頸損だより2002夏(No.82)
「無年金障害者問題の解決に向けて」 No.12
今年1月11日の坂口厚生労働大臣の発言(無年金障害者問題について障害者福祉施策の一環として解決を目指す考えを明らかにして、今年度中に結論を出す)から、私たち学生無年金障害者訴訟原告団は大臣に面談を求む等の要望書を提出しました。
5/21 共同通信ニュース速報
『今国会末までに、学生無年金障害者問題で厚労相案示す』
坂口力厚生労働相は21日の参議院厚生労働委員会で、学生時代に障害を負い、国民年金に未加入だったために障害基礎年金を受給できない学生無年金障害者問題について、今国会会期末までに解決に向けた「厚労相案」を示す考えを表明した。
厚労相は「年金局はうちの関係ではないと言うし、社会・援護局、障害保健福祉部もうちの方でもないと言って、たらい回しになっている」と指摘。
その上で「いつまでもたらい回しにしていてはいけないので、今国会末までにこうしたらどうかという私案を示したい」と述べ、問題解決への意欲をあらためて示した。
共産党の井上美代氏への答弁で
それから、4月27日(土)に開催の無年金障害者シンポジウムに社民党の中川とも子衆議院議員が飛び入り参加し、5月中旬に厚生労働委員会で質問をするということで、「坂口厚生労働相にこんな事聞いてもらいたい」と言うことで考え、議員に提出した項目を後述しています。
<障害者の所得保障の観点から>
- 障害基礎年金を受けるには条件があり,特に,保険料の納付要件を満たしていない場合,どんなに重い障害を負っても年金は受けられない。この納付要件があるかぎり無年金障害者は生じる。現に,20代の若者の無年金の例が報告されている。これまで何度も国民年金法が改正されてきたのは,国民皆年金の理念に沿って,無年金障害者を生み出さない年金制度をつくることが,障害者の所得保障にとって重要だとの考えに基づいていると考えるが,大臣の見解はいかがですか?
- 無年金障害者は全国で何人いるか。その中での学生無年金障害者,定住外国人の無年金障害者の実数はいくらか。以前,政府答弁で「約10万人」という数字が出ているが,その後,実数をどのように調査したのか。実数を把握しなければ検討もできないはずだが,どのような検討を具体的にしてきたのか。
- 国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院厚生委員会,平成6年10月26日)では,政府は,「無年金である障害者の所得保障については,福祉的措置による対応を含め検討すること。」について,適切な措置を講ずるよう配慮すべきであるとされている。政府は,年金または福祉的措置を含め、検討したのか。
(検討した場合)
それぞれ、どのような検討をしたのか、報告の文書はあるのか、提出できるのか。
検討の結果は、どうであったか。文書にはなっているのか。
(検討しない場合)
その後,数次の年金改正があったのに,検討しないのはどうしてか。
- 坂口大臣の今年の抱負に「無年金障害者の早期解決」とあり,また,平成14年1月11日の閣議後の記者会見で,記者の「今年中に結論を出さないといけないと」という質問に対し「出来るだけ早く出した方がいいだろうというふうに思っています」と答えている。これは,障害者の所得保障の重要性を踏まえた発言だと考えるが,その後、どこの部署でどのような検討が進められているか。ここで解決をしようとしている対象はどのような人たちか(制度的問題(外国人、主婦、学生等)のみか、納付要件に満たない滞納の人も対象に入っているか)。解決とは何らかの年金または年金的なものとして金銭を支給するということを考えているのか。「出来るだけ早く」とは年内ということなのか。年金ではなく福祉的措置になった場合、年金の支給水準と比べ、低くなるのではないかと言う不安が出ている。年金の水準と遜色のない水準を維持することは可能なのか。
- 次期年金改正で無年金障害者の問題は検討課題にはいっているのかどうか,また入っていないとしたら、理由は何故なのかを答弁いただきたい。
<その他>
- 厚生労働大臣は,学生時代に国民年金に加入されていましたか、総理大臣はいかがですか。
(任意加入していない場合)
大臣が,大学3年生の時に,例えばスポーツ事故に遭った場合,障害年金は支給されなかったが,そのことは分かっていたのか。
- 結論を出すためには,無年金障害者の実情をまずは知るべきだと考えますが,当事者の意見を聞く場を、いつ、どのように設けるつもりですか。
- 障害者というハンディキャップを持つものが裁判を戦い続けるということは,本当に心身を削る思いである。全国で学生無年金障害者が訴訟を提起し,また,定住外国人についても,京都で訴訟が提起されている。原告の中で,最高齢の者は,現在60歳を超えている。いつまでも争う姿勢を崩さないつもりなのか。
私たち無年金裁判原告は、国民年金制度の不備を訴えて運動してきたので、無年金障害者を生み出さないような、安心して暮らせる年金制度の確立を求めている。また学生無年金障害者だけでなく、主婦無年金障害者、滞納無年金障害者、在日外国人無年金障害者、強制加入以後の学生無年金障害者の解消も併せて訴えていくつもりです。
