頸損だより2009夏(No.110) 2009年6月27日発送

自立支援法3年目の見直しについて

東谷 太


 2006年に障害者自立支援法が施行されて3年が経ち、今年、一部見直されることになっています。今回はその中から、より身近なものをいくつか紹介させていただくことにしました。ただし、できるだけ分かりやすく説明するためにも、大まかな説明になっているところもあるので、詳しく知りたい方は、利用されている事業所か相談支援の相談員にご相談ください。
 今回、説明させていただくのは、だいたい以下の5点です。
  1. 利用者負担の軽減措置が継続される。
  2. 利用者負担の軽減措置に関する資産要件が撤廃される。
  3. 報酬単価が上がる
  4. サービス提供事業者に対して各種加算が設定される。
  5. その他(移動支援など)

@ 利用者負担の軽減措置が継続される。
 現在、障害福祉サービス(居宅介護、重度訪問介護、行動援護、就労移行支援、就労継続、生活介護など)を利用すると、原則1割の利用者負担が発生しています。その中で所得状況に応じて負担上限額が設定されていますが、これを軽減措置と言います。

■一般(給与所得などがあり市民税を納めている人)
 37,200円/月 → 軽減措置 → 9,300円/月
■低所得1(市民税非課税世帯で年間所得約80万円以下:障害基礎年金2級程度の収入)
 15,000円/月 → 軽減措置 → 1,500円/月
■ 低所得2(市民税非課税世帯で生活保護や低所得1以外の人)
 24,600円/月 → 軽減措置 → 3,000円/月
■ 生活保護世帯
 0円/月

 実は、この軽減措置は、期限付き(平成21年3月まで)の経過措置となっていたのですが、今回の見直しでは、引き続き軽減措置が継続されることになっています。

A 利用者負担の軽減措置に関する資産要件が撤廃される。
 @の利用者負担の軽減措置は誰でも受けられた訳ではなく、高額な預貯金や貴金属や土地など資産のある人は軽減措置が受けられませんでした。これを資産要件と言って、今回の見直しで撤廃されることになり、7月からはこれらの資産があっても、@の軽減措置が利用できるようになります。
【資産要件】
 単身者 500万円以下   家族世帯 1000万円以下

B 報酬単価が上がる
 これまで、自立支援法の報酬単価が低く設定されていたため、どこの事業所も運営が厳しく大変でした。このままでは、障害者を支える地域基盤が崩壊しかねないという訴えが全国的に強まってきたため、今回の見直しで報酬単価も改正されることになりました。
例えば、重度訪問介護の場合では大阪市だと、これまでは、1時間約1,700円だったのが、この4月からは約1,940円となり、約240円アップしました。

大阪市の場合の計算式
160単位×10,6=1,696円(費用負担169円) → 183単位×10,6=1,940円(費用負担194円)
 ↑    ↑            改正後
報酬単価 地域区分率

 まぁ、こんな細かい説明は必要なかったと思いますが、このように報酬単価がアップしました。
 このことで、事業所に入ってくるお金も増え、事業所の運営も少しは余裕が出てきます。ただし、利用者にとっては、費用負担が増えることになる(費用負担の上限までサービスを使っている人は変わらない)ので、注意してください。
 あと、これまで重度訪問介護は、1時間単位での利用しかできませんでしたが、この4月からは1日の派遣の中で、1時間以上からは30分単位で派遣が受けられるようになりましたので、今後、必要であれば、派遣事業所のコーディネーターか相談支援の相談員に相談して、ウィークリープランの見直しをおこなってください。

C サービス提供事業者に対して各種加算が設定される。
 Bの報酬単価のアップに加えて、初回加算、緊急対応加算、特別地域加算、特定事業所加算などの各種加算も設定されました。この中で、特定事業所加算は、全介助従事者の内で介護福祉士の資格を持っている者が30%以上居るとか、利用者の総数の内、5割以上が障害程度区分5以上である。など事業所の派遣体制によってその比率が変わってきます.

 例えば先程の重度訪問介護の報酬単価の計算式で説明しますと
  183単位×10,6=1,940円 (費用負担194円)
 で、もし、20%の事業所加算を取っている事業所だと
  183単位×10,6×1,2(20%)=2,328円 (費用負担232円)

 このことは費用負担にも影響するため、自分が利用する事業所がどのような加算になっているか確認してください。

D その他
■ 移動支援について
 移動支援は、地域生活支援事業といって市町村によってまちまちですので、報酬単価や費用負担が増える市町村もあれば、これまでと変わらない市町村もありますので、移動支援を利用されている方は、自分の住んでいる市町村はどうなのかを調べてください。

■ 補そう具について
 車イスや白杖など補そう具については、現在、障害福祉サービスや地域生活支援事業などとは別に費用負担が発生していて、利用者にとっては負担が増す原因となっていることから、今後1年半ほど掛けて、障害福祉サービスとの合算で負担上減額を設定するよう検討されるそうです。
 ただし、高額障害福祉サービス費扱いなるので、一旦、費用負担分を支払ってから返金されることになりそうです。


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