「もしもし、頸損連絡会ですか?主人(子供)が頸損になりました。受け入れてくれる病院を紹介して欲しいのですが・・・。ホームページから会の存在を知り電話をしました。」電話の向こうでは藁をもつかむ気持ちで話されている家族の姿が手にとるようにわかる。それは25年前の自分と家族の姿と重なる。医療技術は当時と比べれば格段の差があり進歩している。しかし、頸損者を取り巻く環境はさほど変わっていないし医療の現場では相変わらずの人間の尊厳無視の状態のようだ。
入院中の患者に対して早期退院勧告や、入院を受け入れる条件に3ヶ月で転院すること、また、頸損という障害名を聞くだけで入院拒否などが日常的に行なわれていると聞く。一体なぜこんな状況がいつまでも続くのだろう。3ヶ月という数字はどこから出たのだろう。すべてが医療費に関係しているのだろうか。それは以前より状況が悪くなっている。
一瞬にして体が動かなくなり何が起こっているのかわからないままに救急病院に入院する。手術をすれば元の状態になると思いながらすごす入院生活。しかし、そのとき家族には転院先を探すようにと言われ、さらに今後これ以上良くなると期待しないで下さい、ということまでも聞かされている。絶望のドン底に落とされて尚且つ次の行き場所を探せという家族に希望は持てるだろうか。
なぜ頸損者が病院に受け入れてもらえないのか要因となる項目を挙げてみよう。
重度だから・・・これがキーワードか。
まだあるかな。しかし、私には思いうかばない。すべてが重度であるということで集約されているのだ。現に軽度の患者が受け入れられていることを見ればわかる。
家に連れて帰り在宅で生活を、と勧める病院側に「はい、それじゃ、家に連れて帰ります」と簡単に言えるだろうか。家族や周りの関係者にしてみると、もう少し良くなればとの思いで医師や、看護師に懇願するだろう。説得されて在宅生活に入れば経済的負担、終りのない介護の疲れなどで家庭が崩壊した例もある。ではどうすればいいのか。解決策は無いのか。役所に相談に行けば解決できるのか。しかし役所も適応する法律がなければ動けない。
そこで法律などなくても動ける頸損連絡会の登場だ。同じ障害を持ち、同じ道を歩む者が話す言葉には生きようとする力と希望がある。医療技術が進み、支援する法律ができ、生きる力と希望があれば重度の障害者になろうとも人間の尊厳までも無視する社会にはならない。合理化ばかりを求めている現在において頸損連絡会の活動は地味ではあるが果たしている役割は大きい。しかし、今問題にしている早期退院勧告や、入院拒否が解決されたわけではない。頸損連絡会もこれらの問題解決に向けて動かなければならない時期に来ている。
2005年12月4日(日)、表題のような、非常に長いタイトルの行事が行われました。要は、今年4月から施行される障害者自立支援法の勉強の後、忘年会を行ったということですが。
この日は一時雨や雹の降る不安定な天候でしたが、学習会会場の明石市産業交流センターには、約20名が集まりました。講師である障害者情報クラブ代表の坂上正司氏の説明が、資料と共に大変分かりやすく、今まで説明を読んでも、その概要がようとして分からなかった同法の内容が、初めて理解できたような気がしました。とはいうものの、複雑な内容なので、まだまだ分からない部分も多く、それは参加の皆さんも同様のようで、質疑応答には多くの質問が出されました。
以下に、同法の内容を簡単に紹介します。なお、以下の内容は当日の資料などを元に私が独自にまとめたものです。内容の変更や誤りがあるかもしれませんので、その点ご留意ください。
同法で提供されるサービスは、大きく分けて「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つに分かれます。「自立支援給付」はさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2つに分かれます。そして、「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」の3つの中に、以下のような各提供サービスが用意されています。
次に、利用者負担について、ホームヘルプサービスを使う場合に絞って紹介します。
