頸損だより2005春(No.93)

巻頭言

大切なもの

〜魅力的な生き方とは?〜

松崎有己

最近、某起業家の社長Hさんが何かと世間を騒がせていますが、私はどちらかというと彼の言動には否定的です。大きなものに立ち向かっていく勇気は評価できますが、明確な企業理念を示すことなく、露骨に金の力にモノを言わせたなりふりかまわないやり方は品がないように思えます。敵対買収はたとえ成功しても思うような経営はしにくいでしょう。社会を動かすような大きな流れを考えた時に、そこにはやはり自らの利益のためだけではない、きちんと一本筋の通った誰もが納得できるようなものを提示できなくてはならないでしょうし、理解を求める努力をし続ける必要があるのではないでしょうか?

お金は大切ですし必要なものです。使い古された言葉かもしれませんが、それで幸せが買えるとは思えません。むしろもてあますと不幸になる場合すらあるようです。愛とは言いませんが、そのもう一つ前の段階の「思いやり」とか「誠実さ」を大事にしていきたいものです。

人の生き方はもちろん十人十色、いろいろなかたちがあって当然だとは思いますが、「モデル」と言いますか、自分が生きるうえでの指針となるような生き様を見せてくれる人はとても魅力的です。そういう意味で私にとってHさんは、モデルとは逆の「反面教師」となるのかもしれません。


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