頸損だより2001春(No.77)

コレクティブハウジング建設を目指して

「その後の動き」

コレクトセブンの会・代表 三戸呂克美

障害を持つ者が助け合いながら生活をする、そんな住宅を造ることを目指して「コレクティブハウジングを考える会」が発足しました。そして3年が過ぎました。その間、公営住宅に、また民間住宅にとコレクティブハウジングの建設や計画が進んできております。しかし、公営住宅は、一人暮らしのお年寄りを対象にしているため、我々のような重度の障害をもつ者には入居資格がありません(兵庫県の場合)。民間の住宅も各地に建設されているようですが、入居者の大半はお年寄りだそうです。なぜ、北欧にあるような、老若男女がともに暮らす住宅が日本ではできないのでしょう。他人同士が一緒に住む生活が習慣として定着していない、ということが挙げられますが、それは、近代に入ってのことであり、江戸時代の長屋などは、他人が一緒に住んでいた良い例です。趣は少し違いますがその長屋を現代風にアレンジし「下宿屋」として作られたのが、名古屋にあるAJUの福祉ホーム「サマリアハウス」です。他に、全国にも同じようなものはいくつかあります。また、グループホームというものもあります。福祉ホームとグループホームの法律的な違いをも述べたいのですが次の機会にまわすこととして、ここでは、なぜ建設に賛同される方がいないのか、なぜ現れないのか、を反省し私自身のその後の動きを報告することにします。

反省材料は色々あります。呼びかけを見て、先ず、何をどうしようとしているのか、から始まり、ホンマにできるのか、に終わったのではないでしょうか。私の説明不足に加え、高額な資金を出すことの不安もあったと思います。そんなことを感じながら私自身は自分の拠点作りを進めてきました。拠点は自分が住む所と決めて、先ず求めたのが、県営、市営住宅でした。公営住宅には申し込みができるか否かの大きな条件があります。それが、在籍、在職です。

在籍は、現住所の所在地、私の場合は兵庫県と篠山市になりますので県営住宅と市営住宅を申し込むことが可能です。

在職は、職場のある住所で、神戸市内に勤めていれば、神戸市営住宅も申し込み可能となります。

重度の障害を持っていても申し込みができるようになったことから、私は、県営の車椅子対応住宅を申し込みました。震災後の復興事業で多くの住宅が建てられました。その中には、車いす対応の住宅も含まれています。また、コレクティブハウジングも初めて県営のものが作られました。

公営住宅の募集は、春と秋の定期募集と、毎月行われる常時募集があります。

定期募集は、募集戸数も多く、住宅の内容は一般住宅からシルバー住宅、車いす対応住宅と豊富です。常時募集は、いわゆる空家募集といわれるもので、数も少なく一般住宅が大半を占めています。

私は、車いす対応住宅を申し込んだわけですが、選ぶ条件として、鉄道の駅に近いこと、その駅には必ずエレベータがついていること、平坦地であること、そしてスーパーが近くにあること。この条件を一つでもかけていたらダメ、という意気込みで条件を満たすところに申し込みました。1回目は神戸市三宮近辺、2回目はJR神戸駅近辺の住宅でした。結果はどちらも落選でした。便利なところに集中するのは当然とはいえ落選の通知が来るのは嫌なものです。公営住宅と並行して、民間の住宅も探すことにしました。条件は変えることなく、広告、口コミ、インターネットなどで主にJR沿線を探しました。JR舞子駅の近くに民間のNPOが建設しようとしている、フレックスライフ舞子の会合に参加し、コレクティブハウジングについての話なども聞きました。そして探し当てたのが、JR明石駅から西に二つ目に大久保という所があります。マイカル明石があり、JR大久保駅はエレベータが完備されています。そこは神戸製鋼の工場跡地で「オーズタウン」として売り出している分譲のマンションでした。その一つに申し込みました。結果、13倍の倍率を突破して当選しました。当選したとはいえ一般の分譲マンションですから車いす使用の私にはそのままの状態では生活できません。使用出来なければ購入することはないのですが、これだけの環境を備えているところはいくつもあるわけではない、と気持ちの上ではここに決めていました。それから改造の話し合いに入ったのですが、マンションの改造は難しいといわれています。特に、天井、床、壁,PS(パイプなどが通っているスペース)は共有部分といって自分のものではありません。天井は、上の階の床になり、床は、下の階の天井になります。知り合いの建築家の方に依頼して中に入ってもらい、事業主、ゼネコンの設計者、工事担当の方などと数度の打合せを重ね2ヶ月後契約が完了しました。寝室に天井走行のリフターを、ユニットバスには入浴用のリフターを取り付けるのですが、それも可能となりました。完成までにはあと1年がかかりますが、このような改造が出来ることで、同じ集合住宅に住めれば助け合うことができるのではないか、と思いました。しかし、我々が求めるのは、ケア付のコレクティブハウジングです。その建設を目標にまだまだ模索しつづけなければなりません。

今回マンションの改造(現物はまだできていないので設計変更になる)ができたことで共に住むという新たな道が開ける事がわかりました。いろいろな考えや道があることで、各人が自分にあった道を選択し、条件の合う生活に持っていけるのではないかと思いました。

現在、住まわれているところで改善したい部分や、改造ができないと思い込んでおられる個所があればご連絡ください。兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所の中に住宅関連の部署がありそこの研究員の方や、元研究員の建築家の方に相談することもできます。

連絡は、大阪頚損連絡会事務局、または下記の住所にできれば郵送かメールでお送りください。

〒651-2134

神戸市西区曙町1070

県立総合リハビリテーションセンター 自立生活訓練課

三戸呂克美

電話:078-927-2727(呼)


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