頸損だより2000夏(No.74)

必殺!仕事人シリーズ

曽我部教子

大阪頸損連絡会の皆さんこんにちは。

いつもお世話になっている曽我部ことがべちゃんです。今日は、仕事について欲しいと頼まれて、これを書いています。頸損連絡会の機関誌は、いつも楽しみにしております。役員の皆様にもお世話になりっぱなしです。改めてお礼を申し上げます。私の文章が、どなたかお一人でもいいから、役に立ってくれることを信じながら書いてみます。

(1)障害を持つ私の生活状況・・・ 私は、頸髄損傷、C4レベルの完全麻痺の障害者です。機能的には、首から下は全く無感覚、そして、自分の意志ではどこも動かすことが出来ません。便や尿も自分では出来ません。肺活量も普通の人の1/3ですし、消化器官の動きも悪く、体温調節もできません。 こういう私ですが、家族に頼らず、地域で生活し、復職して教師の仕事をやっています。中学の理科が担当です。まず、私の同居している人達を紹介します。ヘルパーさんと2人の同居人さんです。ヘルパーさんは、私の介護一切と、炊事・洗濯・掃除などの家事を全部やってくれています。職場にも一緒に来てくれて、授業の予備準備やプリント印刷などもやってくれます。彼女の勤務時間は7:00〜19:00です。夜は泊まり込みです。2人の同居人さんには、ヘルパーさんが仕事を終えた19:00から、私が寝るまでの時間をベッドサイドで介助をしてもらっています。同居人さんには、部屋代無料、光熱費半額の条件で、同居してもらっています。おもに学生さんで、近畿2府4県と私の出身地の愛媛県の高校に手紙を出して、同居人を募っています。

(2)障害者と復職への道・・・ 私のような非常に重度の障害者が、なぜ復職できたのか、しかも、中学の理科の教師に。復職を強く望んでいた私でさえも「ラッキーだった」としか言えません。しかし、復職できた要因はあります。それはまず、私自身がなんとしても復職をとの非常に強い意志を持っていたことです。そして、休職中にも関わらず、復職を強く望んでいた私に、授業の機会を作ってくれた仲間がいました。3年半の入院後に、障害を持って初めて立った教壇は、豊中の小学4年生の授業でした。保護者参観日でした。私はこの授業で強烈に「子供と共に学ぶ」楽しさを再確認しました。次の授業は、枚方の中学2年生の授業でした。この授業も、公開授業で70名くらいの教師が参観してくれました。二つの授業で、「教師がやっていける自信」が持てました。と同時に、テレビや新聞が授業を好意を持って報道してくれました。そのことが復職への強い力となり、私の願いを支えてくれるたくさんの仲間を増やしてくれました。 次に、関西労災病院の主治医が復職可能との判断を下し、診断書に書いてくれたことです。ただし、条件がありましたが、今は省略します。次に、この当時(1992年頃)の尼崎の政治状況が私に味方してくれました。くわしく書くと差し障りがあるのでご勘弁を。そして最後に、復職が実現したのは、やはり兵庫県教育委員会と尼崎市教育委員会の大英断でしょう。これらが全部合わさって、私の復職が実現しました。1993/2/8に辞令をもらいました感無量でした。

(3)現在の仕事の内容・・・ 私の今の身分は教諭で若葉中学校所属になっていますが、勤務は、尼崎市立教育総合センターで研修中という位置づけになっています。センターへの出勤は、週4日です。通勤はJA尼崎駅まで20分以上かかるので、ぜいたくですが、往復リフトタクシーを使っています。この通勤方法は、私の為ばかりではなく、長時間労働のヘルパーさんの負担を軽くする意味もあります。車椅子は手押しです。

仕事の内容は、理科教育の分野の授業案の提案や、障害者教育についての提言や、自分の授業の教案作り、そして、自分の授業の授業記録や分析をまとめたりしています。文章は全てパソコンに自分で打ち込みます。口に棒をくわえて、キーボードを打つのです。写真や実験図も、口にくわえた棒で、スキャナーでパソコンに取り込んでプリントアウトします。センターでの勤務以外に、授業や講演に出かけます。 授業は、若葉中学では、毎年18時間が組まれています。若葉中学以外の授業は「出前授業いたします」と紹介していて、昨年度は市内の中学で2回、豊中の小学校の4年生3クラス(つまり3回)、茨木市の小学校4年生全員の授業、地域の青少年会館での授業を依頼されて出かけています。授業は、全部実験をします。予定されている授業日以前に、理科の係りの子供達に集まってもらって、実験のやり方を覚えてもらいます。そして当日に備えます。ヘルパーさんに実験を頼むこともまれにあります。今までに行った実験の一部を紹介します。「牛の目の解剖」「ニワトリの内臓の解剖」「牛・馬・ライオンの頭骨(本物で自分で作ってあった)を使った授業」「密度(水銀に鉄や銅を浮かしたり、石を浮かせる液体を使ったりして)の授業」「化石のレプリカ作り(プラスチック素材で作りたい物の雌型を作り、その中に石こうを流し込んでレプリカを作る)の授業」などです。みなさんの知り合いで、理科の授業をして欲しい児童会や学校その他の団体などがあれば、是非ご紹介ください。授業の出前致します 講演を頼まれたのは、保育園児の保護者・小学生・小学校の教職員・中学生・高校生・大学生・地域のボランティアグループなどからです。授業も、講演も基本的にお引き受けしています。また、講演は、みんなに支えられて生きている私がお役に立てる事柄だと思っています。 講演や授業、センターでの勤務以外に「がべちゃんニュース」と理科通信「ポンコツポンド」を出しています。「がべちゃんニュース」の内容は、ほとんど私が書いています。300人くらいの人に出しています。封筒の宛名入力や封筒詰め、発送作業は支援の会のメンバーがやってくれています。「ポンコツポンド」は、家庭で出来る理科実験や、自然観察などが、内容になっています。2ヶ月に1回くらいの割で出しています。対象は、尼崎市内の中学生と、知人、理科で知り合った仲間です。思った以上の反響があり、うれしさと責任を感じています。もし、ご希望の方がいらっしゃれば、お送りします。どうぞよろしく。「がべちゃんニュース」は大阪頸損連絡会の機関誌に掲載して頂いています。いつもありがとうございます。THE END

注 写真は省略しました。

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