頸損だより2006秋(No.99) 2006年9月30日発送
障害者自立支援法 全面施行開始
いよいよ10月1日から新サービス体系でスタートした自立支援法。新サービスでどのような変化があるのか。全面施行に向けた問題点を確認します。
障害者自立支援法の10月全面施行に向けた問題点 【情勢報告】2006年8月時点
- 利用料負担
- 応益(定率)負担によって障害の重い人ほど費用負担は大きくなる。ホームヘルプやガイドヘルプ、通所授産などのサービスの利用断念、利用控えが発生。京都・横浜などに続き、吹田・大東?など自治体独自で負担軽減策をとる動き。
- 地域生活支援事業については府が市長会を通じて軽減策として、ガイドヘルプ(低所得1・2:月2千円、一般:月4千円)、日常生活用具(低所得1・2:月1.2万円、一般2.4万)を上限とする案を示したために、それ以下の負担にしようと考えていた市で横並びとなりつつある。
- 地域活動支援センターでは小規模作業所からの移行したところは負担なしとする市町村も多いようだが、デイサービスからの移行分については未定。
- 8月に全市町村に「地域生活支援事業の国庫補助配分額」が内示されたが、地域生活支援事業の全体額が従来のガイドヘルプの総事業費程度しかない、あるいは下回るなどの厳しい状況らしい。利用料負担による制度の利用抑制などの動きにはね返る恐れ。
- 障害程度区分の判定状況
- 厚労省の試行事業での判定結果
非該当 区分1 区分2 区分3 区分4 区分5 区分6
3.6% 23.1% 26.7% 14.4% 11.0% 7.8% 13.4%
(非該当〜区分3で67.8%) (区分4〜6で32.2%)
- 現在、集約されている全国の実際の判定結果がどう出ているか。この試行事業の結果よりも若干高くなるかもしれないと言われている。
- 身体機能の判定が中心となっているため、障害種別で区分格差が出る(知的:区分3以下、精神:区分2以下がやはり多いもよう)。また、市町村や調査員・審査会による格差も指摘されている。
- 程度区分認定の結果により、サービスが低下する恐れ。それぞれの状況、ニーズに対応した認定結果が得られるよう「調査項目」の抜本的な見直しが必要。
- ホームヘルプ
- 障害程度区分毎にホームヘルプの「国庫負担基準額」が定められたが非常に低く、基準額の1/2が国負担、1/4が府負担で、それ以上は市町村の負担となる。
- とりあえず3年間は従前額保障されたが、それ以降は未定。大阪はホームヘルプの「利用者数・一人あたりの時間数」が全国でも高いレベルにあり大きな問題となる。
- 重度訪問介護や行動援護は程度区分による利用制限があり、対象外の者は身体介護3時間以内、家事援助1.5時間以内が基本とされ、長時間利用はできない恐れ。
- ガイドヘルプ(移動支援)
- 各市町村の地域生活支援事業の国庫補助配分の内示額が厳しく、派遣時間数や報酬単価の引き下げ、行き帰りのみ保障する「中抜き問題」、グループ外出の強要、外出先制限などが発生しないよう警戒しなければならない。
- また、精神障害者のガイドヘルプが新たにスタートしたり、従来の施設入所者ガイドヘルプなどが移動支援に編入されることになりそうだが、市町村によってはこれらのガイドヘルプを実施しないこともあり得る。
- グループホーム・ケアホーム
- 10月から直ちに新体系に移行。障害程度区分により、区分1と非該当はGH対象、区分2〜6はケアホーム対象者となる。
- 世話人報酬の減額の他、ホームヘルプの利用は基本的に認めなくなり、生活支援員や夜間支援体制の加算に変わり、報酬が大幅に減額される。従来、重度区分(月14万)、軽度区分(月7万)に加えホームヘルプ利用が認められてきた。職員体制の大幅な低下は、入居者の事故を招く危険性。
- 障害程度区分3以下は夜間支援加算がないことが問題となり、現行夜間体制のある所は区分2、3でも若干加算がつく方向となった。
- 従来、府・市町村で実施されてきた「運営安定化加算」等の上乗せ補助がどのような形で再編されるかが焦点化している(新規のGHや精神GHの上乗せ補助も含めどうなるか)。
- 「ホームヘルプ+世話人」で運営する経過的給付も、ホームヘルプ部分の従前額保障はなされたが、世話人部分は月4万に減額。府での上乗せの可能性は不明。
- また、日額払いは4月からスタートしており、とりわけ入院時は報酬が大幅に減額されることも大きな課題となっている(精神・知的ともに)。
- 地域活動支援センター
- 補助額は結局、府では加算はないもようで、上乗せは市町村次第という方向となってしまった。
T型(20人以上、1200万)、U型(15人以上、900万)、V型(10人以上、750万)
- T型は精神障害者の地域生活支援センター(年2000万)からの移行が主に想定されているが、市町村によっては補助の減額の恐れ。
- 府では「U型は機能訓練、社会適応訓練、入浴等の実施だからデイサービスに限定」としたが、「市町村が認めた作業所は可」と修正した。
- 従来の小規模作業所制度の旧A型(1330万)、旧B型(890万)については、「みなし小規模通所授産」(国の小規模通所授産と同額程度を府・市で折半)に移行し、新A型(1330万)、新B型(1050万)とする方向。法人格取得と、5年間で新体系への移行が必要となる。
- 作業所制度のT型(7人以上、650万)、U型(5〜6人、450万)は残り、新規の作業所も認める方向だが、地活センターV型などに移っていってもらう方向。
*大阪市では地活センターへの移行について、15人規模の作業所はU型、10〜14人
規模はV型という形で移ってもらい、国基準額に市が上乗せして現行の作業所補助額を維持するもよう。
- 日中活動の新体系事業
- 報酬日額払いにより通所施設では4月から20〜30%程度も減額されている。しかも、3月末に「月の日数−8日」以上の通所はカウントされないとの方針が出て混乱したが、若干緩和された。
- 通所授産は現在20人定員で月20万超。多くの類型では、移行すると年1000万〜2000万も引き下がるためなかなか移行できないと言われている。デイサービスからの移行も半年間猶予のみ。
- 各サービスのあり方など支援の実態にそぐわない部分も多く、改善が求められている。また、障害種別や程度によって通う場が決められたり有期限であるなど、本人のその時の状況により柔軟に選択できないという問題もある。
- 相談支援事業
- 3障害の地域生活支援事業が引き続き相談支援事業として委託を受け続けられるか、他の支援事業所と統廃合するなどの動きが懸念されている。
- また、委託料の減額の恐れがある。すでに減額しはじめた市町村や、居住サポートなどの事業を組み合わせて減額しないように工夫する市町村もあるなど様々な対応が予想される。