頸損だより2003夏(No.86)


 菜の花

あたたかい春の日差し

まだ大きなランドセル

ゆっくり歩く帰り道

ふと見上げたその先に

忘れもしない眩い光景

小さな胸に訪れた

初めての驚き

早く誰かに伝えたい

あの鮮やかに広がる

黄色い花のこと

母はやさしく答えてくれた

菜の花だよと教えてくれた


 大喧嘩

激しい雨音

鳴り響く雷鳴

青空が恋しくて

見上げる窓の向こう

やがておさまる天の怒り

雨上がりの水溜まり

悲しく流れる雲が映る


 意地っ張り

青空が疎ましく

穏やかな日差しに

背を向けた

やさしい心

大切なひと

ほんとは分かっているけれど

素直になれない自分がいる


 雀

小刻みに震わせる翼

忙しそうなさえずりが

朝日の隙間に舞い上がる

誰のために鳴いてる

誰のために急いでる


 共鳴

君の沈黙が胸を叩き

君の涙がやさしさに

君の美声が胸に響き

君の笑顔に癒される

如月優喜

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