頸損だより2002秋(No.83)

星ヶ丘厚生年金病院ミニフォーラム報告

延澤 庸行

6月29日(土)、頸損連から数名が枚方市にある星ヶ丘厚生年金病院を訪問し、訓練室前電気光線室において、入院患者さんを対象にミニフォーラムが行われました。病院側からは、入院患者さんや家族の方、OTの鶴田先生、岡先生、PTの肥塚先生、星ヶ丘に実習にこられていたOTの学生さん2名、徳島の病院から星ヶ丘に勉強にこられていたOTの坂東先生が参加されました。大阪頸損連絡会からは、会長の宮脇さん、前編集部長(現在は自立生活センター『あるる』の事務局長)の鈴木さん、現編集部長の松崎さん、事務局長の鳥屋さん、坂上さん、私の6名、京都頸損連絡会から事務局長の末田さんが参加しました。当日は、私が司会進行を務めさせていただきました。

宮脇会長から頸損連絡会についての説明、鈴木さんから自立生活センターについての話し、松崎さんと私から実際の生活状況についての話をする事になりました。

まず最初にこの日話をする人と話の内容について紹介し、さっそく宮脇会長から頸損連絡会について話をしてもらいました。頸損連絡会には多くの頸損者がいる事、星ヶ丘出身者も多くいる事、生活や移動がしやすくなるように、行政等いろいろなところと交渉をしている事、会員同士で色々な情報交換が行なえるため、何か困った事があった場合も多くの人から情報がもらえる事、1〜2ヶ月に一回は会員参加の行事を行なっている事、年4回頸損だよりを発行して、その間にあった行事の報告や行政等との交渉の経過を会員に知らせたり、色々な情報を載せていること、頸損だよりを発行しない月は事務局通信を発行して、行事の案内や情報提供を行なっている事等が説明されました。現在会員の方の中にも、入院中に頸損連絡会の事を聞いて入会された方も多いのではないでしょうか。退院後も皆さんにとって有意義な会なので、よろしければ是非入会してくださいというお誘いの言葉をもって、会長の頸損連絡会紹介は終了しました。

続いて、鈴木さんから自立生活センターについての話がありました。鈴木さんは、現在自分たちで立ち上げた自立生活センター『あるる』の事務局長をされています。自立生活センターとはどういうものか、自立生活センターの必要性等が熱く語られました。自立生活センターには、地域で自立生活をしようとする障害者の相談に乗ったり指導をしたりするピアカウンセリングという業務もあります。この段階で自立生活に向けての青写真を作っていくという事になります。実際に自立生活を始めた人に対しては、アテンダントを派遣して生活をサポートしていく事になります。いつまでも家族の介護で生活を続けるというのは難しいというか不可能なので、自分で生活をしていけるように環境を整えていく時に自立生活センターを利用してもらい、自立生活センターはその手助けをしていくという事になります。鈴木さんからは自立生活センターの一覧表が提供され、何かある時は近くの自立生活センターに相談してくださいという事が話されました。鈴木さんの話が終わった後、坂上さんから入院患者さんに対して、皆さん自分で生活していくためにどんどん自立生活センターを活用してくださいという話がありました。

続いて、私が現在の生活状況と褥瘡について話をさせてもらいました。退院してからずっと親に介護をしてもらっていたのですが、親も歳をとって介護ができなくなってきたため、鈴木さんの話にもあった自立生活センターに相談に行き、親の介護から離れる事になりました。私は西宮市に住んでいるのですが、西宮市の場合、全身性介護人派遣制度、ガイドヘルパー派遣制度、ホームヘルパー派遣制度というものが利用できます。自分の収入に応じて自己負担というものが発生しますが、これらの制度を使ってアテンダントさんやヘルパーさんを派遣してもらう費用の補助が出ます。私の場合、基本的に朝昼夕夜と1日4回介護人に来てもらっています。実際に6月の介護のシフト表を見てもらいながら話をさせてもらいました。この生活のよい点として、いろいろな人と話をする事ができて楽しいという事、困る点としては、時間の制約があるため早めに出かける予定等は立てておかなければならなく、自由がききにくい事等を話させてもらいました。その後褥瘡について話をさせてもらいました。褥瘡のできる原因、褥瘡治療も変わってきているため、昔はよいとされていた治療も今は逆効果になるというのがわかっている事、今はよい治療方法や治療薬ができているため、早期に発見して対処すると短期間で治せる事、車椅子のクッションやベッドマットにも褥瘡予防のよい製品ができている事等を話させてもらいました。車椅子に座っている時は、プッシュアップをしたり、自分でプッシュアップができない人については介助してもらうなどして除圧を心がけ、いくら治療が進んだとはいえ、まず予防する事を心がけてくださいという事をお話して、私の話は終わらせてもらいました。

