見下して一湾の景冬はじめ
潮風に銀杏黄葉のはらはらと
凩や深夜放送聞いてをり
冬帽子のみの記憶や他は忘れ
秋晴れのホテルに集ひオペラ聞く
ふる里よりの梨の香に心満つ
遠目にも海の色濃く冬に入る
松茸の匂ひてをりし背負ひ袋
連れ漆はれ山道の四方紅葉して
葺汁匂漂ふ夕飼かな (夕飼→夕食のこと)
生かされし思ひに初日浴びにけり
除夜詣の声の途絶へて闇深し
初湯出て髪梳くこともめでたけれ
夕べにはカレーの匂ふ三日かな
海よりの風の凍れる福詣
日向ぼこ来し方遠くなりしかな
絵かるたを幼なに読みて冬日向
鼻風邪も生きる証しでありしかな
読み終へて午前二時打つ寒かりき