頸損だより2009秋(No.111) 2009年9月26日発送

シリーズ・自立生活あれこれ 第18回

「外に出ようや!」

兵庫頸髄損傷者連絡会会員 木戸 功
デンジソウ http://www.denjiso.net/


経過

 2006年1月に実家の2階から転落して受傷。大阪大学付属病院→星ヶ丘厚生年金病院→豊中平成病院→国立別府重度障害者センター→2009年1月より実家近くの伊丹市内で自立生活を開始して現在に至ります。損傷レベルはC5不全マヒです。

ADL

◎食事は自助具(グローブ+万能カフ)と曲げたフォーク・スプーンを使用します。
◎歯磨きは自助具(グローブ+歯ブラシ用自助具)と 360度毛の生えた歯ブラシでします。
◎ベッドのギャッジアップは専用のボタンを手首で押してます。
◎トランスファーは1人介助の立位です。
◎排便は月・水・金の朝食後にシャワーキャリーに座って専用のテーブル・クッションに上体を預けた姿勢でします。前日の夜に下剤を服用し、坐薬と摘便で1時間半です。
◎排尿は星ヶ丘厚生年金病院入院中に膀胱ろうを開けてます。昼は太ももに付けたレッグ・バッグから5〜6回/日トイレで尿捨てします。夜はウロ・バッグに付け替えます。
◎パソコンはノート型でほとんどマウス・スティックで入力します。マウスは使えないのでタッチ・パッドを右手の小指で操作しています。少しだけなら両手の中指でキーが叩けます。
◎電動車いすはOXのフレームにヤマハのJW−2をセットしてU字型のコントローラーです。

あれやこれや

■自立生活初日にロングサイズのマウススティックがポキリ
 住居は賃貸マンション(3階建て)の2階です。入口は自動ドアで小さいエレベータが付いてます。エレベータは障害者用のボタンが付いてないので入居前に60cmほどのロングサイズのマウススティックを作ってボタン押しの練習してました。
 そのマウススティックのホルダーを車いすのステップのフレームに付けてたのですが、伊丹に来る飛行機に積んだ時に微妙にずれてしまって、入居した当日にロングサイズのマウススティックの先がキャスターに巻き込まれてポキリというよりバラバラに折れてしまいました。手ごろな材料(竹)を探しています。秋までに作り直して一人で出入りできるようになりたいのですが・・・。

■雨降りの外出は想定の範囲外(古い)
 自立生活の前は国立別府重度障害者センターに入所していたので「雨が降った日は外に出ない」で済ませていました。従って雨具は何も持ってませんでした。
 さっそく傘を買いました。しかし自分で傘は差せないしガイドヘルパーさんに差してもらうのには無理がありました。その後、ポンチョ型レインコートを買いましたが、いざ頭から電動車いすのコントローラーごとレインコートをかぶると全く操作ができない事が発覚。
 雨の日の外出時はガイドヘルパーさんにポンチョ型レインコートを腕を通さずに被せてもらいテルテル坊主状態で全介助で移動していました。ぼちぼちレインコートを着て操作する練習を始めたところです。

■初のお客様
 伊丹に来て近所の坂上さんが訪れてくれました。電動車いすで行けるほどのご近所さんです。ケーキのおみやを頂いたのですが、ティーカップ、ケーキ皿やデザートフォークがありません。マグカップ、ピクニック用の紙の皿とフォークで、インスタントコーヒーを入れてもらって美味しくいただきました。
 その前に近くのラーメン店で一緒に食事をしましたが、昼前からカウンター席が満席で一緒ですがカウンターの端と端に分かれての食事となってしまいました。丁度その週にラーメン店がテレビで紹介されたのでお客さんが殺到したようです。

