頸損だより2000冬(No.76)

§§ 脊髄空洞症について §§

ぽぽんた

はじめまして「ぽぽんた」と申します。

相棒である主人が、20年程前の交通事故で頚髄損傷になり、今年インターネットで出会いました『大阪頚髄損傷連絡会』に入会させていただきました。

今回、この場をお借りして、脊髄空洞症という病気について知っていただきたいと、稚拙な文章ですが書かせていただくことになりました。どうぞ、よろしくお願いします。

みなさんの中にも、脊髄空洞症と診断された方、また、お友達がそう診断された方などおられるかもしれません。けれど、多くの方とって、耳慣れない病気だと思います。

空洞症とは:
脊髄空洞症は、脊髄の中心部分に空洞をつくり脳脊髄液が溜まるため、内部の圧が高いときに周りの組織を圧迫して障害します。
圧がそれほど高くなくても、何十年とたつうちに空洞周囲の組織をわずかづつ損傷して様々な全身症状が現れます。
原因は:
先天性奇形、後天的異常、外傷、脊髄くも膜炎、脊髄腫瘍、原因不明などです。
キアリ奇形に伴なうものが50%、外傷後が10%となっています。
どうして空洞ができるのか:
脳脊髄液は通常少しずつ生産されて、少しずつ吸収されています。
この間に脳や脊髄の周囲をゆっくりけれどよどみなく流れています。
この流れに何らかの障害がおきることで、脊髄内部に少しずつ空洞が生じるといわれます。
どんな症状があるのか:
まず、痛みや温度に対する感覚が鈍くなり、力が抜けていきます。次に、手の筋肉が痩せていき変形します。これが四肢に広がります。
症状の進行は:
進行はゆっくりですが、放置すると症状が進行していきます。
治療法は:
現在の段階では、出来るだけ早いうちに空洞があるのをみつけて、その空洞を小さくすることです。
その時点で症状を止めることが出来れば悪化を防ぐことができます。
シャント術としてチューブをいれて水を抜く方法があります。
また、大孔部減圧術などの治療があります。

私達が受けた、空洞症の手術とその後の感想です。

交通事故による第6,7頚椎椎体骨折、頚髄損傷を受けました。麻痺が進行した為、脳神経外科で頚椎の固定手術を受け、そこで空洞症を知りました。

今回の手術は、空洞−くも膜下腔シャントといいます。チューブを空洞に挿入して、水を流すと言うものです。

医師からは、あくまで対処療法であること。問題の損傷部の治療ではないこと。

シャントチューブが詰まる可能性があること。そうなれば再手術となること。

空洞が改善されたとしても、時間の経過があるため、圧迫された神経が戻ることが出来ない可能性が大きい、等のお話を伺いましたが、この手術しかないという状況でしたので手術を決意しました。


脊髄空洞症は、MRI(磁気診断装置)が発達することで診断が進みました。

ということで、歴史の新しい病気です。

空洞の大きさや位置と症状の関係も解明されていません。

また、画像で空洞が解消されても、症状の改善がみられないということもあります。そして、手術をしても一度起きた麻痺や痩せた筋肉は元には戻せません。

そのため、できるだけ早期に診断し、処置を考えることが必要になります。


麻痺の進行はゆっくりと進むようですので、できれば、MRIの診断を定期的に受けられることが良いのではないかと考えます。

まだ、現時点で世界的に治療法が決まっておらず、ばらばらな手術が行われているのが実際のようです。

100%の満足を得られなくても、手術はしたほうが良いというのが、空洞症の先端を行かれる医師の意見です。現時点では、何度もいいますが、早期にみつけてその空洞を小さくすることが症状の悪化を防ぎます。

頚損の場合、他の原因疾患と違い、損傷部があるために、空洞に対する処置で症状が改善されることは難しいようです。少しずれただけで、足が利かなくなる、呼吸が止まるというミリ単位の限界の細かい手術で、難しい手術だとおっしゃっています。


症状の悪化を手術により止めることはできても、悪くなったものを完全に戻すことは難しく、痛みを取ることができないといいます。主人は痛みを感じませんから、ある意味助かっていますが軽い方ほど、痛みがおおきいようです。しかし、多くの医師が痛みには対処なさらないようです。


現在、空洞症は厚生省の『調査研究事業』に指定されて、研究調査に補助があり、研究が進められています。難病指定『治療研究事業(医療費の自己負担分の公費負担)』には、なっていません。

けれど、医師と友の会の活動などで、少しづつ進んでいるようです。


主人も現在右足の下垂足と膝が上がらない状態で、また再度MRIの検査などを受け結果では、再手術の可能性が出てまいりました。自律神経の圧迫が強かったため、その症状も出ています。

杖は必要でしたが、なんとか歩行しておりました、しかし現在は200m程がやっとで、車椅子を使用しています。胸部のきつい圧迫感や浮腫、全身の倦怠感などもあり、現在も自宅で療養中です。


MRIが使用されるようになるまで、奇病として捕らえられていた空洞症ですが、検査機器の進歩と医療医術の進歩で、少しずつですが光が見えています。

どうか悪戯に恐れることなく、身体の状態をご自分で確認されて、なにかありましたら、早期に病院に受診されることを願っております。

対処療法しかないのですが、治療によりお仕事などに戻られた方もあります。


患者数も少なく、空洞症を知る医師も少ないなかですが、『脊髄空洞症友の会』などもあり、お話をすることだけでも、患者も家族も心強いと思っております。

友の会については、ぽぽんたまでメールでもお手紙でもご連絡くだされば、詳細をお知らせいたします。


判りやすくお伝えしたかったのですが、稚拙な文章と、内容を全て把握しておりませんので、お見苦しいことになったことをお詫びいたします。


この病気は難しい病気です。しかし、どの病気もおなじですが、治療に関わる医師も言われています。病気の3割は医師が手を貸せるが、後の7割は患者自身が直すのだと。

頚損の困難な状態に、この疾病では辛いことですが、なんとか挫けず行きたいと考えております。

注 写真は省略しました。

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