頸損だより2004秋(No.91)

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「思春期のオトナたち」


誰にでも「思春期」と呼ばれる時期はあったはずです。まわりに明るく振る舞ってみせたり、不安に苛まれ、自分の存在理由を考えたり、自分の居場所を見失ったり、人付き合いが煩わしくなったり、親や社会に反発してみたくなったり…。「思春期」は多感な少年少女の時期に必ずぶち当たりますが、そんな時期の衝動的な行動を「病気」とされたら、みなさんはどう感じるでしょうか?

映画「17歳のカルテ」は実話を基にしたヒューマンドラマですが、心が少し不安定な主人公の少女、スザンナはアスピリンとウォッカを大量に飲んで衝動的に自殺を図ります。その結果、彼女は半ば強制的に精神病院に収容されてしまい、担当医師から「境界性人格障害」という病名を付けられました。この病棟には同じような悩みを抱えた少女が他にもいて、彼女たちにも病名があります。リーダー格のリサはまわりに自分の存在を認めてもらいたくて過激な行動をするだけなのに、「反社会性人格障害」と診断されてます。しかし、彼女たちは決して病気ではなく、ただ、人より少し感情の起伏が激しかったり、自分が心に抱えてる悩みをうまく表現できないだけ。それを病気というなら、世の中病気じゃない人なんていないんじゃないかな。カンペキな人間など存在しないから…。

彼女たちは心の"痛み"を消すために衝動的に手首を切ったりして自分の体を傷つけますが、本気で死ぬ気はないから、自殺はいつも未遂に終わる。崖っぷちに立っていて誰かが背中を押してくれることを願っていながら、自分の体を支えてくれる人も求めてる…。この相反するふたつの感情の間でいつも大きく揺れるから、同じような"痛み"を共有してる仲間がいるこの病棟は彼女たちにとって安心できる、居心地のいい場所なのかもしれません。だから、スザンナも最初のうちは心地よかったんですが、でも、自分と向き合い、自己の感情をコントロールできるようになって彼女は"ほんとうの自分""ほんとうの居場所"を見つけるんです。それはこの病棟ではなく、外の世界にあるということを…。

何が正常で何が異常か? その境界線は誰が決めるのか? 正常と異常、正気と狂気のボーダーラインを行ったり来たりするのが「思春期」なのかもしれません。これは誰にでもあるし、それによっていつボーダーラインを越えてしまうかは分からない。みんなどこか不完全だし、不完全だからこそ、人間らしいから…。そして、それは大人になっても同じこと。悩みを抱えるすべての人たちに、その解決法のひとつとして、この作品をオススメします。


「17歳のカルテ」('99アメリカ)
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリーほか

<ストーリー>

アスピリンとウォッカを大量に飲んで自殺未遂をした17歳のスザンナは精神病院に入院させられたそこで同じような悩みを抱える"仲間たち"と出会った彼女は次第に見失っていた"自分自身"を取り戻していくが…。1960年代の閉鎖的な精神病院を舞台にした自分探しの物語。


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赤尾"映画中毒"広明

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