頸損だより2009冬(No.112) 2009年12月26日発送
四国頸損連絡会の集い報告
鳥屋利治
四国には愛媛頸損連絡会や高知頸損連絡会があるが、頸損者の四国4県(愛媛、香川、徳島、高知)のネットワークを築き、四国全体の社会基盤整備を目指し、頸損という重度の障害があっても四国で自立した生活ができるよう、四国頸損連絡会が4年前に立ち上がった。その後、毎年一度「四国頸損連絡会の集い」が開かれている。この3年は大阪や兵庫の頸損連もその集いに、応援に駆けつけている。今回の集いは11/7(土)〜8(日)愛媛県の四国中央市で開かれた。初めて一泊を兼ねた2日間の集いとなった。大阪や兵庫頸損からも、10月舞洲での宿泊体験を経て2名の受傷年数の浅い、宿泊経験のまだ少ない頸損者に遠方への旅を体験してもらった。宿泊の体験や旅は自立生活へ向けての第一歩でもある。今年の集いのテーマは「四国の田舎で自立生活を実現するには」。1日目に、基調講演として兵庫頸損連の宮野事務局長が「田舎に住んで自立生活は実現可能か」と題して、兵庫県のいわゆる田舎での自らの自立生活の経過や課題など語った。都心部とは違った、交通アクセスの問題、福祉サービスの未成熟、介護者の慢性的な不足、それら全般に対する行政の不理解など、地方で暮らす重度障害者の困難さが浮き彫りになりつつも、それでも施設や親元だけでの暮らしでなく、あるいは都心部に移って暮らすのでもなく、自分が住み慣れた地域でたとえ田舎であっても自立生活は可能であることが確認された講演であった。その後、四国4県から集まった参加者のフリートーク。各県それぞれの、頸損者の抱える課題や情報交換が2日間に渡って行われた。また、1日目の夜にはホテルで交流を目的にした歓迎夕食会、その後もホテルの部屋で集まった皆でアルコールを交えながら遅くまで楽しい交流は続いた。この四国頸損連絡会の集いは、今後四国での頸損連全国大会開催を予感させるような充実した内容であった。
☆〜参加された方からのコメント〜☆
大阪頸損連絡会 山田 正人
今回、四国頚損連絡会の集いに参加させていただいて、まず最初に印象を持ったのは電車です。大阪から岡山までの新幹線は大丈夫でしたが、岡山から伊予三島までの特急電車がアンパンマン電車で、その電車には車椅子の場所が無かったため自動販売機が置いてあるちょっとしたスペースに自分達は乗ってて、そこは空調がきいてない為か空気がすごく悪いのと、揺れがきつかったので少し酔いあまり快適とは言えませんでした。でも瀬戸大橋を渡っているときや四国の山や海の景色は綺麗でした。
そして伊予三島駅に着いて会場へ向かう道中「歩道が全然ないなぁ」と思いつつ会場へ到着しました。会場に着いて、宮野秀樹さんの講座の話を聞いて印象に残ったのが、地方の公共交通機関の問題で、地方では自家用車で外出することがメインで、電車などをあまり使わないということです。この件は地方では都市部と違ってかなりバリアがあるからで、地方では無人の駅があったり、電車に乗るためのスロープがすべての駅になかったり、駅へ行くまでの道中歩道がなかったりで、いろんな問題があるから使いたくても使えないんだと思いました。
今回、四国の頚損連の方々や宮野さんやいろんな人の話を聞かせていただいて、とても勉強になりまだまだ自分は知らないことばかりで、何もできてないと思いました。でも今回自分の中で少し成長できました。ここ2ヶ月ちょっとで頚損連以外の行事含め4度の宿泊があり、最初は初めての宿泊で床擦れの不安や失便などの不安でリュック2つにエアマットと、かなりの大荷物で行ってたのが、2回目、3回目となるごとにエアマットを持っていかなくなったり、着替えが2セットだったのが1セットになったりで、ちょっとずつ荷物が減り今回はリュック1つになり自分自身少し成長できたのではないかと思いました。
四国頚損連絡会の集いに参加させていただいてありがとうございました。
兵庫頸損連絡会 山本 智章
