが、こんな映画を見てしまったら怖くてとても行けません。汚い刑務所(=ブロークダウン・パレス)で33年も服役するなんて、考えただけでゾっとしますが、東南アジアでは現実に何人もの外国人が無実の罪で服役してるとか。だから、リアリティがあって恐ろしいし、異国で開放的な気分になってたらスキが生まれるから、海外に旅行するときは十分すぎるほど注意しなきゃ...って思わされる映画でした。

オススメ指数70%

「マトリックス」(99アメリカ)

<ストーリー>

大手のソフト会社に勤務するプログラマーのネオ(キアヌ・リーブス)の前にある日突然現れた正体不明の美女トリニティ(キャリー=アン・モス)。彼女はネオに「あなたが今いる世界はコンピューターが作り出した仮想現実」と告げた。ほんとうは2199年。世界は人工知能が発達したコンピューターに支配され、人間はそのエネルギー源として栽培されていたのだ。真実を知ったネオは自分たちの世界を取り戻すために、人間の救世主としてコンピューターと戦う決意をするが。(梅田ピカデリー他、松竹系で公開中)

どうして世界はコンピューターに支配されてるのか?どうして人間は栽培されてるのか?今いる世界が仮想現実とはどういうことなのか? きちんと説明してくれるんですが、それでもちょっとややこしいから、頭の回転が速くないうえに集中力がない僕は途中で頭がクラッシュしそうになりました(笑)。でも、ストーリーがややこしくても映像は口がポカーンと開いたままになるくらい迫力満点だ し、体が熱くなるほど興奮します。この監督は日本のアニメに大きな影響を受けてるんですが、随所にそれが感じられるところがまた面白い。ネオがカンフーの訓練をするシーンなんて「ドラゴンボール」だし、エージェント(ネオの敵)が繰り出すパンチは「北斗の拳」のケンシロウそのもの。ネオが戦いながら強くなっていくというのはまるで孫悟空ですもん。この映画、とにかくカッコよくて面白い。僕も全身黒ずくめのスタイルでネオになりきってみたいぞ。でも、似合わないだろうなー(笑)。

監督:ウォシャウスキー兄弟(「バウンド」)

出演:キアヌ・リーブス(「スピード」)

オモシロ度:★★★★1/2(★5つが満点)

オススメ度:★★★★


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