頸損だより2008夏(No.106) 2008年7月26日発送

特集プロローグ

全国大会までの道のり

大阪頸髄損傷者連絡会 大会実行委員長 赤尾広明

人生を大きく変える瞬間はある日不意に訪れる

頸髄損傷者にとって、突然の事故などで体に障害を負った瞬間というのはまさにその後の人生を大きく変える瞬間であり、絶望感に打ちのめされた瞬間でもあったかと思いますが、ようやく障害受容ができて、目の前の現実と向き合うようになれば今度は自分の将来について真剣に考えるようになります。その際に直面するのは社会資源の不足…とくに介助者の不足は切実な問題ではないでしょうか。日常生活を営む上で介助者の存在は不可欠ですが、今の日本の現状では社会保障の面で法律や制度、公的な福祉サービスがまったく追いついていません。


高位頸髄損傷者がおかれている現状の検証

どんなに重度の障害があっても病院や施設ではなく、住み慣れた地域であたりまえに暮らしたい、もっと自由に活動して積極的に社会参加がしたいと願うのは人として当然のことです。しかし、頸髄損傷の中でも最重度にあたる人工呼吸器使用者にとって自立した生活と社会参加を実現するのはきわめて困難な状況におかれています。ところが、海外に目を向ければ、同じような状態の重度障害者が当たり前のように地域で自立し、当たり前のように自由に外出しています。その違いが福祉施策にあるのはもちろんのこと、地域における呼吸管理プログラムなど、自立を支えるケアシステムが確立しているか否かも大きく、逆にいえば日本でも環境さえ整えば人工呼吸器使用者が安心して積極的に人生を楽しむことが可能になるはずなのですよね。

そこで、今回の全国大会ではまず人工呼吸器使用当事者の生活実態と社会的課題について検証するためのシンポジウムとして、呼吸ケアの先進国カナダで人工呼吸器を使用しながら地域で自立した生活を送る頸髄損傷のダン・ルブランさんを招いて、国内の当事者とディスカッションしながら、人工呼吸器使用者の可能性、日本で人工呼吸器使用者の豊かな自立生活を実現するための方法を探ることにしました。身体的に最重度である人工呼吸器使用者が自立した生活を獲得できるようになるということは、その他の障害者やどんな人にとっても暮らしやすい社会になると私たちは考えたからです。


地域で自立して暮らしたい

同時に、日本国内における問題として利用できる公的な福祉サービスの地域格差がありますが、都心部と違って福祉制度に不備があり、マンパワーでも限界のある地方で自立生活を実現させた福島県西白河郡在住の相山敏子さんと、今後の自立生活実現に向けて現在、自立生活プログラムなどに取り組まれている新潟県魚沼市在住の山内俊博さんを招いて、地方で暮らす高位頸髄損傷者の自立について考え、必要な支援のあり方を考えることで福祉制度の格差解消と充実、ケアシステムの確立につなげていきたいという思いで、地方の実情を知るための講演会を企画しました。


未来に向けて

ある日突然重い障害を背負うことになっても住み慣れた地域で安心して暮らしていける社会にするための課題はたくさんありますが、当事者がみんなでその思いを共有し、地域で自立した生活ができる環境づくりに向かうキッカケにすることが2日間の全国大会のメインテーマでした。



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