障害基礎年金は、障害者の経済的自立に欠くことのできない基本的条件であるのに、無年金障害者は経済的自立を阻まれている。
平成6年の年金改正で「無年金である障害者の所得保障については検討する」との国会の附帯決議が出たにもかかわらず、いっこうに実行されないばかりか、昨年の年金改正でも無年金障害者問題は見送られてしまいました。
このままでは、いつまで経っても無年金問題は解決されないと、やむにやまれぬ気持ちで取り組んだ学生無年金障害者の審査請求運動ですが、審査請求当事者38名に対する厚生省での2回の公開審理は昨秋に行われ、裁決は4月に「障害基礎年金の不支給」の裁決が出されました。(後半部分に詳細を述べておきます。)
私たち当事者は訴訟を起こす予定です。新聞などでも報道されていますが、昨年12月に札幌地裁で学生無年金障害者の方が提訴され、今年の2月26日に第1回の公判が開かれました。また今夏には、東京・新潟・京都・大阪・広島でも訴訟を考えています。
無年金障害者問題解決のために、審査請求運動と併せて、自冶体への働きかけをしており、「無年金障害者の救済に関する意見書」は平成4年の尼崎市議会に始まって、和泉市議会(平成5年)、東京都議会(平成10年)、吹田市議会(平成12年)、本年3月には大阪市会、4月には京都市議会でも意見書が採択され、このように各自冶体から「意見書」が次々と出されれば、きっと国も重い腰を上げざるを得なくなります。これからも、この意見書採択の運動を全国に強く訴えていかねばなりません。
また無年金障害者の解消は年金制度改善とつながり、10万人といわれる無年金障害者の解消は、数百万人といわれている無年金者の解消となり、年金制度全体の底上げにつながります。
私たち当事者は、この活動を通して、次の4つの課題の実現を目指しています。
なぜ無年金障害者が発生したのか?
社会保険審査会は、4月27日付けで、38名の方に裁決を行いました。南野弁護団長事務所に、今日(5月8日)初めて届き、各地の弁護団の弁護士あてに一両日内に届く予定です。まだ、全員の分がそろっていませんが、結論は全員が棄却のようで、私たちがせめてもの救済と主張した個別救済はされていません。手元に届いた裁決の判断は、たいへん分かりにくい文章となっています。その要旨は、
当事者があれだけの思いをもって、不自由な身体をおして陳述した昨年9月の公開審理での当事者の状況、窮状に一切触れない不当なものです。別紙の弁護団アピールを出しました。
また私たちは、最近完成した国会議事録検索システムを使って、無年金障害者問題がどのように論じられていたかを現在検索しています。
これについて、国民年金制度創設時、その後の改正(特に昭和59年法=61年施行、平成元年改正=3年施行、6年改正=8年、12年改正=12年施行)が重要です。それぞれ、どのようなテーマで論議がなされ、またはなされなかったか、どの議員が関心を持っていてくれていたか、その他、成果はいろいろあると思います。
各国会審議のアウトラインをわかるようにして、これからの運動や裁判に役に立てるつもりです。それは裁判に使え、議員への要請にも使えるでしょうし、その他の事にも役に立つであろうと思い、概観して、資料整理をしています。
国会論議で、無年金障害者の解消問題が、大きなテーマとなっていることは、裁判所をして慎重ならしめると同時に、要求の正当性を裏付けるものと思います。
『国会議事録 「無年金障害者」発言の検索』
国会議事録検索システム。URL:http://kokkai.ndl.go.jp/