頸損だより2007春(No.101) 2007年3月24日発送

特集2

カナダ・バンクーバー 旅のルポ

〜タコヤキボーイズ
地球の歩き方シリーズ
カナダ珍道中編〜



福祉先進国と言われる国は、どんな様子なのか? 昨年10月、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーを旅してきました。現地の障害当事者や関係機関の人たちに会い、多くの話を聞くことができ、また自分たちにとって貴重な旅の体験を重ねることができました。今回の旅がどういうものだったのか、

に分けて報告します。皆さんの旅の参考になればと思います。どんどん旅をして旅力をつけていこう!

【鳥屋 利治】

◆ 旅の行き先

カナダBC州(ブリティッシュコロンビア州)バンクーバー

宿泊は「Ramada Downtown Vancouver」ホテル

ダウンタウンにあり、アクセシブルルームがある

ツイン一泊約1万円

435 West Pender Street

Vancouver, British Columbia Canada, V6B 1V2

http://www.ramadadowntownvancouver.com/

◆ メンバー

※写真は「TrailRider」の体験時

◆ 旅のきっかけと目的

きっかけは

目的は

※この旅は、国立看護大松井和子先生や、バンクーバーの上村君代さん、石川ミカさんの強力なサポートがあって実現した

◆ 費用の目安

◆ 旅の行程

スケジュール 【10/7〜10/14 6泊8日 (1)〜(6)は詳細報告あり】

10/ 7(土) 11:05 バンクーバー空港着
ショッピングセンター散策
メトロタウンのフードコートで夕食
10/ 8(日) 午前 North Vancouver 散策
午後 (1)上野久仁子さん訪問
夕方 (2)KENTさん訪問(夕食パーティー)
10/ 9(月) 宮野・排便(朝)、三戸呂・排便(夜)
10/10(火) 午前 (3)ウォルトさんとGFストロング訪問
午後 (4)ジネット・アンダーソンさんをグループホーム
Noble Houseに訪ねる<Granville Island>
10/11(水) (5)Disability Foundation(Adeleさん)を訪問
TrailRider の体験
10/12(木) 宮野・排便(朝)、三戸呂・排便(夜)
午後 (6)福祉機器開発機関(TIL: Technology for
IndependentLiving) のサイモン・コックスさんを訪問
10/13(金) 13:05 バンクーバー空港発
10/14(土) 14:50 成田空港着

◆ バンクーバーでの移動

ハンディダートは障害ある市民の足 予約制 車椅子4台は入れるDoor to Doorの乗り物


バスがバンクーバーでの移動の中心 そのほとんどが車椅子対応


電車「スカイトレイン」はホームと電車の段差や隙間がなくスロープ板なしで乗り込みができる


バンクーバー・タクシーは普通に町中を走っている 電動車椅子でも乗れる


シーバス(船)も車椅子でOK

◆ バンクーバーの四肢麻痺者の状況

(1)上野久仁子さん

上野久仁子さんは、カナダで働いておられた1966年に頸髄を受傷。急性期治療の病院のあと、1年後にGFストロング・リハセンターへ。その後1年間のリハを終えて、ピアソンセンター(施設)へと移られた。ここで前述のウォルトさんやジネットさんたちと出会われているそうだ。ピアソンセンターでの数年に渡る生活の後、グループホームで約10年生活、そして今から約20年前にグループホームを出て地域の住宅での生活を開始された。

久仁子さんのお宅は、障害者も健常者も入居できる住宅になっている。久仁子さんは今、介助に掛かる費用を政府から直接受け取り(ダイレクトペイメント)、介助者を自分で雇用し給料を支払っている。久仁子さんの介助は実質1日20時間必要だが、政府からは1日8時間分の支給となっている。(多くの他の障害者の場合、1日4時間分程度の支給となっているそうだ。)1時間25ドルの政府からの支給で、そのうち5ドルは経費(介助者の社会保険等)、残りの20ドルを介助者に給料として支払う。つまり、160ドル/日(20ドル×8時間)で来てくれる介助者を募集するそうである。現在、ウィークデーに入ってくれる介助者、ウィークエンドに入ってくれる介助者、その他の計3名の介助者を雇って生活されているそうだ。

