頸損だより2000夏(No.74)

淡路島だより

安藤ひさ子

「人と自然」をテーマにした淡路花博が、開幕しました。自然を舞台に世界各国の花の博覧会。2年前明石海峡大橋が開通した事もあって観光客で賑わっている。ゴールデンウィークに私も知人のボランティアの方に、運んで頂いた。私の住んでいる三原から高速道をスムースに走行して約1時間かかる。新しく開通した道路に感激。道中の山々は、美しい新緑と波静かなる海を眺めながら会場へ着いた頃は少し曇って来た。しかし豊かな自然の中で心もはずんで来る。会場の中の美しい花、めずらしい花を鑑賞しながら坂道を上へ下へと車椅子を押して貰い巡っているうちに雨が降って来たので、花館温室へ入り、ほっと一息する。その中には通路にスロープが完備しているので楽に巡ることが出来、別世界にいる心地だった。もう一度見に行きたいと思っている。

ところで、4月より介護保険制度が始まったこともあって、高齢者の方や障害者の方の介護をテーマにしたテレビ放送をよく見る。先日も「嫁はん大切やもん」とか「私の介護物語」を見て障害で車椅子一人暮らしをしている私には大きな関心である。どの話しも皆、感動と勇気を与えてくれる。家族、介護している人達の大きな愛情が胸に伝わってくる。人にたよらないと言う事と何事もあきらめないで前向きに自分の事は自分でするとの目標に向かって楽しく過ごすことをモットーにしている私の心を更に強く揺さぶられる。テレビで見る人は見も知らぬ人々であっても、同じ障害を、ハンディを持つ人達と「一緒に生きているんだ」との思いが伝わってくる。「災難を幸せに転じる心になれ」と語っておられる言葉から更に強い心が湧いてくる。受傷して10年になる現況だが私の生きる支えになっている一つに俳句を楽しみにしていることだが、その傍ら、1年前からボケ防止になればと思い大正琴を始めた。なかなか上達出来ず師匠から叱られてばかりいるがあきらめずに続けている。一人暮らしのために家事一切色々忙しい日々であるがくじけずあせらず頑張るしかない。離れているが家族は皆んな優しく心の支えになる。掛かりつけの医院より看護婦さんが常に訪問して下さり、健康チェックや療養指導をして下さる有難いことだ。入浴介助はホームヘルパーさんと、訪問看護ステーションより看護婦さんが来訪して頂いている。三原町保険センターに於て月一回リハビリを受けている。たくさんの人々に優しく支えて頂き私は本当に幸せである。何事もすべてに感謝の心を、優先して自分らしく、色々と楽しみながら過ごして行きたいものである。私が自分らしく前向きに生きることが何かのお役に立つことになれば更に嬉しく幸せである。お役に立てればいいなと願っている。


〜俳句〜

春はすぐそこまでと言ひくれしかな

十年のいろいろありて春の星

眠れずに深夜放送冴返る

耳遠き身を庇ひゐて余寒なほ


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