頸損だより2008春(No.105) 2008年3月22日発送

必殺!仕事人シリーズ(第24回)

「働く」形はいろいろ。働くなかに何が見え、生まれだすのか。

ニッセイ・ニュークリエーションで働く
〜頸損で職場選びの
重要なポイントとは〜

杉本 真一


今回の「仕事人」コーナーを担当させて頂くことになりました杉本真一と申します。

ひょんなことから鳥屋さんと知り合うことになり、このコーナー執筆を直に依頼されて!?しました。当然、私のような若輩者にはお断りすることができず、執筆に至った次第でございます・・・。

さて、ご依頼を受けてみたのはよいものの、どういった内容にするかを締切り間際になっても思い浮かばず悩みました。

しかし、よくよく頚損仲間を見渡してみると、C5・6レベルの頚髄損傷者がフルタイム(月〜金曜日の9時〜17時30分)で働いているのは非常に珍しいことなのだと気付きました。

そして、ひょっとしたら、私のいままでの職業経験が、重度障害のために職に就くことを断念されていた方、また職に就いていたが体調を崩してしまい離職せざるえなかった方等にとっての何かの参考になるのではないかと思いました。


@自己紹介

まず、ここで簡単に自己紹介をしたいと思います。

現在、私は33歳の会社員で、実家で両親と3人で暮らしています。休日は完全週休二日制なのですが、そのうち日曜日はツインバスケットの練習や試合があるので丸一日が潰れてしまうことが多いです。

さて、私が受傷したのは大学1回生の時でした。受傷原因ですが、私は当時、大学にある野外活動やキャンプ等を行うクラブに所属しており、そのキョンプの打ち上げで池に頭から飛び込み頚椎を損傷してしまいました。たぶん、小さい頃から水泳をしていたので、頭から飛び込むことに全く恐怖心がなかったことや自由奔放なキャンパスライフを送るうちに有頂天になっていたのかもしれません。

それから、2つの病院を経て兵庫県立総合リハビリテーションセンターに約1年間入院することになりました。しかし、大学の休学期間は2年が限度という規定があったため、訓練科には行かず大学に復学することにしました。

学校を卒業した後、いきなりフルで働くことに体力面で不安がありましたので、2社程、嘱託社員として職務経験を積んだ後、現職に就きもうすぐ3年目になります。

現職の会社名はニッセイ・ニュークリエーション(略称:NNC)といい、日本生命が設立した特例子会社に勤めています。私はその中で印刷業務課という部署に所属しており、日本生命が発注する印刷物の価格査定や支払管理業務等のデスクワークをしています。


A職場選択で重要だと思われるポイント

私は、職場施設内等のハード面でのバリアフリー環境はもちろん重要だと思うのですが(NNCが恵まれ過ぎということはありますけど・・・)、それと同等、いやそれ以上にソフト面の整えが、無理なく、より快適に働くことに大きく左右するのではないかと感じています。

そのため、今回は、私が職場選択をする上で特に重要視してきたソフト面についてピックアップし、ご紹介していきたいと思います。


T.通勤時間が短いこと

私は通勤に電車を利用しているのですが、前職では約1時間30分位かかっていました。(ちなみに現職では20分位で自宅から会社に着くことができます)

通勤は毎日ということもあり、自身が想像している以上に体力を消耗する行程です。特に、どうしても体力面で不安をもっている私達にとってみれば、仕事に全力投球!?するためにもできる限り通勤時間が短いということは非常に重要なポイントだと思います。


U.有休が取得しやすいこと

これは制度としてあることはもちろんですが、会社全体として取得しやすい雰囲気やバックアップ体制があるということも重要なポイントだと思います。

なぜなら、私達にとって通院は日常生活を健やかに過ごすためには必要不可欠なものであり、また万一、体調が悪い時に無理して出社してしまったために、かえって回復するための時間を多くとらなければならないというリスクが健常者に比べてより高くなるからです。


V.障害に対する理解があること

これは2つ目のポイントにも繋がることですが、もし、職場に頚椎損傷者等の先輩がいらっしゃれば、業務を進める方法や使用されている自助具等に関してのアドバイスを頂くことができ、それらは非常に有用なものになるのではと考えられます。また、仕事に関する悩みだけでなく、日常生活全般の関わる相談事を話し易く、何かと心強い存在になるのではないかと思われます。

ただ、全く障害者の雇用実績がない職場においても、これから障害について理解しようとする取り組み等がなされるのであれば、十分に期待できると思われます。もちろん、入社後、理解してもらうための努力を私達側も怠ってはいけません。


Bまとめ

以上、3点程ポイントを挙げさせて頂きましたが、ハード面を含めて全ての条件が揃うケースは稀であるため、一人ひとりの考え方や現況により取捨選択はどうしても必要になってくると思います。

また、自分の思う通りに上手く物事が進まない時も多々あると思います。しかし、そんな中でも自分が譲れない点あるいは譲れる点を明確にもち、アンテナを常に張り続け、そして多くの企業に接触し続けることが、素晴らしい会社と巡り会うための近道であると確信しています。

最後に、上記のような拙文で恐縮でしたが、皆様の今後の就職活動を進める上での少しでもお役に立てるのであれば望外の喜びです。

以 上



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