頸損だより2004春(No.89)

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「人生のリスタート」


「もしもあの時こうしていたら、その後の人生はどうなっていただろう?」と想像したことは誰だってあると思います。一度しかない人生は後戻りが不可能だから、"タラレバ"は考えても仕方がないことですが、でも、どこかで違う選択をしていたら、現在とはまったく違う人生を歩んでいたかもしれないんで、ターニングポイントとなった時間に戻って、そのときの決断を変更することがもし可能だったら、現在の自分はいったい何をして、どんな道を歩んでるんだろう…。

映画「天使のくれた時間」は人生の岐路でもし主人公が現在とは違う決断を下していたら、その後どうなっていたか?を見せてくれるロマンティックな大人のファンタジーです。ウォール街で大成功した投資会社の社長ジャックは超高級マンションに住む優雅な独身貴族。彼は13年前に、仕事を優先するために「二人の愛は100年経っても変わらない」と永遠の愛を誓った恋人と別れたんですが、突然現れた謎の黒人青年の導きによって、「もしもあの時彼女と別れていなければその後の人生はどうなっていたか?」という、「"現在とは違う"人生」を経験させられることになるんですね。そこは何でも手に入れられた自由な彼にとって、実に居心地の悪い人生だったんです。毎朝犬に起こされ、子供を保育園に送ってから安月給の仕事をして、夕方になるとまた子供を迎えにいって、オムツ交換をして、寝て、犬に起こされる…という変わり映えのない毎日を繰り返すだけ。ところが、そこには愛する妻と子供がいて、平凡だけど愛と温もりがあったから、次第に彼は「自分の人生でほんとうに大切なモノとは何か?」ということを考え始めるようになるんですね。

独身社長のジャックはクリスマス返上で仕事に追われる忙しい日々を送ってますが、そんな生活に何ら不満は感じてません。一方、タイヤの小売りをする家族想いの"ジャック"は人生にまったく計画がなく、毎日同じことの繰り返しのルーティンワークにうんざり。やりたいことが何も出来ない生活に「自分の人生はこれでいいのか?」と自問するばかり。僕は後者の"ジャック"に共感しましたが、現実はどうなんだろう? ほとんどの人は変わり映えのない毎日の中から「自分の幸せ」を見つけていくんでしょうね。それが妻だったり子供だったりするんだろうけど、何でもいいから人生に"確か"なモノがあれば人は生きていけるのかな。

子供みたいにはしゃぐ奥さんが可愛い。結婚記念日にはプレゼント交換をする夫婦。そのとき「早く見せて」とおねだりする彼女はとっても可愛いし、ケンカしてもすぐに許してる奥さんを見てると、夫婦でも恋人のような関係でいることに、変わらぬ愛を感じられていいです。チョコケーキをめぐるやり取り、そこからキスに繋がるシーンが僕は気に入りました。はしゃぐ子供の顔から一瞬にして大人の表情に変わる、こんな可愛い奥さんと無邪気な子供がいる人生なら、安月給でも家族想いのマイホームパパでいるほうが優雅な独身生活よりいいかもしれない!? 

質問:あなたは今の人生に満足してますか?大切なのはどの道を選ぶかではなく、自分が選んだ道をどう生きるかなのかもしれません。


「天使のくれた時間」('00アメリカ)
原題:「Family Man」(=家族想いの夫)
監督:ブレット・ラトナー(「ラッシュアワー」「ランナウェイ」ほか)
出演:ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニほか

<ストーリー>

ウォール街で大成功した投資会社の社長ジャック(ニコラス・ケイジ)はクリスマスの前夜、謎の黒人青年(ドン・チードル)に「これから起こることはすべて君が招いたことだ」と告げられた。次の日の朝、目覚めた彼の隣には13年前に別れた元恋人のケイト(ティア・レオーニ)と、自分のことを「パパ」と呼ぶ二人の子供が…。(ビデオレンタル中)


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赤尾"映画中毒"広明

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