■外科に怖いものなし?
 膀胱ろうのカテーテル交換は入院時より4週毎にしています。何処で交換するのか決まらないまま伊丹に来ました。ただ交換してもらえる所を探す時間を確保する為に伊丹に来る前日にカテーテル交換を済ませておきました。
 かかりつけ医は近所にある外科病院になってもらい常備薬(下剤・坐薬・眠剤・皮膚科の軟膏)を処方してもらえました。そこは整形外科とリハビリテーション科もあるので週に2回外来でストレッチと残存機能の維持をPTさんにしてもらってます。残りの問題はカテーテル交換。主治医の外科の先生に可能か尋ねると躊躇なくOKの返事。心の中でラッキーと叫びました。交換する日とカテーテルのサイズ(14フレンチ)を確認して準備万端。
 いよいよカテーテル交換の受診日が来て、まな板の上の鯉ならぬ処置ベッドの上の頸損者です。先生がやってきて今付いてるカテーテルをさっさと抜いちゃいました。それから新しいカテーテルを袋から出して・・・看護師にキシロカインのジェルを頼んでます。
 抜いた後に直ぐに新しいカテーテルを入れないとお腹の穴と膀胱の切開部がずれてしまってカテーテルがすんなり入らなくなります。
 先生が看護師に「ゾンデ取ってきて」と言ってます。ゾンデが何かは知りませんが想像できました。銀色に光るバーベキューの串のような物が手渡されました。それを膀胱ろうの開口部から突っ込んで膀胱の切開部を探してる様子。そのうちに片面がグリーンのゴムのシートがお腹に掛けられます。下半身は痙性が入りまくりです。
 ようやく無事にカテーテルが入りました。先生は「前立腺ガンとかで(外科で)も膀胱ろうを開けるんよ」とか言われましたが、あまり慰めになってません。外科の先生はワイルドです。看護師さんが膀胱洗浄をしてくれながら「すみません。シャツが汚れちゃいました。」って、膀胱ろうの周りは血まみれだったって事?
 今のところ3勝3敗のイーブンです。ちなみに今月は血は見てませんがカテーテルのバルーンが尿を止めてしまって過反射になってバルーンの液を入れ直してもらったので負けです。

■バラの香りの耳鼻咽喉科
 国立別府重度障害者センターに入所中に耳鼻咽喉科の先生から綿棒による耳掃除は耳垢を奥に押し込むだけという理由で耳掃除が禁止になりました。耳垢は耳鼻咽喉科で取ってもらいます。
 GW明けの5月12日に帽子を被せてもらい障害者手帳とバス代の 100円硬貨の入ったケースを首から下げてエレベータ下まで送り出してもらってバス停に向かいます。
 天気は快晴で日差しが強いので木陰でバスを待ちます。バスが来ると大急ぎでバス停に行って運転手に乗車をアピール。伊丹市営バスはほとんどがノンステップバスなのでスロープを出してもらっての乗車です。歩道が低いと介助が必要ですが運転手さんが介助してくれます。
 スロープの付いた耳鼻咽喉科は終点の伊丹市立荒牧バラ公園の向かい。バラ公園に向かう街路樹がバラで畑もバラの苗が植わっていて丁度花が満開です。バスから降りると風に乗ってかすかにバラの香りがしました。
 耳鼻咽喉科の受診は寒かったり雨だったりで半年ぶり。耳垢を取ってもらうとギョッとするくらいの耳垢の量。3ヶ月に1度は取らないといけないとの事。鼻炎のシーズンが過ぎていたからか待ち時間が短く支払いも直ぐに終わって外に。
 帰りのバスの予定まで1時間半。隣はバラ公園でバラが満開。これはもうバラ公園に入るしかありません。余りに見事に満開なので携帯電話のカメラで公園の職員さんに写してもらいました。
 あたり一面に良い香りが漂ってるかと思えますが、今のバラの品種はあまり香らないようです。

■マウススティック
 パソコンの入力以外にも冊子のページめくり、机上の物の移動や携帯電話やエアコンのリモコンのボタン操作に使っています。これがないと生活不可能なオリジナル・マウススティックです。
 材料:竹の編み棒(bW)、指サック(中)、発泡スチロールの玉(15mm〜20mm)、輪ゴム、乳児用の「にぎる・かむR−3(ピジョン)」
 編み棒、指サックは 100均。発泡スチロールの玉は手芸屋さんにあります。
 作り方は見たまんまです。編み棒の玉が「にぎる・かむR−3」をばらした穴にピッタリ入るし編み棒の先が発泡スチロールの玉に適度に刺さります。ポイントは指サックに発泡スチロールの玉を入れる時に弛みができないようにする事です。予想以上に指先の力とテクニックが必要らしいです。
 「にぎる・かむR−3」は乳児用なので安全性は心配ないし(多分)柔らかいのに強度があって歯が弱い私には丁度良いです。長時間使ってるとよだれが溜まって汚れるので定期的に台所用除菌液に浸けてます。

■外に出ようや!
 3月7日に神戸で全国頸損連&日本リハ工主催の合同シンポジウムのテーマです。現在の私のテーマにもさせてもらいました。
 月・水・金の排便後に雨が降らなかったら食料品や日用品を近くのスーパー・マーケット、ドラッグストアやホームセンターに買い物に出かけます。週に1回くらいバスに乗ってショッピングモールに出かけて買い物や某コーヒーチェーン店のコーヒーをストローですするのが楽しみです。
 体調が許す限り外に出て人の目に触れる。狭い地域でも広い地域でも色んな場面で色んな人の目に触れる事で頸髄損傷者を理解してもらう、地域の一員として迎えてもらえる。そう感じた自立生活6か月です。


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