障害基礎年金は、障害者の経済的自立に欠くことのできない基本的条件であるのに、無年金障害者は経済的自立を阻まれています。
「大阪地裁訴訟の第3回(2002/3/29)報告」
- 裁判所の構成(右陪席)が代わったので弁論更新
- 原告らから、求釈明申立書と準備書面(3)を提出
- 被告らから、追加の書証を提出
- 原告らの意見陳述
原告のHさんはご本人が陳述し、そのほか原告4名分の意見を弁護士が陳述した。
- 弁護士が被告らに求釈明についての応答を求めると、被告らは、「4月下旬に全国 で協議する。それをふまえて、5月の連休明け頃に応答する。」との返事。
- 弁護士から被告らに対して、国会議事録や文献などについて、被告側から書証として提出するように要求。
- 弁護士から、本日提出の準備書面(3)に基づいて口頭で弁論、内容は「国民皆年金の理念」
「訴訟の要点と無年金障害者発生要因」
全国8地方裁判所(札幌・盛岡・新潟・東京1次2次・京都・大阪・広島・福岡)でも順々に裁判が行われており、提訴した原告者30名は地域の支援者に支えられて厳しい闘いをしており、各地方裁判所に提起した訴訟は、「行政訴訟と国家賠償請求訴訟」で、憲法14条違反、憲法25条違反を主張しますが、国民年金法違反も主張しています。
- 憲法14条違反〜20歳で区別するのは法の下の平等を定めてあるのに違反する。
- 憲法25条違反〜無年金障害者の放置は、国に社会福祉増進を義務づけてあるのに反する。
- 国民年金法違反〜障害基礎年金不支給は国民年金法の皆年金の趣旨に反する。
- 本来支給されていなければならなかった障害基礎年金の総額数および、長年受給できなかったことで、経済的精神的に味わざるをえなかった痛みとして、二千万円の国家賠償請求。
(障害基礎年金の総額数は、原告全員の年齢を平均して、換算した年金額です。)
「どういう原因で、無年金障害者になるのか?」
- 国民年金に加入していなかったサラリーマンの妻
- 国民年金に加入していなかった大学生、専門学校等の学生
- 任意未加入で、長期間の国外滞在中に障害者となった者
- 65歳過ぎに障害状態となった高齢障害者
- 制度のことを知らないで、事後重症の請求を65歳までしなかった者
- 保険料を一定期間滞納した者
「私たちは、この活動を通して4つの課題の実現を目指しています」
- 学生無年金障害者にも障害基礎年金を支給すること
- 国会附帯決議、障害者プランを実行させ、これまでに生じた無年金障害者を救済すること
- 基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げ、それを財源として無年金者を救済すること
- 無年金者を生み出さない信頼できる公的年金制度をつくりあげること
□■□ お願いします! □■□
- 裁判の傍聴に来て下さい。
日程は事務局までお問い合わせ下さるか、下記ホームページでもご覧頂けます。
- カンパにご協力下さい。
訴訟とあわせてこれまで以上に世論に訴え、無年金障害者をなくすための運動の
輪を広げたいと思います。
- 賛助会員を募っています。
<第4回裁判の日程>
日 時 | : | 2002年6月14日(金曜) 午前10時〜10時30分 |
法 廷 | : | 大阪地方裁判所 202号 大法廷 |
所在地 | : | 大阪市北区西天満2丁目1-10 TEL:06-6363-1281(代表) 地下鉄御堂筋線「淀屋橋」駅下車徒歩7分 |
<無年金障害者訴訟一周年・支援コンサート>
日 時 | : | 2002年7月13日(土曜) 午後1時30分〜4時 |
場 所 | : | 豊中障害福祉センター・ひまわり |
所在地 | : | 豊中市稲津町1丁目1-20 TEL:06-6866-1011 |
最寄駅 | : | 阪急電鉄 宝塚線 服部駅下車徒歩10分 |
※ 大阪地裁でいちばん大きい大法廷であり、車イスのスペースも10人以上確保する予定なので、多くの皆さんの傍聴をお願い致します。
傍聴席を支援者でいっぱいにし、無年金障害者問題が広く関心を持たれていることを裁判所に示したいと思います。是非、支援に駆けつけて下さい。
裁判後、引き続き、隣接の弁護士会館で報告集会を予定していますので、あわせてご参加をお願いいたします。
(備考)
ボランティア及び、皆さんのお知り会いの方で、20歳以上の学生等の方は、国民年金を納付されている、または猶予、免除手続きを取られているかどうか確かめて下さい。
(老齢年金の不支給、無年金者になる可能性がありますので、ご注意を!)
【問合せ先】 谷川信之
nobusan@cam.hi-ho.ne.jp
「坂口厚生労働大臣に提出した要望書」 (2002/1/28)
- 報道によると、「年金制度の枠外での福祉策などを含めた検討に入る」とのことですが、私たちは制度の改善で、年金制度にのった年金支給を求めていますので、その水準を切り下げないよう、お願いしたいと思います。
- 制度の谷間の解決策についての結論を出す前に、厚生労働大臣は、ぜひとも私たち学生無年金障害者訴訟の原告団と会い、私たちの訴えに直接耳を傾けて頂きたいと存じます。
- 現在係争中の訴訟については、国は私たちの主張をよく汲み取り、早期終了に向けて努力されるよう、お願い致します。