支援費から大きく変わるのは、利用者の所得に応じて負担額を決める「応能負担」から、利用量に応じて負担額を決める「応益負担」になる点です。多くの介護が必要な重度の障害者ほど多くの負担が必要となり、同法の大きな問題点の一つです。また、本人の所得ではなく、同一世帯の所得で負担額を決定する点も問題です。各種の負担軽減策が設けられていますが、これが極めて難解です。以下に、ひと月の負担額の決定の流れを見てみます。
上限額
原則は同じ世帯に属する方の状況で判断しますが、あなたが税制と医療保険で「被扶養者」でなければ、あなたと配偶者の収入とすることもできます。
サービス利用までの流れは以下のようになります。審査会がサービス量の決定をする点が、同法のもう一つの大きな問題点です。現状の介護保険に準じた基準で判定されると、最悪の場合、最重度の頸損者でも、1日3、4時間の支給量しか受けられない可能性もあります。
以上のように、自立支援法とは名ばかりの、障害者の自立を阻害するような内容の法律ですが、今年4月からはいやおうなしに同法の下で生活しなければならず、利用者側で少しでも工夫をして費用負担を抑える必要があります。例えば、家族と同居している場合は、世帯分離をして負担額が減ることも考えられます。
将来的には介護保険との統合がおそらく行われるでしょうが、その際には更なる費用負担の増加も考えられます。また、介護制度だけでなく、医療制度、生活保護など、あらゆる福祉サービスが抑制に向かいつつある中、私達の生活基盤を確保するため、絶え間ぬ国・社会への働きかけが今後ますます重要になると思われます。今の時代のすう勢に悲観することなく、これからも力を合わせて戦っていきましょう。
今回、無事にこの学習会を終えることができ、とてもほっとしています。当日は90人を越える人々に集まっていただきまして、4月より施行される障害者自立支援法を知ることのできるとても良い機会持てた事を嬉しく思います。参加してくださった皆様、どうもありがとうございました。今回の学習会には様々な対象の方がおられましたので、話の内容をしぼってお話することが難しく、限られた短い時間の中で全てをお話することは不可能でした。そんな中JILからの講師、平下耕三さんからは、優しく理解できる言葉で大きな問題点についての講演をお聞きできました。今回取り上げることの出来なかった部分については、当日にお配りした冊子を読んでいただけたらと思っています。私が学習会中に改めて感じたことは、市町村によって障害者への対応が大きく変わってくることです。自分の住む場所によってこれから先の生活が大きく左右されてしまいます。24時間介助を必要とする人が数多くいるにも関わらず、24時間より遥かに少ない時間数しか認めてもらえないことに憤りを感じるとともに、とても残念な気持ちでいっぱいです。しかし、当事者である私たち障害者の声が全く反映されていない現状をこのままにしてはいけません。私たちが世間に訴えていくことで現状は改善されるかもしれません。今回の様な学習会という場が、ただ単に私たちの学びの場とするのではなく、当事者である私たちの生の声を社会に訴えていけるような場になればより一層中身のあるものになると思います。これからもこの様な場所を大切にし、当事者の声を反映してもらえるように一緒に頑っていきたいと願っています。頑張りましょう。
大阪頸髄損傷連絡会から、鳥屋さん。兵庫頸髄損傷連絡会からは、三戸呂さん、宮野さんに、熱い熱いメッセージの発信をしていただきました。これだけても障害者自立支援法の学習会を開催した意味がありました。紙面をお借りして感謝の気持ちとお礼をお伝えできたらと思います。
後半は、がらりと雰囲気を変え、堅い話は置いといて、忘年会に突入です。明石市産業交流センターに隣接するショッピングセンター内にあるコナミスポーツセンターの食事施設「自由亭」に移動。10台ほどの車椅子でも利用できるスペースがあり、以前から、全国頸損連・兵庫大会時の韓国メンバーの歓迎会や、兵庫大会実行委員の打ち上げなど、兵庫頸損連の行事にはちょくちょく利用している、おなじみの場所です。ここで各自それぞれ好みの飲み物や食べ物で、楽しいひと時を過ごしました。
本当はこのあと当日の様子を写真で紹介できればいいのですが、カメラを持って行くのを忘れてしまいました・・・。申し訳ない。ということで、短い文章ではありますが、当日の様子をご想像くださいませ。