頸損だより2005春(No.93)

障害者の自立と社会参加が危ない!!


厚生労働省は2004年10月12日に行われた、社会保障審議会障害者部会で「今後の障害保健福祉施策の改革案(グランドデザイン案)」を示しました。しかし、その内容はひどいもので、予算を削減することだけが目的であり、私たちの生活を改善するための改革とはなっていません。

また、グランドデザインは巧妙に作られていて、一見、良い事が書いてあるように見え、問題点も分かりにくくなっています。だから、ここでは、細かい説明は抜きにして、簡単にどんな問題があるか書いてみたいと思います。

  1. 所得保障など、いろんなことが平等でないのに、負担だけは平等にしろと言う。

    グランドデザインでは応益負担が導入され、ホームヘルプなどサービスを受ける毎に1割のお金を払わないといけなくなります。1時間の身体介護を受けるとおよそ400円払うことになります。生活保護世帯だと費用負担はなかったり、収入に応じて負担の上限はありますが、1ヶ月につき障害基礎年金2級の人で15,000円まで、1級の人は24,600円まで払い続けることになります。施設に入所している人の費用負担も増え、地域移行に向けたお金を蓄えることもできなくなります。


  2. また家族の顔色を伺ってサービスを利用しなくてはいけなくなる。

    本人の所得が低くても、家族と暮らしていて、家族が300万円以上の年収があれば、40,200円まで払い続けることになり、サービスを受けることを家族から反対される可能性もできてきます。


    負担能力の乏しい者 一 般
    生活保護対象者 市町村民税非課税T 市町村民税非課税U 40,200円
    負担無し(0円) 15,000円 24,600円

  3. 障害者の自立や社会参加とは何かが解っていない専門家に受けられるサービス量を決められる。

    認定審査会制度が設けられようとしていて、本人が何ができるかできないかの調査を基に、専門家(医者や学者など)が本人の受けられるサービス量を、たった3段階に決めようとしています。

    また、認定審査会で決められたサービス量を基に、どんなサービスでも利用できるというものではなく、障害程度区分毎に、受けられるサービスが決められてしまう。


  4. グループホームも変わってしまう。

    今までグループホームは、重度障害の人も居れば中度障害の人も居たし、一人一人ホームヘルパーの派遣も受けて自由な生活ができたのに、グランドデザインでは、重度の人はケアホームでヘルパー派遣を受けられなくなり、中度の人はグループホームのままだけど就労しているか、職業訓練を受けてることが条件になります。


  5. 移動介護が昔に戻る。

    支援費になって、ガイドヘルパーもいろんな事業所から派遣を受けられるようになって、自分の好きな曜日、好きな時間に、好きな所へ行けたのに、グランドデザインでは、決められた事業所から、そこのルールで派遣を受けなくてはいけなくなり、土日の派遣が受けられなかったり、9時〜17時の間しか派遣を受けられなくなる可能性があります。


  6. 精神障害者の通院は、肢体障害者の車イスと同じ。

    精神障害者が通院して、話を聴いてもらったり、薬を飲んで気持ちを安定させる事は、贅沢ではなく生きていく上で必要なことなのに、サービスを受けたんだからお金を払えと言う。所得保障が全然できていないのに、他の医療費もそうだから同じにしろと言う。(車イスも応益負担なのはおかしい。)


  7. やっぱり制度の谷間に居る人は置き去りなんや。

    グランドデザインで唯一評価できることは、身体・知的・精神の3障害の制度が一本化されたことですが、それでもやっぱり、難病者や自閉症、高次脳機能障害の方たちのことが考えられていません。障害種別を超えた、すべての障害者が使える制度を作るべきではないでしょうか。


  8. グランドデザインには権利がない!

    支援費制度には不十分ながらも、理念として自己選択、自己決定による自立が明文化されていましたが、グランドデザインにおける自立は、身辺自立や職業自立に戻ってしまっている上に、サービスを選択する余地もなくなっています。「障害者自立支援法案」という法律を作ろうとしていますが、この名前にも表れているように、障害者は「支援」の対象でしかなく、介助やサービスを主体的に受ける権利がなくなっています。しかも、ここでいう自立は「できるだけ介助を受けずに、頑張って就労して社会貢献すること!」を指しています。ほんとうに必要なのは「障害者権利法」なのです!!


  9. 私たち抜きに私たちのことを決めるな!!

    2003年1月の闘いで勝ち取った、「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」も一方的に終了したり、最近の交渉では課長すら出てこなくなったり。何より、昨年10月12日に突然出してきたグランドデザインを充分な議論も無いまま、2月の通常国会に上程してしまったことなど、サービスの利用者である私たちの意見を一切聴こうとせずに勝手に決めようとしていることは、絶対に許せません!!こんな乱暴なやり方を許してしまったら、今後もどんなひどい事を打ち出してくるか分からないので障害者が地域で生きるなんてことは不可能になってしまいます。だからこそ、一人でも多くの力を結集し、この事を阻止しないといけません! 2月15日〜16日の抗議行動は厳しい寒さの中、全国から2000人の仲間が結集しましたが、闘いはこれで終わりではなく、今後も何度かこのような抗議行動が行われると思いますので、みなさんもできるだけ参加してもらえるようお願いします。

(文責:東谷 太)

支援費の今後のスケジュール
05. ホームヘルプ単価の引き下げ
身体・移動介護身体介護伴う長時間利用の単価引き下げ
介護保険と同等の基準額にしていく
(30分あたりの加算額が1820円から830円に引き下げ)
知的長時間類型の新設
05. 10 公費負担医療の見直し
06. 利用者負担の見直し
応益負担の導入
06. 新給付体制でのサービス開始
06.1から段階的に進めていく(新支給決定手続きや障害程度区分の暫定見直し)
06. 10 地域生活支援事業・包括等新しい事業の開始

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