(2)Kentさん

Kentさんは頸損で、石川ミカさんの友人。そのKentさんは公的アパートに住まれています。アパートは現在7名の障害当事者と、ケアギバー(介助者)1名。障害のない人たちもこのアパートに住んでいます。介助派遣事業者がアパートのオーナーから何部屋か契約して買い取り、障害当事者に貸すというスタイル。Kentさんの場合は、上野久仁子さんと違ってダイレクトペイメントではなく、エージェンシーサービスで介助を受けています。それは、日本でのわれわれの方法と同じで、障害当事者は介助派遣事業者と契約し介助者を派遣してもらい、介助に掛かる費用は政府が事業者に支払うというもの。Kentさんも日によって異なるが1日5〜7時間程度介助派遣を受けている。ブリティッシュ・コロンビア州では、政府から介助に掛かる費用を直接受け取り自分で介助者を探し雇用するダイレクトペイメント方式を選ぶかどうか、CSILプログラム(The Choice in Supports for Independent Living)によって自分で決められるそうだ。

(3)ウォルト・ローレンスさん

ウォルトさんは、ブリティッシュ・コロンビア州の自立生活運動のリーダーであり、呼吸器を使用されている頸損者である。ウォルトさんは、38年前の17歳の時にダイビングの事故で頸椎C2・3を損傷。長期の呼吸器離脱訓練により昼間は自呼吸、就寝時にのみ呼吸器を使用。現在GFストロングの常勤ピア・カウンセラーとして勤務されている。かつてウォルトさんは受傷後、施設(ピアソンセンター)で暮らしていたが、そこから呼吸器使用の頸損者6名でグループホーム(クリークビュー)の設立プロジェクトに参加し、呼吸器使用者6名で入居された。80年代半ば、当時呼吸器使用者は病院か施設でしか生きられないと言われていた頃である。病院や施設ではない地域での生活を求めての自立生活運動である。その後、結婚を機に一般の住宅に移られ、今は奥さんと二人の子どもとの生活をされている。

GFストロングは、リハビリテーション専門の医療施設であり、ブリティッシュ・コロンビア州の頸損者の大半が急性期の病院を経てここで基本的なリハを受ける。現在30名ほどの頸損者が入所、外来が250名ほど、PTが7〜8名、OTが5名だそうだ。GFストロングのなかには車椅子メンテのセクションや、障害状況にあわせてパソコンをどのように操作するか工夫するセクションもある。

ウォルトさんの話では、このGFストロングの入所者へのリハビリテーション・プログラムの8割が「教育」だということ。その「教育」とは「自分自身が自分の障害に関する専門家であり、自分の身体や生活をコントロールできるようになること」、「同じ障害を持つ仲間にアドバイスできるようになること」だそうだ。

(4)ジネット・アンダーソンさん

ジネットさんは、ポリオにより人工呼吸器を使用されており、グループホームであるノーブルハウスの住居者代表である。

ジネットさんによるとこのノーブルハウスには、現在7名の障害当事者の方が入居されていて、年金を含むそれぞれの収入の3分の1を家賃として払われているそうだ。朝は3人、昼と夜は2人の介助者が常駐している。ジネットさん自身かつてはピアソンセンター(施設)に居られて、ウォルトさんたちとグループホームの設立にむけて運動されていた。ジネットさんは、グループホームであっても居室は一部屋で狭いものではなく一般のアパートと同じく広くとること、介助者が居ない場合でも一人で出入りでき過ごせる時間が持てるよう、設計段階からエンジニアとともに工夫を盛り込まれた。たしかにノーブルハウスは、ジネットさんのように完全四肢麻痺で呼吸器を使われる状態であっても、例えばドアや、エレベータの扉は床にスイッチが埋め込まれていて車椅子でそこを通れば作動する。エレベータ内のボタンも環境制御装置と連動させていて呼気でコントロールできる。

