今回は自宅にいろいろと手を加えたという事で、我が家の紹介をさせてもらう事になりました。もともとは木造平屋建のおんぼろだったので、昭和59年に怪我をした時に、改造は不可能という事で現在の家に建て替えました。入口まではスロープにしてもらってますが、僕のレベル(C−6)でも自分で登れる程度のものにしてもらっています。スロープの傾斜を優先したため、家の床面は一般の住宅よりかなり低くなっています。入口の外側は、いったん車椅子が止まれるように平坦になっています。入口から家に入るまではさらにスロープになっているのですが、こちらのスロープは、家の構造上の問題で外のスロープよりはきついのですが、1mちょっとなのでなんとか自分で登れるといった感じです。
家の中は、廊下の幅が110とかなり広く取ってありますが、いろいろと物を置いているため、実際はもっと狭くなっています。まあ、広い廊下にしているので、ついつい物を置いてしまうというのもあるのですが…
風呂場は、シャワーチェアーのまま中に入れるように、洗い場はかなりスペースが取ってあります。浴槽はほぼ寝転んだような状態で浸かれるように、当時では一番長いものにしてもらっています。その分かなり浅いですが。風呂場の所に洗面台があるのですが、自分で水道を使えるようにという事で、レバーを上から押さえて降ろすと水が出て、上にあげると止まるというものにしてもらっています。失敗したのは、洗面台が低いために、車椅子に乗った状態では膝がつっかえてしまうという事です。そのため、洗面台を使う時には、車椅子を斜めに付けて使っています。
トイレも車椅子が入れるように、かなり広いスペースが取ってあります。便器は中央につけると車椅子がつっかえるので、入口から向かって右側に寄せて取りつけてあります。便器の左側にある程度のスペースがあるため、ここに車椅子で入れるようになっています。
と、ここまでは普通のお宅と大して変わりないと思うのですが、今回我が家を紹介させていただく事になったのは、これ以後に紹介させていただくものがあるという事からです。
まず自分の部屋についてですが、以前はまさに「ゴミダメ」状態でした。あちこちにいろんな物が積み上げてあるといった状態です。一昨年の秋頃に、頸損連絡会会員でもある福祉コーディネーター、岸本喜則さんにお会いする機会に恵まれ、これではいかんやろうという事で、いろいろと手を加え始めました。ベッドは病院にあるのと同じようなものでしたし、6畳の部屋に、仕事の関係もあって机が2つ置いてあったので、本当に自分が動くので精一杯という状態でした。まず最初に、ベッドを木製枠のものに変えました。やぐらも、それに合わせて木製のものを特別に作ってもらったのですが、これは、岸本さんのお知り合いである『八木木工所』の八木さんが作ってくださいました。これ以後、すべてのものは八木さんが作ってくださいました。
次は机です。机が机の役目を果たしていなかったため、机を取り払って、机とオーディオ機器をすべて置ける台が一体化したような物を作ってもらいました。左半分が机で、右半分に、テレビ、ビデオ、CDプレーヤー、アンプ、スピーカーといったものをすべて置けるようになっています。この机を作る時には、車椅子に座った状態で一番使い易いようにと、高さ、幅、オーディオ機器を収納するスペースの寸法などを、すべて岸本さんと八木さんが測って、特別に作ってくれました。この机のもう一つの特徴は、左端の机を支える縦板がぎりぎりまで幅が狭くしてあるため、机の下の前側に横板がないために、車椅子で回転しやすくなっているという点です。これも、岸本さんと八木さんが、どれくらいまで幅を狭くしても重量に耐えられるかという事を考えて作ってくれました。オーディオ機器については、こちらも岸本さんのお知り合いである『オリエンタル商会』の大山さんに、使い易いものを紹介していただきました。
CDプレーヤーには、なんとCDが300枚入れられます。CDを入れ替えるという事をしなくてすむので、ものすごく楽です。
部屋には、CD、ビデオ、本などが所狭しと積み上げられていたため、これらを整理するために、部屋の中の壁に取り付ける棚を作ってもらい、本やビデオを整理しました。それでもおいつかないため、部屋の外の壁に、床から天井まで届くようなCDとビデオの収納棚を作ってもらいました。あと、階段の下のスペースに、会社関係の書類や本を収納する開き戸付きの棚も作ってもらいました。部屋の中にあったもう一つの机も取り払い、そこにはほぼ部屋の端から端まである台を作ってもらい、その台の下に、小さなタンスと小さな冷蔵庫を置いています。この冷蔵庫は、知る人ぞ知る、アルコール専用の冷蔵庫です!(笑)
