頸損だより1999冬(No.72)

淡路島だより 99(冬)


安藤ひさ子

11月3日、小春日に恵まれた文化の日、三原町公民館に車椅子の私の一人外出をこころみた。図書館と公民館が続いていると聞いていたので、エレベーターを設置している図書館より入った。作品展を見に来ている人々に溢れていた。そこで見知らぬ人に公民館へ移る通路をたずねたら「解からない」と断られた。早くも打折だ。今度は職員さんを探して同じ事をたずねたら「ちょっと待って」と言われ、しばらくして別の職員さんを連れてこられて、通路はあるけど車椅子ではちょっと無理かと思うという返事だった。その上、「介助者の方は誰もいないのですか」との言葉にあきれてしまいました。自立のために一人で出かけて来たことを理解してもらえず、悔しいと思った。しかし、ここまで勇気を出して来たのだから何とか作品展を見て帰りたいと思い、職員さんにお願いして通路を手伝ってもらい、公民館へ入ることが出来、ほっとしたことだった。自立したい願いをぶちこわされた悔しい思いもしたが、田舎町だから健常者の理解が乏しいのだと思いを変えて作品展巡りをした。一人でゆっくり時間をかけて、書道・絵・パッチワーク・俳句・短歌・盆栽・生花・手作りの小物と、車椅子の身であることをふと忘れて遊ばせてもらった。和室に展示してある手まり展の前で段差があり、入りたくても入れない。誰かに手伝って貰わないとと思ってうろうろしていてもそこを通る人々を皆んな無視して通り過ぎる。何分間かして、やっと知り合いの人に会い、押して貰い和室へ入れてもらった。トイレは車椅子で入れない。町の利用者が少ないのかもしれないが、公民館として車椅子者には少し困難な建物だと悲しい思いになった。設備を少し考えて頂きたいとも思う。

やっと外に出てみると菊香る菊花展、菊人形に近づいて心を和ませ、楽しませて貰うことが出来たことを改めて嬉しく思いつつ帰宅した。この日も、障害を持つ者の苦悩と喜びであろうかと思った。今年はいつまでも暑い日が続き、いきなり冬がやって来たという天候に惑わされながらも山はきっちりと紅葉し美しさに感銘し、喜び、瀬戸の海をつなぐ鳴戸海峡大橋を眺め、障害を持ちながらも幸せを思いながら過ごしている。田舎で、不自由・不便さはあっても、空気はいいし、四季の移り変わりはきっちり見せてくれる島に住んで、生かされて生きている私は幸せである。できる限りの自立をめざして、これからも頑張らねばならないと2000年に向かっている。

会員の皆様もよいお年をお迎え下さい。


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