昨年、2007年6月9日明石において“人工呼吸器使用者の自立生活を実現するために“という市民公開講座を兵庫頸損連絡会で開催した。市民公開講座の終了後、その実行委員会が立ち上げていたメーリングリストの愛称が、”ブレス・トゥ・ヴォイス“となった。人工呼吸器使用者や高位頸髓損傷者など最重度の四肢麻痺者の自立生活を考え話し合い、情報を提供し実現していくためのメーリングリスト。ブレス・トゥ・ヴォイス(Breath to Voice)とは、息をするのもままならなかった人達が、声を上げ、大きな運動のうねりをつくっていきたいという願いから名付けられた。この市民公開講座に参加した人工呼吸器を使用する仲間は、その後何をめざし、どんな行動を取っていったのか。その後の動きを伝えていく。
関西労災病院土岐先生からの話がきっかけとなって開催することになった市民公開講座。その市民公開講座の開催に向けて、私たち実行委員が何人もの人工呼吸器使用者を訪問した。結果的に、そこで出会った何人かの呼吸器使用者が市民公開講座のシンポジストとなった。
みなさんこんにちは。私は池田英樹と申します。
今回は12月9日に京都大学で行われた人工呼吸器の呼吸ケアを考える会に行ってきました。内容は石川先生の舌咽頭呼吸のやり方や効果と気管切開をした人がアカペラを歌うという事です。
石川先生の講演は舌咽頭呼吸のやり方や舌咽頭呼吸をやっていない人と比べてやっている人が肺炎にかかる確立が低いと言う事が分かって良かったです。舌咽頭呼吸のやり方は口に空気を食べるような感じで(呑み込むような)、肺の中に送り込んでいくやり方だそうです。私も1回試しにやってみようかなと思っています。話を聞けて大変勉強になりました。この講演に興味を持っている人は多いと思いますが、今回は気管切開をして歌うグループについて詳しく書きたいと思いますので差し控えさせていただきました。
今回参加した目的は気管切開をしている人たちが音程を合わせてどういう風に歌っているのか知りたくて参加しました。特に興味深かったのは20人ぐらいのコーラスグループで全員で声を合わせて歌うというのでどれぐらいの声量で歌うのかが楽しみでした。会場に入ってみると気管切開をしている人たちが3人並んで座っていて自分たちのグループ名の話や活動内容を話されました。コーラスグループ名が<マウスピース>です。由来は、マウスは口にくわえる管の意味で、ピースは平和です。それを続けると自分たちの歌や活動を通して平和になってくれればいいという願いをこめて命名したそうです。メンバーは同じ施設に入所している歌の好きな人が集まって始めました。最初は息継ぎや音程を取るのが難しく、なかなか声を合わせて曲を最後まで歌いあげる事が難しかったそうです。練習を週2回やっていくうちに段々とみんなで声を合わせて歌う事が上手くなっていき、病院の中でのクリスマス会、文化発表会などで披露する事ができるまでになりました。という説明のあと自分たちの今までのコーラス結成時からの活動をビデオで上映していました。そのあとビデオでは違う場所に行ってのコーラスの発表を映していましたが、普通は初めてのところでは緊張して上手に歌えないものですが、のびのびと歌われていました。
最後に三人での生のコーラスを聞かせて頂きました。都合で三人しか来場できなかったのですが、歌声を合わせて歌う姿に会場に来ている人たちは耳をすませて聴き入っていました。歌が終わったあと、会場は盛大な拍手で埋め尽くされました。当然のようにアンコールが起こり、さらに2曲披露して頂きました。
僕がビデオを見て思った事は、口に呼吸器のチューブをくわえて歌の練習をしている映像を見てこれはかなり難しい事をやっているんだなと思いました。息を吸いながら息継ぎのタイミングをするのが難しく、声も出しにくいので相当練習したのではないかと思います。小さな音でも拾う特殊なマイクを使っているそうです。ここに来ている人たちが、精一杯声を合わせて歌う事で、聴いている人たちを感動させるなんていうのはなかなか出来る事では無いなと思いました。かなり練習をされていたのではないかと思います。
気管切開をしていても歌を歌うと言う事をあきらめずにやっている姿を見て感動した人が多かったのではないでしょうか。これからのいろんな所で活躍して欲しいと思いました。コーラスをしている人と話をして思ったのですが、病院の中での生活だと普通は自分のやりたいように出来ずストレスがたまってイライラするものです。でも、この人たちは今、自分たちのやりたい事を精一杯やって生きています。これからも、もっと新しい事を考えてチャレンジしていこうというと気持ちが、こちらにも伝わってきました。顔も生き生きとしていてすごく良かったです。【池田英樹】