頸損だより2002冬(No.84)

「車椅子の目線になって」

西村忠雄

今年の夏も僕は名古屋に行きました。最近は毎年ちゅうか年に1.2回行ってるかも。世話になってる人(以後マコはん)はなんと愛知県民にもかかわらず、今年の秋から大阪頚損会の購読会員となりメーリングリストにも登録されました。ちゅうわけで今までのように好き勝手に僕が名古屋の人のこと、つまりマコはんのことは書けなくなってしまいもしかすると事実を歪曲する可能性もありますがあしからず。(嘘)

とりあえず今回もマコはんに大阪まで迎えに来てもらい、うちのスロープ付きの車に乗って名古屋まで運転していってもらいました。途中、滋賀県で高速を降りてお互い知ってる滋賀県の人とインター下りたとこのファミレスで待ち合わせしてたのですが、こっちが少し遅くなってしまい向こうの用事の時間の関係で来れなくなってしまったとのこと。最初は諦めたのですが、向こうの用事がすんでから家に直接行っていいか聞くとOKと言われたので電話で相手の住所と行く道を教えてもらい行きました。その人は女の人で、生まれたときからの病気で成人してから徐々に歩けなくなり、寝るときや調子の悪いときは呼吸器をつけてる人です。しかしその人は毒舌で俺に対してボコボコ言葉の攻撃をあびせてくるような元気な人で、マコはんとは仲良く振舞うといういわば俺のライバルみたいなもんすねー ほほほ。その家には2時間ほどお邪魔して、それからまた滋賀のインターから名神に乗って名古屋に向かいました。結局マコはんの家についたのが10時前くらいでその日は少ししてから寝ました。

次の日は名古屋のこれまた二人の共通の知り合いらと三重県の長島スパーランドに行きました。マコはんの家から高速に乗って1時間ちょっとで行けるとこです。ナガスパでの出来事はいずれすね。そして次の日は僕がもう一台持っていった手動の車椅子を車に積みこんでマコはんの家の近くの地下鉄の駅まで行き、そこで車から下りて僕は電動車椅子、マコはんは手動の車に乗りこみ二人で駅まで行きました。その駅は上に上る階段が15段ほどあって、その奥に改札があるのでまず僕がちょうど階段を上ろうとしてた人に声をかけて、駅員さんを呼んできてもらうように言いました。すると駅員さんが現れ僕達を見ると少し待っててと言い、あと3人ほど駅員を連れてきました。そして僕のほうから車椅子ごと担いで階段を上り、次にマコはんのほうを担いできました。このときマコはんは心の中で申し訳ないなと思ったそうですが、これもバリアフリーのためと思って黙って担いでもらったそうです。ふふ。そして改札を抜け、ホームまではエスカレーターで行き、電車には駅員さんが板をひいてくれて乗りました。その地下鉄の駅は「藤が丘」といい名古屋の中心よりかなり遠くです。そして目的地は栄というとこまで行って乗り換えの矢場町というとこです。

いざ現場に到着してから地上まで行くには少し長めのスロープを登り、そして少し急で短い坂を登れば到着です。着いてからの行き先はナディアパークというロフトなどが入ってる大きなビルに行こうと思いましたが、結構道がデコボコしてたり斜めになってたりしてたので初めて車椅子に乗るマコはんにとってはきつかったみたいで、すぐに腕が筋肉痛のようになる感じだと言ってました。確かに僕は電動で普段から乗り慣れてるからそんなに感じませんが手動の人はきついんやろなーと思いました。

10分くらいこいでいくとナディアパークに到着しました。そこで目的があったわけではないので、とりあえずビル内の案内を見て休憩するため喫茶店なんかを探しました。地下一階にあるみたいなんでエレベーターで下りました。しかしマコはんは前向きでエレベーターに乗ってたので、下りるときに後ろ向きではうまくこげずぶつかりながら下りてました。地下一階をグルッと回ったのですがお茶を飲めるようなとこではなかったので、また地図を見て今度は上に行きました。エレベーターを下りたとこに外を眺めれる喫茶店のようなとこがあったので、そこに二人で入りました。僕はサンドウィッチとコーラを頼んだんですが、コーラは懐かしいビンで出てきました。もちろんコップはちゃんと出てきたすよ。ほほほ 。マコはんはコーヒーやったかな・・・

それからロフトに行き適当に店の中を見て歩いてたら抱き枕が置いてあり、しかもラブラドール型で見た瞬間買おうと思いマコはんに取ってもらいました。色は肌色のラブです。すると黒のラブもあったのでそれをマコはんは買いました。買って大きな袋に入れてもらいお互いの車椅子の押す取っ手に引っ掛けてもらいました。タイヤと袋が擦れて少しうるさかったですけどね。(・m・)ププ

店を出ると適当に入った場所で「超大作展」というのがやってたので、すごいものを展示してるんやなーと思ってたら超大作て人の作品が展示されてました。しかし作品よりも作品を入れてる装置のほうですごかっです。大きな装置で透明の四角い箱の中にそれぞれ昔の掃除機や炊飯器など入れてるやつが、グルグルとゆっくり時間をかけて一回りするようになってました。ついでに奥に入ると椅子も展示してあったので、マコはんは車椅子から椅子に座ったりしてました。あとはいろんなパネルが貼ってあったり印刷技術進歩なんかを展示してました。結局なんの展示会かわからなかったいけどね。それから車椅子用のトイレを探してるときにポスターで二日後にルパン三世展をロフトでやると書いてたのでまた来ようと思いました。