仕事でパソコンを2台使うために、パソコン台も作ってもらいました。2台のパソコンを上下2つの引出し型の台に乗せています。指を引っ掛ける輪をつけてもらい、この引出しがパソコンごと本体から引き出せるようになっています。下の引出しに置いているパソコンはベッド上に置いて使っていますが、上の引出しはパソコン台から引き出して、その上でパソコンを開いて使っています。ちょうど上の引出しの下に、車椅子ごと足が入る高さにしてくださいました。このパソコン台は頻繁に動かすためにキャスターが付けてあるのですが、普通のキャスターだと、重たい&スムーズに動かないという理由から、ベアリング式の特殊なキャスターを付けてくださいました。これがものすごく軽いんです。パソコン台の上にFAXをおき、パソコン2台を収納し、下のスペースにビデオテープが40本ほど入っているのですが、片手で簡単に動かせます。これは優れものです。夜は上向きでベッドに張り付いているのですが、このパソコン台ができたおかげで、夜中や明け方までパソコンを使う事ができるようになりました。
部屋の入り口はアコーディオンカーテンだったのですが、開け閉めが結構不便な上に、冬は隙間風で寒いということから、真ん中から2つ折れになって開くような、木製の折れ戸を作ってもらいました。車椅子で出入りするので入り口の幅も広く取ってあるため、この折れ戸も八木さんの手製による特注品になっています。本来なら上下にレールが付くそうなんですが、床面は何もない方がよいだろうからと、上のレールのみになっています。戸を完全に開けた時に、普通だとある程度の開きがあるそうなのですが、入り口の幅がちょっとでも広くなるようにと、折りたたんだ戸同士がぴったりくっつくくらいになっています。これも特別な作りだという事です。
後は、車椅子とベッドの乗り移りの時に、車椅子が動かないように引っ掛けておくフックや、2000cc入りの大きなうろバッグを簡単にかけておけるものも作ってもらいました。車椅子を引っ掛けるフックは、邪魔にならないようにベッドマットの下に収納可になっています。
リモコンや電話の子機には、指を引っ掛けて自分で取れるようにと、プラスチック(のようなものだと思います。)を輪にしたものをつけてもらいました。電話の子機については、子機を置いておく充電台自体が、ベッドの頭側の木枠に引っ掛けられるようになっているため、使い易い位置に移動させる事ができます。そのおかげで、車椅子に乗っている時もベッド上でも、どんな時でも自分で電話に出る事ができるようになりました。
これは自分でみつけたのですが、南港のATC内にある『mont・bell』に、結構頸損が使えそうなものを売っていました。実際に使っているのは、分厚い布の生地のようなものでできている、指を引っ掛けられるような輪になるキーホルダーチックなものです。カバンや服のファスナー部分に付けておくと、自分でファスナーの開け閉めができます。それ以外にもマジックテープのついたベルトなども売っていたので、自分で勝手に『頸損グッズ』と呼んでいます。皆さんもATCに行く事があれば、是非『mont・bell』に寄って『頸損グッズ』を見てきてください。
さて、今回の目玉は、なんと言っても玄関の自動ドアでしょう。
今までは、玄関は普通のレール式の横開きのもので、鍵も普通の鍵だったため、自分一人で家からの出入りができませんでした。自分で玄関の鍵をかけたりはずしたり、戸を開けたり閉めたりするにはどうしたらよいかという事で、『頸損だより』にも広告が出ている『テクノロック』さんに相談しました。オートロック機能がついた電動の自動ドアをつけてもらう事になったのですが、2種類ありました。レール式の横開きのものと、マンションのドアのような前後への開き戸です。もともとレール式の横開きのものだったので、そのまま使えたらと思ったのですが、家の構造上無理だったので、前後への開き戸にすべて作り変える事になりました。玄関も車椅子が通り易いように幅を広く取ってあるため、ドア自体が特注になりました。ドアは家がヘーベルハウスの関係でTOSTEMに作ってもらったのですが、自動開閉とオートロックシステムについては、すべて『テクノロック』さんにお任せしました。何度も何度もこちらの意見を聞いてくださり、できるまでにはドアの作成の方でかなりトラブルがあったのですが、そのたびに家まで来てくださり、本当に親切に良くして頂きました。
