頸損だより2009春(No.109) 2009年3月28日発送
長年取り組んでまいりました学生無年金障害者訴訟は、当初予定より早く3月17日に「敗訴」の判決が下されました。本文掲載の「無年金障害者の会の訴訟等の報告 署名ご協力のお願い」から状況が変わりましたことお伝えするとともに、最高裁判決当日の「声明」を追記します。
声 明
本日、最高裁第三小法廷は、平成元年(1989年)の国民年金法改正によって20歳以上の学生が強制加入とされる以前に重度の障害を負って無年金障害者となった元学生らの上告を棄却する不当な判決を下した。重度の障害のため生活と生存に多大なる困難をかかえている元学生らにとっては、障害基礎年金を受給することはきわめて切実な要求であり、本日の最高裁の上告棄却判決は到底容認することができない。
昭和34年制定の国民年金法は、学生無年金障害者の発生を立法当初から当然に予見できたにもかかわらず、学生を国民年金の強制適用から排除する欠陥立法であった。法施行後、現実に多数の学生無年金障害者が発生し、その欠陥が明らかになった以降も、今日に至るまで40年以上の長きにわたってその救済は放置されつづけてきたのであり、立法府及び行政府の責任は極めて重いものである。上告人らは、立法府及び行政府の無為無策を糺さんとして、重度の障害を押して裁判に立ち上がり、欠陥立法の是正と救済を司法府に託したのであった。しかし、本日の最高裁判決は、立法府及び行政府の無為無策を追認し、憲法を守り国民の基本的人権を保障する司法府の役割を放棄したものであり、きわめて大きな失望を禁じ得ない。
「学生無年金障害者訴訟」は、全国で計30名の重度障害を持つ原告らが、平成13年(2001年)、全国各地の9つの裁判所に一斉に提起した訴訟である。東京地裁、新潟地裁、及び広島地裁ではいずれも画期的な違憲勝訴判決がなされ、これら勝訴判決を受けて平成16年(2004年)12月には、「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(特別障害給付金支給法)」が制定され、不十分ながら一定の救済がはかられるという成果をみた。さらに、初診日の認定をめぐる東京地裁と福岡地裁の訴訟では原告らの一審勝訴判決が確定し、盛岡地裁の訴訟については最高裁で勝訴が確定し、いずれも当該原告について障害基礎年金支給が実現された。
本日の最高裁判決は、一連の「学生無年金障害者訴訟」の中で一番最後の判決であり、これによって30名の原告らの裁判はすべて終結を迎えた。しかし、原告らが求めている学生無年金障害者に対する障害基礎年金の支給は、提訴以来8年になろうとしても未だ実現されていない。障害基礎年金制度は,障害によって稼得能力を失った場合の生活の支えであり,障害者が尊厳を保持しながら安心して暮らしていくために不可欠のものである。制度の欠陥を抜本的に改め,国民に理解しやすい制度へと抜本的に改善すべきことは,一連の「学生無年金障害者訴訟」が明らかにした国民の声である。
我々は、国際障害者年のテーマとされた「完全参加と平等」保障の趣旨に基づいて、今後ともすべての無年金障害者に障害基礎年金の支給を求めて運動を続けていく決意であることをここに表明する。
平成21年(2009年)3月17日
学生無年金障害者訴訟大阪原告・弁護団
学生無年金障害者への年金支給を実現する関西の会
原告の会「全国学生無年金障害者訴訟」
学生無年金障害者訴訟全国連絡会