ジネットさんは現在、政府市議会の障害者連盟、障害者勧告委員の仕事もパートタイムでされている。

(5)Disability Foundationのプログラム「TrailRider」の体験

Disability Foundationは、バンクーバー市長であるサム・サリバンさんが主宰するNPO組織。サム・サリバン市長は19歳のときスキー事故で頸損となった。アデル・アームストロングさんによると、Disability Foundationは、サム・サリバンさんが1985年に創設しこれまでに7つのプログラムを立ち上げた。「ハイキング」「セイリング」「雇用斡旋」「Tetra」「ミュージックソサイエティー」「ガーデニング」など。「Tetra」はニーズを満たすための工夫を手伝ってくれるところ。そして「ハイキング」では「TrailRider」という特別なリヤカー型の車椅子に乗って登山やハイキングを重度の障害があっても、また若い人も高齢の人もみんなで楽しもうと工夫されたもの。これらのプログラムを通して、障害者の社会参加のきっかけに。また、障害当事者自身の社会参加する意識のきっかけづくりにと創られたプログラムである。

我々も「TrailRider」の体験に。UBC(University of British Columbia)のハイキングコースで「TrailRider」に乗って、前後から引いてもらい押してもらい、ハイキングコースの森林の中を約1時間ほど歩いた。車椅子を使っているとどうしても山や海などとは縁遠くなってしまうが、ムリだと決めつけずにやりたいと思うことは工夫して何でもやってみよう、というサム・サリバン市長や、Disability Foundationの考え方がよく伝わった。障害を理由に、楽しむことをあきらめない、楽しむことからはじめよう! 大切なことである。

(6)TIL&PROP

ここは「TIL」(Technology for Independent Living)という環境制御装置を扱うセクションと、「PROP」(Provincial Respiratory Outreach Program)という人工呼吸器を扱う2つのセクションから成っている。サイモン・コックスさんによると、「PROP」は州の呼吸器の一括管理(メンテやユーザーへの新規導入・教育など)をしており、人口400万人中の呼吸器使用者280名に対応している。呼吸器ユーザーの、呼吸器導入、メンテ、教育などに関する費用負担は一切ない、という州の政策。かつて呼吸器使用者は病院で暮らさざるを得なかったが、病院で掛かる費用より地域で暮らしているほうが政府としてもはるかに費用が掛からないことがわかり、呼吸器使用者の地域での生活をサポートするようになった。呼吸器使用者が地域で暮らすようになると、呼吸器の管理も地域に出てきて行うほうが効率的だということになる。つまり、呼吸器使用者とともに呼吸器管理機関も、病院から地域へと移行してきたわけである。そして、呼吸器使用者であれば大抵は家の中で環境制御装置を使って家電機器をコントロールするため、「TIL」にてユーザー個別の環境制御装置対応をしているということだ。現在「TIL」と「PROP」それぞれで呼吸療法士2.5名、エンジニア5名、在庫管理者1名、それにクライエントサービス者がいる。呼吸療法士が地域にいることはとても大きなことである。


四肢麻痺者が海外旅行する場合のポイント

〜バンクーバー視察調査旅行を例に〜

兵庫頸髄損傷者連絡会 宮野 秀樹


昨年10月にカナダ・バンクーバーを訪れた模様を「北の国から’06秋 タコ焼きボーイズinバンクーバー」と題して全国機関誌にて報告しましたが、今回は頸損だよりで報告すべく、「四肢麻痺者が海外旅行をする際に注意すべき点」という別の視点で、バンクーバー視察調査旅行での私の経験を書きたいと思います。少しでもみなさんの参考になれば幸いです。


1.旅行費用

まず一番に誰もが気になるのは旅行費用でしょう。安くすめばそれに越したことはないですが、障害者の場合、普通より割高になるのはある意味仕方がないことと捉えるべきかもしれません。安心した旅行を望むほど費用はかさむことになり、介助者分の費用も負担するとなれば、なおさら悩んでしまう問題です。また、旅行会社、航空会社の選定次第で費用に大きな差ができるため、本来であれば熟考する十分な期間を持って選ぶことをオススメします。

 

今回、私のケースでポイントとなるのは、

であり、上記をふまえて選んだプランは、

旅行会社:H.I.S.バリアフリートラベルデスクhttp://www.his-j.com/tyo/barrierfree/barrierfree_index.htm

航空会社:日本航空(JAL)

