頸損だより2005秋(No.95) 2005年9月25日発送

医療的ケアNews

人工呼吸器使用者の痰(たん)吸引 ヘルパーにも解禁!!


今年3月24日、厚生労働省はALS患者以外の痰の吸引が必要な在宅療養者や重度障害者に対して、家族以外のヘルパーやボランティアなどにも吸引行為を一定の条件を前提に認める通知を各都道府県知事に出しました。(医政発第0324006号)。主なポイントは、以下となっている。

今年5月、兵庫で開かれた頸損連全国総会で「社会状況と課題」のひとつにあげられた、呼吸器使用当事者であり当会事務局員吉田憲司氏の報告文を以下に紹介し、また厚労省の通知「在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引の取扱いについて」も掲載します。

「人工呼吸器使用者の痰の吸引問題、さらなる前進に向けて」
ヘルパーによる痰の吸引がALS限定ではなくなったことに関して

大阪頸損事務局 吉田 憲司

難病や事故による後遺症により人工呼吸器の助けを借りないと呼吸ができない人がいます。代表的な例としては難病ではALS患者、事故では頸随損傷者があげられることが多いです。そして人工呼吸器をつけていると痰の吸引をしなければなりません。そうしないと気道が詰まって息ができなくなるからです。

これまで痰の吸引は医療行為に該当するとしての医師や看護士などの資格がなければ業(特定の行為に対して対価を得ること)として行うことは禁じられていました。そのため家族、または無償のボランティアでなければ吸引ができず家族が介護の主体になったり、ヘルパーの十分な手助けを受けられず家族への過酷なまでの負担は以前から問題とされてきました。

そんな中で全国規模のネットワークを持つALS協会などの団体は厚生労働省との折衝を重ねた結果、2003年の6月、厚生労働省は在宅ALS患者の吸引に関してヘルパーによる吸引を容認しました。

そのほかの人工呼吸器使用者に関しては継続して審議が続けられ2005年春に在宅ALS患者と同様に暫定的な措置とはしながらもヘルパーによる吸引が認められました。しかしこれまではグレーゾーンの扱いであった吸引の問題が、現状においてはやむを得ない措置として法律上の整理がなされたにすぎず、人工呼吸器使用者に関して新たなビジョンが示されたわけではありません。これからも在宅医療の名のもと、介護の主体は家族であることには変わりないのです。

また、ヘルパーの吸引は認められたもののその研修システムがどのようなものになるかはこれからの問題であり、今後の在宅のあり方や在宅福祉と医療との連携をどうしていくかなど行政に対し家族、支援者はもちろんのこと人工呼吸器使用者自身によるさらなる働き掛けが必要な時期にきています。


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