最後に、松崎さんから自立生活をするようになった経緯、現在の生活状況等の話がありました。松崎さんの事は頸損だよりにも記事が載っていたので読まれた方も多いと思いますが、実家が福井県なので、退院後は福井の実家に帰られました。実家で在宅の生活を始められたのですが、頸損のような重度の障害者が在宅で生活をするという前例がなかった、福祉の制度が整っていない、介護人の確保が難しい等、私と同様、やはり家族の介護では限界があるという事で、自立する事を考えられました。松崎さんの実家周辺では交通事情もよくなく、福井県では冬になると雪の影響を受けるという事もあり、一人で生活できるような環境も整っていないため、自立生活をするため大阪に出てこられました。大阪で生活を始めるまでには色々と苦労されたようですが、やはり大阪に出てきて自分で生活していくというのは新鮮で、多くの人との出会いやかかわりがあるので、毎日が楽しいと話されていました。出かけるという面でも、電車やバスを乗り継いでいろんな所に行く事ができるため、交通事情がある程度整っているというのも非常に大事な事だと思われたそうです。出かける事ができる環境の元で生活をするようになったため、今までにはなかったくらい活動的で行動的になられたそうです。自立生活をするようになってから、精神的に自分が成長したと思うという事も話されていました。

また、今回参加した頸損連のメンバーからは、退院したら家に引きこもってしまわないで、どんどん出かけましょうという事をお話させてもらいました。外出先で困った事があれば、近くにいる人に声をかけて手伝ってもらいましょう、断られたり無視されたりという事もありますが、手を貸してくれる人があるまで声をかけ続けましょう、いい意味で図太くなりましょうという事もお話しました。逆に、声をかけてもらった時に本当に大丈夫な場合は、丁寧にお断りしましょう、声をかける側も勇気がいるのですからという事もお話させてもらいました。

頸損連絡会から参加したメンバーからは以上のような話をさせてもらいました。

病棟から参加してくださった患者さんからは、質問や要望を聞かせてもらいました。自立生活をするといってもお金が必要になりますので、どういう制度を使ったらいいのかという質問がありました。全身性介護人派遣制度等を使っているという話をさせてもらいましたが、そういう制度がない自治体もあります。全身性介護人派遣制度はあってもガイドヘルパー派遣制度はない自治体もあります。自治体によってどのような制度が使えるかというのはまったく違ってきますので、まず自分が住んでいる地域の市役所障害福祉課に電話をするなどして、自分はどのような制度が使えるのかという事をしっかり調べてくださいという事をお話させてもらいました。また、来年4月からは支援費支給制度が始まるため、今使える制度も変わってくる事になるでしょうから、そういう事も考えておかなければならないという事もお話させてもらいました。高齢の患者さんからは自分はどうなるのだろうという不安の声が聞かれたのですが、坂上さんから、介護保険の対象者は基本的に介護保険を使う事になりますというお答えをいただきました。

患者さんからは、色々な制度の事とかも含めて、もっともっと行政に働きかけていってくださいという要望も出されました。

今回の話とは別に多くの患者さんから話に出たのが、現在の病院の姿勢というものでした。頸損の患者さんに対して入院期間は3ヶ月と言われているそうです。3ヶ月では何もできないという声が多く聞かれました。怪我をして間もない患者さんの場合、精神的にダメージを受けたものがとれないうちに3ヶ月はすぐに経ってしまうという事です。自分が怪我をした時の事を思い起こすと、怪我をして3ヶ月の間はまだ立ち直っていなかったですから、3ヶ月でリハビリを終えて退院というのはあまりにも早すぎます。他の病院から転院してきたにしても、頸損で3ヶ月のリハビリではやはり短すぎるでしょう。私が入院していた頃は、周りの頸損の患者さんと話をする事でいろいろな事を教えてもらったりしていましたが、そういう事も少なくなっているようです。今回のミニフォーラム終了後、残っていた大阪頸損連のメンバーと参加してくださったOT、PTの先生方と1時間ほどお話をさせていただいたのですが、病院側が患者さんの精神的ケアからリハビリまですべてちゃんとできるのであれば3ヶ月でもいいかもしれないけれど、残念ながらそういう状況ではないのでやはり3ヶ月はきついと言っておられました。いろんな病院を転々として星ヶ丘にやってくるというパターンもあるそうです。病院の経営という事を考えると難しい問題なのでしょうが、それだけで片付けられるような問題ではないので、病院としてももう少し何か考えてもらえたらなと思います。先生方はそういう事を病院側とこれからも交渉してくださるそうです。先生方からは、入院中の精神的な事などの話もしてもらえたらなという御意見もいただきました。また、今回参加してくださった実習中の学生さんや、徳島の病院から勉強にこられていたOTの坂東先生からも、参考になりましたと言っていただきました。

今後も星ヶ丘厚生年金病院とはこのような交流を続けていきたいと思っていますし、OT、PTの先生方からもそういう要望がありますので、根気強く続けていきたいと思います。年内にはまたこのようなミニフォーラムのような事をしたいと思います。自分が行って話をするぞぉという方がおられましたら、どんどん参加してください。


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