頸損だより2007冬(No.104) 2007年12月22日発送

巻頭言

「介護される側の技術」

〜ヘルパーさんとの関係〜

松崎有己

先月、約5年間介護に来てくれていたヘルパーさんが、転職することとなり辞めてしまいました。長期に渡り、またいろんな時間帯に来てくれていましたので、私の介護においてできないことは何もないほどでした。惜しい人材をなくし非常に悔やまれます。考えてみますと、今まで多くの介護者が新しく入ったり辞めたりの連続で、常に新たな出会いと寂しい別れの繰り返しです。これは介護が不可欠な私たちにとっては宿命なのですがいつも残念に思います。自分のして欲しい介護内容を伝えそれをきちんとマスターしてもらうまでには、それなりの時間と労力が必要となりますので、せっかく慣れた介護者が辞めてしまうというのは、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。ですから私は常に、できるだけ長い間携わってもらえるようにいい人間関係を築くため、いくつか気をつけていることがあります。

まず一番気をつけていることは、仲良くなりすぎないということです。意外に思われる方もおられるかもしれませんが、これは非常に重要なことです。あまり仲良くなってしまうと、言いたいことを遠慮してしまったり、また、お互いがこれくらいなら大丈夫だろうという甘えが出てきてしまい、どちらか一方に負担がかかってしまうことが多々あります。友達のような関係になるのではなく、あくまでも「利用者」と「サービス提供者」であるという立場をはっきりと保っておかなければなりません。

次に、自分がして欲しいことを、正確に分りやすく伝えるということです。ヘルパーさんに任せているだけでは、快適に暮らしていくことはできません。介護者によっては、何度も同じことを繰り返し言わなければならないこともありますが、根気よく、「育てていく」というスタンスで、介護力と人間関係を高めていくことが大切です。他にもいろいろと挙げるときりがありませんが、私自身も利用者側としてのスキルを日々高めているところです。

障害者に限らず「自立」するには、それなりの努力と責任、そしてリスクを負う覚悟が必要であることを日々痛感しております。これまで私の生活に携わってきてくれた、ヘルパーさん達にはとても感謝しています。家族の元を離れ一人で生活していくことに、なかなか踏ん切りが付かない方も多いこととは思いますが、苦労と引き替えに得られる自由と開放感は何事にも変えがたいものです。

今後、一人でも多くの障害者が、自立と社会参加に向けて、本来あるべき理想の自分の姿を目指し、大きな一歩を踏み出せることを切に祈っております。


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