頸損だより2000夏(No.74)

【バリアフリー探検】

ピピアめふ

坂上正司

昨年11月に阪急宝塚線売布(めふ)神社駅南側に震災復興再開発で完成したショッピング・モール、公益施設、集合住宅の複合施設ピピアめふに行ってきました。

雨の中の取材でしたので、取り合えず駅に近い「ピピアめふ1」の方を見てきました。

B1〜2Fまでコープこうべがコア店舗となって、震災前に阪急ショップ・センター、めふ市場に入っていた店舗が並んでいます。

エレベータの位置は駅からは反対側のさらに建物外部という不便な位置にあります。その上案内標示が少なく、あっても非常に小さく、また動線(人の流れ)というものがあまり考慮されていない、いわゆる高齢者障害者には全くやさしくないつくりになっていることがわかりました。基本計画の前に一度話には行ったのですが、その後私に隠れるようにして話が進められたようで、地元ながら情けない限りです。みなさん、都市基盤整備公団(旧:住宅・都市整備公団)施工の開発、再開発には注意が必要です。

さて、エレベータは車いすが3台入るタイプのものが2基(身体障害者対応型)ありますが、現在の階数の音声標示がなく困りました。それから、何度注意しても、身障者用のボタンの前に灰皿が置かれていて、車いすでは寄り付くこともできません。それに扉の開放時間も短く、何のためのエレベータなのか首を傾げたくなります。また、駅からエレベータまでは店内迂回スロープというなんとも情けない構造になりました。基本計画の前の段階で、あれだけ店舗内の基準の高さについて注文をつけたのに、全く無視されたかたちです。

旧国道側への出入り口も、メイン動線(この場合は横断歩道へ向かう動線)と逆方向に迂回スロープが設置されており話になりません。

各フロアはよく似た構造になっているのはいいのですが、トイレの位置が主動線から離れていて、いずれもひとつ奥まった位置にあり、さらにトイレであることの標示が前まで行かないとわからない、また動線としての誘導するものが皆無というありさまです。これも、基本計画の前の段階で「トイレは主動線のそば」と詰め寄ったことを無視されたことになりました。ついでに、身体障害者対応型トイレは教科書通りのものでなんの新しい工夫もなく、障害者団体の意見もとり入れられていないものでした。

全体として、ピクトグラム(絵文字)は少なく、あったとしても小さく、視聴覚障害者、知的障害者、高齢者にはやさしくないものでした。

床材はいずれも絨毯などは使っていないため、車いすでも盲導犬でも使いやすかったです。

4〜6Fは公益施設で、4Fがレンタル・キッチン、パーティ・ルーム、ダンス・ルーム、5Fが常設のミニ・シアター、6Fが和室になっています。

4Fのレンタル・キッチンは車いす対応型のシンクとIHレンジがあるもののひざの入る奥行きが少なく、ちょっと使いづらいものでした。さらに、シンクによりつく前にキッチン・テーブルが邪魔をしてしまいます。ユーザビリティと配置をもう少し考慮してもらいたいものです。

5Fには常設のミニ・シアターが2つ。ひとつは東宝封切館で、もうひとつは企画ものでした。

定員は46名で車いす専用席が最後尾入り口そばに一つあります。無理してはいると入り口付近にもう一人分車いすで入れそうですが、通路が階段になっているため、既存の映画館のように通路で見ることは無理です。難聴者向けのヘッドホンが各20づつ設置されており、音響は抜群のようです。入館料は1,700円〜。身体障害者は付きそい一人まで1,000円になります。小さくても常設というのは非常に魅力でした。

シアターのエントランス・ホールにはバ「グダッド・カフェ」という喫茶&軽食の店があって、オープン・テラス風にテーブルが配置されているので、車いすでも余裕をもって入っていけます。待ち合わせするもよし、ボうーっとするもよし、ユーティリティ溢れる空間です。値段的には決して安くはないですけど、映画館前としてはお手ごろではないでしょうか。

6F和室ゾーンは、車いすで入ることを全く考慮していないそうで、話によるとこれから考えるそうです。あの構造でこれから考えられることは壁をぶち抜くことしか考えられないですが、どう考えても構造的に無理でしょう。設計者も施工者も何を考えてつくったのやら。

ということで、ミニ・シアターが無ければ大荒れに荒れていたところでしたが、大まけに負けて9点というところでしょうか。100点満点で。(さかうえただし「障害者情報クラブニュース14」より)


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