帰りは来た道をそのまま逆に進んでいきました。藤が丘の駅に着いたときは駅員さんが「お帰り」と挨拶してくれてよかったす。僕にとっては特別変わったことはないんですが初めて車椅子に乗って小旅行の感じで、行ったマコはんはいろんなことを思ったと思うんでなんか思ったことを書いてもらおうと思い、本人に伝えたら書いてくれるとのことでよかったです。この下からマコはんどうぞ。


マコです。はじめまして。ただ、名古屋の中心街に遊びに行くだけのつもりだったのがひょんなことから、私も車椅子に乗っていくことになりました。出発前はわくわくしていたんです。ところが、車を降りたとたんにもう大変。ただ、道を横断するだけだったのですが、四苦八苦してしまいました。平らだと思っていた道が実は傾いているのですね。いえ、傾いていることは知っていたけれど、それを実感したのは初めてでした。

ちょっとした傾きにこんなにも反応してまっすぐ進めなくなるのか、と驚きでした。

電車に乗り込み、さあ、一安心。ところが、よくよく思ってみると電車の揺れに対して腹筋で身体を安定させていることに気が付きました。目の前のただお君は、腹筋がきかない。ではどうやっているのか。 私も力をぬいて、自然の動きに身をゆだねました。

そしたら、すぐに酔ってしまいそうだったのです。こんなに電車が揺れるとは!

今乗っているのは地下鉄。地下鉄は比較的揺れの少ない電車なのに!このことは大きな驚きでした。ただお君が前に書いていますが、駅から出てきたところにある長いスロープは行きは長い登り坂でした。必死で力をいれてこぐと、止まりそうになりながらもかろうじて登れるくらいでした。これ、ちょっと力の弱い人には無理なスロープだ。バリアフリーということで、スロープがあればオッケーという考えではだめだなとつくづく思いました。

この坂は帰りは逆に下り坂です。何しろ長いので加速度がついて恐ろしいことになりました。ブレーキのかけ方など、慣れるとじょうずにできるのかもしれませんが、私はこの下りのスロープでは摩擦で手が痛くてじょうずにブレーキがかけれません。それなら開き直ってスピードにまかせて、いざとなったら飛び降りるさ、と思うことにしましたが、実際に車椅子に乗っている人は飛び降りることなんできない。それに気づくと、怖いことなんだなとつくづく思いました。

次にあった短いスロープは、短くて急。とても登りきらない。すべて車椅子オンリーで、と思っていた私にはとても残念でしたがやむを得ない、きょろきょろとあたりを見回して、車椅子から降り、坂を押して登るとまた急いで座りました。誰かが見ていたら、なんだ、あれ、と思ったことでしょう。しかし、これも役にたたないスロープということですね。歩道はがたがた。おまけに傾斜がある。こんなに走りにくいところだとは思わなかったです。傾斜があるため油断をしたら、車道の方へ飛び出しそうになる。ほんとに恐ろしいだんだん走行に慣れ、道の傾きにも対処できるようになった頃には肩甲骨のあたりは、完全に筋肉痛でした。

建物の中のフロアはとても走りやすかった。歩き疲れる、ということもなく、ショッピングを楽しみました。しかし、陳列棚の上の方は、思ってた以上に見えにくかったな。

わかっていたつもりなのに、あらためて驚くことが多いです。エレベーターの出入りもそう。うしろ向きに出るときは、トビラが閉まらないうちにとあせればあせるほど、向きがぐにゃぐにゃになり人にぶつかり、ドアにぶつかり、悲惨。車椅子の印象が悪くなる!とただお君に言われてしまいました。確かに。それにしても、鏡はおしゃれチェックのためにある、と思っていた昔の自分が恥ずかしいです。

いろいろとありましたが、発見や驚きが多く、貴重な体験となりました。名古屋の中心地「栄」の駅には、あれ以後、新しくエレベーターが増えました。あの時、ひとつ乗り換えるだけで4回もエレベーターに乗らないといけないと言われ、本当に驚きました。一番手間のかかる場所だったそうですが、少しずつでも改善されているというのはいいことだな、と思います。

もどってきた時に、駅員さんたちが「お帰りなさい」と声をかけてくれたのはとても嬉しかったです。普段なら駅員さんと触れあうことなどありませんから。駅員さんに感謝したのも初めてかもしれません。それからまた階段のところをかついでもらうことになるのですが、心の中で手を合わせていました。しかし、地下鉄の駅に階段を使わないといけないところがあるとはこの時まで思いもしませんでした。たまたまこの駅だけがそうだったらしいのですが、2005年に開催される愛知万博の会場にもっとも近い駅だしきっと改善されることだと思います。というか、改善されないと世界の万博など開く意味がありませんね。 以上、珍道中の感想でした。


天使のメロディー
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