宿泊ホテル:現地の障害者に手配を依頼

H.I.S.に依頼したのはバンクーバーへの往復航空チケットだけでしたが、バリアフリートラベルデスクを利用したのは航空会社の選定にあたり、どの航空会社を選定すべきか迷ったからです。費用は抑えても快適な空の旅をしたいという要望を叶えてくれるのは、障害者の旅行を取り扱った数の多い旅行会社を選択する必要があると考えました。しかし、数ある旅行会社から選んだわけではなく、海外旅行の経験豊富な頸損者・T氏に情報を提供していただき、H.I.S.に決めたという経緯もあります。ただ、バリアフリートラベルデスクの応対は満足いくもので、短い準備期間であるにも関わらず、数多くのプランを提供してくれました。

今回のプランの費用を書き出すと、日本航空往復航空券チケット代93,000円(前売り悟空21≪条件≫出発21日前までに、航空券を発券させること。予約3日以内に全額入金&発券を行うこと。)、TAX(航空保険料・燃油サーチャージ等)16,600円、TAX(カナダ出入国税等)3,550円、TAX(成田空港施設使用料)2,040円、AIU海外旅行傷害保険7,500円、新幹線20,300円(新神戸駅⇔東京駅)、成田エクスプレス2,940円(東京⇔空港第2ビル)、合計291,860円(一人145,930円×2人)が航空機&国内移動代、そこに現地ホテル代65,100円(1部屋6泊分:$620×日本換金レート105円)が加わると総計356,960円が介助者分を含めた今回の旅行費用になります。ちなみに、床走行式リフト代やバス&モノレールチケット代、ミネラルウォーター代、その他諸経費で3〜4万円を使っているので、それらを含めると約40万円(1人約20万円)で6泊8日のバンクーバーを満喫してきたのですから、安かったのかもしれませんね。


2.航空会社

今回、海外は2度目にあたり、2回ともJALを使ったので他の航空会社についてはどのような応対をしてくれるのかわかりませんが、空港での問題は空港職員と航空会社の連携が不十分であることのように思われます。今回はH.I.S.による「ひらそるシート(障害の程度、車いすの寸法・重量や航空機内での要望を書く書類)」に航空会社に配慮してほしい点などを書き込み、H.I.S.を通じてJALに“やかましく”言ってもらったのですが、空港内での対応は全く駄目でした。一番要望していた「ギリギリまで各自の車いすに乗っていたいので、航空機搭乗口まで各自の車いすで行き、それから機内用車いすに乗り替えて搭乗したい。」ということも、叶ったのは復路のバンクーバー空港だけ。毎回、手配の段階では了承をもらっているのに、実際は「荷物を運ぶ関係上…」という理由がつき、乗り込む際にはゲート前で機内用車いすに乗り替えさせられ、到着の際には手荷物受け取り場で車いすと対面するのがパターン化しています。これは、国際線も国内線でも頻繁にあるケースです。航空会社のカスタマーセンターで障害についてあれこれ詳しく説明したからといって安心しないでくださいね。本当に伝わるようにしようと思えば「機内係の誰に伝えたか?」「当日空港で担当する責任者は誰か?」を何度も問い合わせて確認をとるくらいが必要かもしれないです。それでも当日に現場で確認しても伝わっていなかったということは当たり前ぐらいに思っていた方が腹も立たなくて良いかもしれませんね。

また、電動車いすの取り扱いに関しても同様のことが言えます。まず丁寧に扱ってはもらえないと思っていた方が良い。これは決して航空会社や空港職員の怠慢ということではなく、電動車いすに対する知識がないことが一番の原因だからです。明確に「どこを触っては良くて、どこを触ってはダメか」を伝える必要がある。これらは空港で職員と「触ってはいけない」というシールを貼ったり、どういう扱いをしてほしいか説明することができます。しかし、きちんと説明したからといって安心してはいけません。海外の空港にその説明が伝わっていない可能性が非常に大きいからです。私の場合、バンクーバー空港に到着した際、電動車いすをどうやって動かすのかトランシーバーで説明させられたという経験がありました。日本語が通用しないので動揺しましたが、「Rightside under(右側の下の意)Red framecover under(赤いカバーの下の意)Blackgrip pull&down(黒いレバーを手前に引いて下ろすの意)」と、拙い英単語を並べただけの英語で説明しました。これで伝わったのだから正直驚きましたが、手荷物受け取り場で夜間ライトが点灯したままの電動車いすと対面した時には「オチはそれかい!」と思わずツッコんでしまいました。韓国訪問の時と違って、事前に取り外せるパーツ(アームレスト、フットレスト等)は外しておいたので驚くほど歪められることはありませんでしたが、安心して託すのであれば、電動車いす取り扱いに対する注意書を日本語・英語の2パターンで用意した方が良いかもしれません。そのためには自分の電動車いすに対する電気系統の知識や取り扱いの知識を深めておく必要がありますね。

