頸損だより2007春(No.101) 2007年3月24日発送

巻頭言

「自立支援法の行方は?」

〜 障害者から金をまきあげてどうするの? 〜

三戸呂克美

困った法律だ。自立支援法はどこまで悪法の名を欲しいままにするのだろう。障害者から金銭を取り上げてどうしようというのだ。国会で話し合われているテレビ画面を見るが、何も知らない大臣やお役人の発言は現実とかけ離れた口からでまかせの回答ばかり。「実態を、現実を知れよ」、と叫びたくなるほど虚しい。自己負担金を減額すると決まると、おお!さすがや、悪いことばかりでない。ちゃんとわかっている人もいる。素直に喜んだが、なんやまたかいなー!と呆れる。昨年10月から本格施行されたがそのとき法人減免という制度があった。自己負担金を法人が少し負担しますよ、という制度。しかしすんなりと制度を利用できたのではない。条件付だ。資産(住居以外の土地や建物など)があればダメ、預貯金の金額が350万円以上あればダメと決められた。多くの人は減免の制度を受けなかったようだ。制度を受けなかったその理由は、通帳のコピーを出せ、資産の内訳を出せという条件があったからだ。今回の自己負担軽減制度は350万円の額が500万円に上げただけであとはなんら変わらずだ。

己が自分自身を認めているもの、それぞれ持っているものがある。これだけは自分で守りたいもの、この線からは絶対他人に入って欲しくないこと。他人の介助を必要とする重度の障害者にはプライバシーは存在しない。しかし、この部分は、この線は守りたい。それが通帳の中身であり、資産の内訳である人も多いのではないか。そこまで公開してしまえば結局無防備状態になり、あげくは自分までも見捨てることになりはしないだろうかと心配する。それを知りながらあえて求め、結局断る者が多いと見透かしての姑息な手段に出る国のやり方には納得できない。

現実を見ればわかるだろうに、今すぐに資産をお金に変えるわけではないし、預貯金も今すぐに使うということでもない。なのに、国はそれがあるだけで自己負担金を課す。資産はなぜ必要なのか、預貯金はなぜするのか、すべて自分を守る為である。国が何もしないとわかっている現状でなぜ自分が身を守るに必要な、鎧、兜を投げ出さなければならないのか。障害者を丸裸にして何のメリットがあるのだ。生活ができる環境も整備せずに金銭だけをまきあげる。必要ない所では湯水のごとく浪費している国家の現状は誰が見ても変だ。その自分たちの現状をかえりみずに弱者をいじめてどうするのだ。重度の障害者が1年間にもらう年金額以上の額を毎月議員がもらっているという。それも何に使ってもいいし領収書も要らない。100万円の1割が10万円、1万円の1割が1000円、どちらも1割だが意味合いは全く違う。我々は今その1割を払っている。


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