頸損だより2005秋(No.95) 2005年9月25日発送

巻頭言

あなたは覚えていますか?

〜当たり前のことを教えてくれる人〜

松崎有己

最近、レンタルビデオ店でアニメのタイガーマスクのDVDが出ているのを見つけ、はまってしまっています(^_^;)。ご存知かとは思いますがちょっと解説しますと、この物語は覆面レスラーのタイガーマスクこと伊達直人が虎の穴と呼ばれる組織によって育てられ、初めは組織の一員の悪役レスラーとして戦っていたが、その虎の穴を裏切ることによって命を狙われながらも、かつて自分が暮らしていた「ちびっこハウス」という孤児の為の施設の運営資金を捻出するために命を懸けて戦い抜く物語です。この物語は子供の時に再放送で見た記憶があるのですが、いま見返してみると当時は何気なく見ていたアニメに、こんなにも力強くストレートなメッセージが込められていたのかということに気付きとても驚きました。それは現在のテレビ番組が失いつつある(一部は完全に失われてしまっている)ものです。

「ほとんど勝つ見込みのない試合であっても決して逃げ出してはいけない。なおかつ相手が反則を使ってきても決して自分は反則で返してはいけない。なぜならそれが人の生きる道だから」この台詞に私は衝撃を受けました。このようにあたりまえのことをあたりまえに教えてくれる台詞をここ最近耳にした事がなかったからです。私は子供の頃にこんなあたりまえのことを、テレビ番組からも両親からも学校の先生からもきちんと教えられていたことを思い出しました。果たして今の大人たちは子供たちへのしつけや教育を正しくかつ十分におこなっていると言えるのでしょうか?大人たち自身があきらめと反則に満ちた生活をしてしまっていて子供たちを正しく導くどころではなくなってしまっているように思います。

「してはいけないことはどんな理由があってもしてはいけない。しなければならないことはたとえ槍が降ってもやらなければならない」と母親に言われながら私は育てられました。「そんな生き方はしんどいし古臭いよ、もっと要領よく楽に生きたらいいじゃない」と言われるかもしれません。確かに私もそのように思っていましたし胸を張って正義の味方を気取れるような立派な人間でもありません。しかし忠実には実行できなくても本来正しい行いとは何なのか、人はいかにして生きるべきなのかということを心のどこかに持ち合わせたうえでの言動をすべきだと、人は変われるし常に成長していけるんだということを、35年も前に放映されたアニメから改めて教えられました。

皆さんもきっとどこかで誰かから、あたりまえのことを教えてもらっているはずです。そしてそれをまた若い世代に伝えていけるはずです。「あなた自身の生き方があたりまえのことを教えている」そんな生き方ができたらすばらしいですね。


戻る