それと、「電動車いすのバッテリーを外さないといけないと言われた」という話をよく聞きます。液体バッテリーの場合はその通りですが、ドライバッテリーの場合はその必要はなく、“バッテリーに電流が流れない状態”にすれば良いだけです。あらかじめ業者に、どのコネクターを外せば電流が流れないか?どの配線を外すとバッテリーが使えなくなるのか?を聞いておくと、わざわざバッテリーを外さなくても良いという説明をする必要が無くなるというワケです。航空会社の選定や電動車いすの説明には労力を必要としますが、事前に準備を怠らなければ快適な旅行になるはずです。障害者に理解ある航空会社を選べばなおベストではないでしょうか。


3.荷物の選定

旅行に持っていく荷物を選定するのも一苦労ですね。重度四肢麻痺者の場合であれば、あれもこれも持っていきたいと考えるでしょう。私もソウルの時は大型リュック一つで収まる荷物でしたが、今回の長期旅行にはさすがに悩みました。結局、大型のスーツケースと大型リュック(現地で使用)を持っていきましたが、その中身はというと、着替え(上着4着・下着4着・ズボン3着、靴下3着)、防寒具(ジャケット・手袋・帽子)、薬(8日分)、お土産(現地の人に渡す)、浣腸&紙おむつ(シートタイプ)、デジカメ、ノートPC(プレゼン&データ保存目的)、HighROHOクッション&空気入れ(航空機内で使用)、リフター用吊り具(ベルトタイプ:三戸呂さんの要望)、携帯電話(空港でレンタル)という内容。とにかく衣類だけで荷物がかさ張りました。ハッキリ言って、着替え1セット、浣腸&紙おむつ、ノートPCはいらなかったです。浣腸&紙おむつは現地で調達できるし、衣類は洗濯すればいいですからね。その気になれば衣類も現地調達できるでしょうね。ただ、持っていって良かったのはROHOクッションで、飛行機のシートはイマイチでもこれのおかげでお尻は全然痛くなかったです。また、持っていけば良かったと思ったモノは「変圧器」です。カナダは日本と電圧が変わらないから日本の家電も普通に使えると聞いて持っていかなかったのですが、やはり海外へ行く際には持っていく必要があると感じました。プラグを差したときに火花が散ったワケですから…不安ですよね。

荷物の選定については人それぞれであるので一概には言えないですが、持っていって現地に置いて帰れるモノ、現地調達できるモノを分けて、その上で絶対必要なモノを準備する必要があるように思われます。また、最近では英国テロ未遂事件の影響で“液体状のモノ”が機内に持ち込めないようになっています。私もバンクーバー旅行の際には成田空港でペットボトルのお水を捨てました。あれからさらに厳しくなっているようですが、例外的に認められているモノもあるようですし、勘違いしてはいけないのは“機内に持ち込めない”のであって、受託手荷物としてスーツケース等に入れてしまえばほとんどのモノを持っていくことができます。機内に水分を持ち込めないから不安に思われますが、そこは大丈夫。国際線には素晴らしい接客サービスが待っていますからね!


4.介助者体制

今回の長期旅行で一番多くを考えさせられたのが「介助体制」についてです。誰もが長期旅行へ行く際、“最も信頼のおける介助者”や“普段の生活介助をよく知る介助者”の同行を希望するでしょう。短期旅行の場合はこの条件であれば快適な旅行を楽しむことができるでしょうし、私が韓国に2泊3日で行った際にも普段の生活介助をよく知る介助者であったので大いに楽しむことができました。ただし、長期旅行となると、上記条件だけではダメなんだということを今回のバンクーバーで知ったワケです。

