頸損だより2006夏(No.98) 2006年6月24日発送

『無年金障害者の訴訟報告と予定、活動について No.28』

学生無年金障害者大阪地裁訴訟原告 谷川信之

学生無年金障害者大阪訴訟の二審(控訴審)裁判が7月7日に始まります。 今年1月20日の一審判決は、私たち原告の生活状態やその置かれている社会状況については一切省みることのない血も涙もないものでした。

異例の190頁余の膨大な判決文にも、原告や無年金障害者のことを思いやるような箇所は無かったし、判決要旨も言わずに法廷滞在数十秒で立ち去った西川知一郎裁判長の突き放したような後姿を決して忘れません。18回もの裁判で訴えてきたことを無視され、苦渋の思いです。

身体障害者福祉法や生活保護法など、障害基礎年金に頼らなくても生活していくことができるといった的外れで無茶苦茶な論理を押し付け、受傷や疾病で障害者になったこと、無年金になったこと、なにもかも自己責任であると言い切られたことに、最終的に司法に頼ったことが仇にされ無念の思いです。

障害者が人間らしく生きていくためには、障害基礎年金は不可欠です。

制度の改善をしないことには無年金障害者が発生することは、制度発足の当初から予見されていました。昨年、不十分ながらも救済立法(特別障害給付金支給法)が制定されてはいますが、根本的な国民年金法の不備について、国は、30年以上にわたって放置し続けているのです。大阪地裁判決は、原告らの証言によって無年金障害者の困難を十分に知りながら、その救済を拒否し、国の無為無策を追認したものであり、断じて許すことはできません。

即日控訴した大阪高等裁判所での控訴審では、地方裁判所判決で欠落していた無年金障害者の窮状や制度の不備を、学生の強制適用除外について、裁判の中で再度問うて、勝訴判決を得たい!!

※裁判終了後、報告会を行いますので、出席して下さいますようお願いします。
※別紙の大阪高等裁判所への要請書にも、ご協力願います。

私たち原告10名は大阪、兵庫、奈良の三府県に住む身体障害者8人と精神障害者2人で、いずれも学生だった20〜25歳の間に事故や病気などで重度障害を負ったが、平成元年の国民年金法改正(3年施行)までは学生は強制加入の対象外で、加入していなかったため不支給となった。

無年金障害者の実態と現状を書面、ビデオ、口頭陳述などあらゆる方策を通して、大阪高等裁判所裁判官を納得させる強い意思と行動が必要であることを肝に銘じ、控訴審を戦って行きますので、皆さまのご支援・ご協力・ご激励をお願い申し上げます。

障害者自立支援法・医療改革法・消費税増税案を含めた税制見直しなど、暮らしにかかわる重大な制度や施策の改変が進められ、大きな影響を与えることが懸念される厳しい情勢の中で、学生無年金障害者訴訟の行方、今後の高裁での控訴審、最高裁への訴訟、判決がどうなるか楽観視することはできません。

この学生無年金障害者訴訟を前進させ、勝利へと導くことは、国民の生存保障、所得保障、基本的人権保障につながる重要な取り組みです。

政府(厚生労働省)がなすべき対応は、長い間将来に深刻な不安を抱き、社会的自立に困難を強いられてきた学生無年金障害者原告らをさらに苦しめ続けることではなく、3件もの違憲判断が下されたことを重く受け止めて、過去の誤りを率直に認め、不支給処分の取消を前提とした根本的な解決を早急に行うことです。


全無年金障害者の早期救済と安心できる年金制度の確立を求めるFAXを送付してくださいますようご協力願います。

◇内閣総理大臣 小泉純一郎 FAX:03−3581−3883
◇厚生労働大臣 川崎二郎 FAX:03−3502−5173

私たちは、すべての無年金障害者の解決と、無年金障害者を生み出さない年金制度改正を求めて活動しており、ご支援ご協力をお願い申し上げます。
学生無年金障害者の年金支給を実現する関西の会
郵便口座 00950−4−131048
賛助会員 (年会費1口)個人2千円、団体5千円

                          2006年  月  日
大阪高等裁判所 第12民事部 御中

要  請  書

国民年金法は、国民皆年金を標榜して制度化されたにも関わらず、約30年の長きにわたって学生の制度加入を除外した結果、20歳以後に障害を受けた学生は無年金のままで放置されてきました。全国各地で起こした訴訟で、東京地裁や新潟地裁、広島地裁の判決では年金不支給は憲法違反であるとして国の責任を認め、障害基礎年金の支給を認める途を開きました。しかし、大阪地裁判決はそれとは全く逆に、国会の立法裁量の範囲内であり、憲法違反とは評価できないとし、原告らの請求を全面的に斥けました。

多くの無年金障害者は、重度の障害があるため雇用の機会が得られず家族の援助に頼ってきましたが、家族の高齢化によってそれも難しくなり、不安定な生活がますます強まっています。この4月から実施された「障害者自立支援法」により、生活に欠かせない福祉サービスがこれまでの応能負担から応益負担となり、ヘルパーの利用も出来にくくなるなど、生活の困難さがいっそう増えました。昨年4月から実施された「特別障害給付金」は、障害基礎年金の6割程度しかなく、所得保障としては極めて不十分なものです。

貴裁判所では、このような厳しい無年金障害者の生活実態を直視し、生きる希望の持てる所得保障がなされて人間らしい生活が確保できるよう、公正な判決を切に要請します。









住 所

職業・団体名(職名)

氏 名


戻る