ドアの作成については、寸法を間違えて小さい物を作ってしまいながら、そのまま取り付けてしまったり、下に段差ができないように頼んだにもかかわらず、段差がついていたりと、まことにお粗末なありさまでした。結局こちらが初めに言っていたようにしてもらうために、ドアは作り直し、段差についても工事のやり直しになりました。ドアの作成ミスから、『テクノロック』さんにも2回自動開閉とオートロックシステムの工事をしてもらう事になり、ご迷惑をおかけする事になったのですが、本当に良くして頂きました。
ドアはリモコン操作で自動開閉し、鍵については、ドアが開く時は自動解除、閉まる時は自動でかかるようになっています。ドアの開く角度や開閉の速度というのは、こちらの希望通りに、すべてシステムに記憶させておくようになっています。そのため、ドアの開閉時に手動でドアを動かしてしまうと、システムが記憶している情報通りにいかなくなるため、次からリモコンで自動開閉する場合、ドアが閉まった時にちゃんと鍵がかからないというような事態になります。家の場合も何度となくそういう事があったのですが、その度に『テクノロック』さんに来ていただき、調節のやり直しをしていただきました。わずかな時間ですむ事に、何度来て頂いたかわかりません。ドアを手動で動かすには、電源のコンセントを抜いておけばよいという事になります。停電の時などは、自動開閉もオートロックシステムも使えないため、鍵も手動でかけたりはずしたりする事になります。手動で鍵を使う時の事も考えて、鍵の位置も、車椅子に乗った状態でちょうど使い易い位置にしてもらっています。鍵自体もそのままでは自分で使えないので、指で持ってねじるところを大きくしてもらい、人差し指と中指の間にはさんで回せるようにしてもらいました。
このシステムはすべてリモコンで操作できるのですが、リモコンにも普通のものと強力なものがありまして、最初は普通のリモコンでした。これでも玄関の隣にある自分の部屋からは充分使えたのですが、外から使う時に、スロープの手前の道路からだと、うまくリモコンが効かない事がありました。『テクノロック』さんから、もっと強力なリモコンがあるというのを教えていただき、そちらに交換してもらいました。なんと、100メートルくらいはとどくという強力なものです。表に停めている車の中からでも使えました。まあ、そんなに遠距離から使う事はありませんが、自分が使う範囲では、どこでもOKです。
ドアが開閉する時には音がするようになっていまして、自分の方は、この音を聞いてドアの開閉の確認をし、家に来られた方には、この音で注意を促すという感じです。音の大きさも調節できるようになっていまして、消音状態からかなり大きな音にまでできます。あまり大きな音にすると、夜中などは結構近所に響き渡るので、上述の役目を果たせる程度の大きさにとどめています。
自分で玄関の開け閉めや鍵の操作ができるようになったので、飲みに行って夜遅く帰って来ても大丈夫になりました。まあ、そのためにこのシステムをつけてもらったというのもあるんですが…
最後になりましたが、今回いろいろとお世話になった『テクノロック』さん、岸本さん、八木さん、大山さんに感謝いたします。
何か自分にあったオリジナルなものができないかとか、こういうものは作れないかというような事があれば、岸本さんに相談されたらどうでしょうか。いろんなアイデアが出てくるので、何とかしてもらえると思いますよ。こんな事言うたら、岸本さん、プレッシャーかかりますかねぇ。ちなみに、『テクノロック』さんから家に来てくださっていたのは、『今井正幸さん』という方です。ほんまにええ人ですよ〜。どこの業者もこういう方ばかりやと、ほんまに利用する方は助かるのになあと、つくづく思いました。実際に利用する側の立場になって、細かい所まで実に親切丁寧に対応してくださいました。今井さん、この記事読んではりますかねぇ?この場を借りて、改めてお礼を言わせていただきます。では、これにておしまい。
「追伸」テクノロックの今井さんによると、自分の家に自動ドアやオートロックシステムがつけられるかどうかとか、見積もりだけでも出してほしいという場合は、そのように言ってもらえれば、現場に出ている場合との兼ね合いもありますが、すぐにでも伺いますとの事です。あと、カタログがほしいという方は、今井さんがまとめて僕の所に送ってくださるそうなので、遠慮なく僕に連絡してください。改めて書きますが、アフターケアについては完璧だと思います。