頸損だより2008夏(No.106) 2008年7月26日発送

巻頭言

「タバコの罪」

〜人権と既得権益〜

松崎有己

あなたは喫煙者ですか?近年、タバコの煙が人体に非常に有害なものであるということは広く認知されるようになりました。5年前に施行された健康増進法25条では、受動喫煙の防止が謳われ公的な場所での分煙化が進み、多くの場所が禁煙となっています。また、今年の3月からは未成年者がタバコを購入しにくいように、自動販売機にTaspo(成人識別ICカード)も随時導入されています。欧米の先進国の多くでは国家政策として禁煙を奨励したため、喫煙関連の疾患がへり国民の健康の向上および医療費の削減に多いに成功し、また、喫煙者がタバコを吸い始め、タバコ依存症になるのは未成年の間であるので未成年の喫煙に関しての立法(タバコ購買における身分証明書の要請およびタバコ広告の禁止)が徹底しているようです。さらに、最近急にタバコ税の大幅な引き上げが議論されるようになり、「消費税を上げる前にまず、タバコを一箱千円に」という意見も出てきています(これは政治家による様々な思惑がありそうですが)

このような時代の流れの中、依然として日本におけるタバコの販売数は多く、喫煙者の方々はさぞかし肩身の狭い思いをしていることでしょう。なぜそんなに不自由な思いをし、我慢を強いられ、健康を害してまでタバコを吸い続けなければならないのでしょうか?

その理由として一般的には、それは喫煙者の問題であり、意志が弱く禁煙が続かないことがその理由であるかに思われがちですが、それは当たっているようで実は違います。タバコは依存性薬物であるにもかかわらず、これを合法だからと(合法にし)、あたかも嗜好品であるかのようにマインドコントロールをされてニコチン依存症の患者にされているからなのです。日本で唯一タバコの独占製造を行っているのはご存知かと思いますがJT(日本たばこ産業)であり、タバコの小売(タバコ屋やコンビニ)に許認可を与えているのはなぜか財務省です。つまり答えは単純明快です。タバコを「商売にしている人間」「おいしい思いをしている人間」が存在しているからなのです。それは、かつて覚せい剤でさえヒロポンという名で合法的に販売されていたことからも明らかです。

喫煙や受動喫煙による人体への影響については、世界保健機関を含む幅広い機関において多数の研究がなされ、世界保健機関は、喫煙を原因とする病気による死亡者数は全世界で推定年間約540万人以上に上ると発表し、現在喫煙している者のおよそ半数(約6億5千万人)が最終的にはタバコが原因で死亡するとしています。非喫煙者にとってもタバコの煙は、単に不快であるというだけでなく、受動喫煙によって健康を害される恐れすらあり、最近は「スモークハラスメント(通称スモハラ)」(喫煙行為を業務上において、非喫煙者が相手の喫煙を断れない状況下に置かれること)などと呼ばれることもあります。

喫煙者の皆さん、死の商人の為に、「自分や大切な人の命や貴重な財産を提供する」ということがいかにバカバカしいことであるかを知ってください。

また、タバコを吸わない皆さん、実はあなたたちだけが被害者なのではなく、喫煙者も被害者であることを知ってあげてください。


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