まず、今回の旅行は過密なスケジュールであり、たくさんの行程を少ない時間の中でこなす必要がありました。その行程を、要介助レベルの違う3人の障害者が同じようにこなすのですから、あらゆる場面に全介助を必要とする私やそれを介助する介助者にはかなり厳しい状況でした。私の用意をしてから介助者の用意をしてもらわなければならず、逆算して時間を取ろうとしても過密な行程の中では余裕がありませんでした。1対1の時間が長ければ長いほど、お互い精神的な疲労が強くなります。それが7日間も続くのですから、考えただけでも気が滅入りますよね。よほどの信頼関係がないかぎり、今後の関係性が崩れる要因にもなりかねないでしょう。今回の旅行に同行してくれた介助者にはかわいそうなことをしたと思いました。私は遠い異国の地に来てしまったのだからマイナスに考えても仕方がないと開き直れたし、ある意味、初めての長期旅行で自分や介助者がどのような関係性を築けるのか?を検証しようと考えていましたから、少しは気が楽でした。そんな私でも本当に疲れたのですから、介助者は心底疲れたことと思われます。いや、疲れたと言っていました(笑) 帰ってくれば笑い話になりますが、バンクーバーではお互い笑う余裕もなかったのが正直なところです。ただ、救われたのは、一緒に行った障害者の介助者にも手伝っていただけたことです。しんどい時にこそ“助け合い”という行為はありがたく感じられます。この“助け合い”がなければ、私も介助者もどうなっていたかわかりませんね。一歩間違えばトラウマになる可能性もありますから。

上記のことをふまえても、重度四肢麻痺者の長期旅行には、余裕のあるスケジュールと同行する介助者の調整は絶対に欠かせないことであると思います。費用的に余裕が持てるのであれば、もう1人介助者に同行してもらうほうが時間をうまく使うことができます。もしくは、何人かの障害者で行く場合は、費用を出し合ってフリーの介助者を1人連れて行くのも一つの手かもしれませんね。普段慣れている介助者が一緒といっても、環境も文化も違う外国ではどんな落とし穴があるかわかりません。だからといって1人の介助者と海外に行く方もあるでしょうし、むしろ費用面の問題を考えてみてもそのほうが多いのかもしれません。私が伝えたいのは、経験すれば何でもないこととして長期旅行を楽しむことができますが、私がそうであったように、初めての長期海外旅行は不安で一杯になると思われますが、事前の準備や海外旅行で起こりうることを知っていれば、きっと良い旅にすることができるということです。


5.トラブル

今回の旅行で起こったトラブルといえば「電動車いすの故障」が一番大変であったのですが、実は「デジカメの故障」というのもありました。デジカメを落として壊してしまったんです。これらの機器の故障がその後どうなったかというと、日本に帰ってきてからちゃんと修理されて戻ってきています。実は一切の自己負担なく修理できました。役に立ったのは「海外旅行傷害保険」でした。海外旅行傷害保険の対象に“携行品”が入っており、帰国後に電話をしたところ故障時の状況や故障原因、修理見積を付けて所定の用紙に記入して提出すれば補償してくれるとのことでした。ダメ元で「電動車いすも故障したのですが…」と経緯を説明して交渉したところ、即答はもらえませんでしたが後日「電動車いすについても同様の手続をおこなってください」と電話がありました。ただし、電動車いすに関しては現地のリハセンターで診てもらったときに「航空機での輸送時に何らかのショックが加わったことが原因かも?」という診断を受けていたので、別途JALに修理の要望を出したところこちらもOKが出たので、電動車いすの修理はJALにお願いしました。知らなければたぶん自費で修理していたでしょうから、壊れたこと自体はショックでしたが、自己負担なく修理してもらえてかなり救われました。参考までに報告しておきます。


6.最後に

私の経験を書き出してみましたが、「四肢麻痺者が海外旅行をする際に注意すべき点」として自身が感じた一番のポイントは“実際に行って経験してみないとわからない”ということ(笑)

そう言ってしまうと元も子もないので、是非海外旅行に挑戦する際には参考にしてくださいね。

そして、これを書いている私はというと…次の楽しい海外旅行計画に着手しています。2度の海外を経験してスッカリ気持ちに余裕が出てきました。今度は余裕を持って臨めるように、今までの経験を活かして準備をしたいと考えています。どこに行くのかは近々発表しますね。


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