頸損だより2002春(No.81)

俳句

安藤ひさ子

見下して一湾の景冬はじめ

潮風に銀杏黄葉のはらはらと

凩や深夜放送聞いてをり

冬帽子のみの記憶や他は忘れ

秋晴れのホテルに集ひオペラ聞く

ふる里よりの梨の香に心満つ

遠目にも海の色濃く冬に入る

松茸の匂ひてをりし背負ひ袋

連れ漆はれ山道の四方紅葉して

葺汁匂漂ふ夕飼かな (夕飼→夕食のこと)

生かされし思ひに初日浴びにけり

除夜詣の声の途絶へて闇深し

初湯出て髪梳くこともめでたけれ

夕べにはカレーの匂ふ三日かな

海よりの風の凍れる福詣

日向ぼこ来し方遠くなりしかな

絵かるたを幼なに読みて冬日向

鼻風邪も生きる証しでありしかな

読み終へて午前二時打つ寒かりき


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