地震5年経ての思ひや冬に入る
人を待つ刻のすでに過ぎをり木の葉舞ふ
補聴器に風のはげしや冬に入る
昨日今日冬暖たかや癒えて来し
初めての道を選びて冬ぬくし
絶えまなく時雨の傘の往来かな
初紅葉して頂きに神在す
訪ふ声に短日の灯を点しけり
案ず子の電話のありて霜夜かな
冬溝に向ひて膳を囲みをり
新米を噛みしめてみてありがたし
麻痺の足擦りて夜の冷え厳し
賜わりし命大事に初日享く
家中を子等駆け回り三ヶ日
初神楽舞ふ王女の指白きかな
家族らに寄り添われをり初詣
七草の湯舟もよろしと教わりて
着膨れて漕ぐ車椅子重かりし
立春や佳き返信を待ちて居り
車椅子白梅の香に向かひをり
大寒や蕾のままに花しぼむ
幼児の「うん」「うん」とだけ春近し
束の間の淡雪大地輝やかせ
風と来し風に消されし淡い雪
細雪南天の実の赤きこと
冬帽子目深に姪の訪れし
冷えし手をぬくめ焼きいもほこほこと
大寒や薬臭のしてナース来る
独居の厨事して日脚伸ぶ
遺されし百寿の「梅」の絵の気力