今回初めて愛媛頚損の人たちと会って田舎での自立生活についての話を聞いている中で気になったのは、外出でヘルパーを利用いているのかという話で、ほとんどの方が利用していない事です。その理由には家族と出る方が安心で逆にヘルパーは不安、時間はあっても事業所がヘルパーを派遣してくれない、利用する必要がない等でした。そういう話し合いで思ったのは、なんで外出の時にヘルパーを利用しないのか?ということです。僕の場合は最寄り駅まで親に送ってもらい駅からはヘルパーと電車で外出しています。最初の方は電車に乗ること自体が不安だったけれど外に出て行くのが好きで、あと親と外出する事に気を遣うのでヘルパーとの外出にすぐに慣れました。僕が外出している時に親は多少ですが自分の時間が作れるので親としてもヘルパーと外出している方がいいみたいです。
実際に明石から伊予三島まで電車で行ってみて、岡山から伊予三島間が電車の揺れが激しかったのと駅に着いて降りる時にスロープの角度が急で困りました。それだけ電車とホームとの段差が大きかったと思います。駅によってエレベータもない所や電車に乗るのに前もって連絡をしとかなければ駅員が対応してくれない・・・そうなれば電車での移動は難しく、車が多くなる、ただ車での移動が多くてもヘルパーが自家用車を運転できないからヘルパーを利用したくてもできない事などが公共交通や移動で困っていると感じました。
1度目の大阪での宿泊訓練は電車とバスに乗り無事に目的地まで行けるのかと「不安」でしたが、今回は2度目の宿泊だったので「不安」より「楽しみたいな」という気持ちで四国に出発できた事が精神面で大きく変わっていたと思います。7日は汗が出るぐらいの快晴で瀬戸大橋から見える景色がとても綺麗で感動でした。夕食会では皆さんと会話も弾み楽しい時間を過ごせ、その後の反省会では皆で喋ったあとに鳥屋さんがお酒に酔って眠りに入ったので解散になりました(笑)僕もお酒を呑んでいたので夜はぐっすり眠れて良かったです。
今思うと1度目の大阪の宿泊訓練に参加して良かったです。それから電車で遠出ができるという自信がつきました。同じ障害を持つ人たちと直接会って色んな情報交換ができとても良かったです。これからも、このような集まりにどんどん参加していきたいです。
〜『四国頸損連絡会の集い』 第1日目講演資料から〜
テーマ:四国の田舎で自立生活を実現するには
講演会 田舎に住んで自立生活は実現可能か
○プロフィール
宮野 秀樹(みやの ひでき)
1971年 兵庫県加東郡社町(現加東市)生まれ。
1992年 交通事故により第4番頸髄を損傷、首から下が全く動かない重度身体障害者となる。
2002年 ひとりの市民として地域の中で生活することを目的として
NPO法人ライフサポートはりまを設立。
2004年 自らも生まれた社町でひとり暮らしを開始。
現在、同法人理事、兵庫頸髄損傷者連絡会事務局長および
全国頸髄損傷者連絡会事務局長補佐を務める。
重度障害者の自立支援およびセルフヘルプ活動を展開中。
主催者のメッセージ
「四国頸損連絡会の集い」のメインテーマは、「四国の田舎で自立生活を実現するには」を掲げて取り組んでまいりました。今回は兵庫県で先駆的な取り組みを実践されている宮野秀樹氏に講演を頂くと共に、財政基盤の弱い四国の自治体において、いかに重度障害者が自立生活に取り組めばよいかについて話し合って行きたいと思います。
四国でも人工呼吸器を使用した頸損者が自立生活を実現しています。その一方で、つい最近ようやく高知県内のある市で24時間公的介護保障が実現しました。どんなに重度の障害があっても地域で暮らせるよう24時間介護保障や制限なく利用できる入院時のヘルパー派遣などの実現を目指して取り組んで行きたいと思います。
「四国頸損連絡会の集い」が重度障害者の自立生活を実現する、その一助となれば幸いです。参加頂いた皆様の活発な議論を期待しております。