頸損だより2010夏(No.114) 2010年6月20日発送

特集

トランスファー(移乗)

ベッド〜車いす間への移乗 後編



頚髄損傷者の方は、障害の程度・間接可動域・痙性(けいせい)・年齢などで移乗動作や移乗方法に違いがあります。自分で移乗する方、介助者による移乗(1人介助・2人介助・複数人介助・リフターでの介助)などがあります。今回は20名の方々にヒアリングを行いました。(頚髄損傷者のレベルは様々です)結果、いろいろな移乗の仕方がありました。
今回は介護リフトを使用した移乗を紹介したいと思います。今の移乗の仕方でQOLが下がっている方がいれば参考にして頂きたいと思います。
[岩本 泰嘉]

<内 容>
1.いろいろな移乗
2.製品紹介

1.いろいろな移乗


1人介助

○ 介護リフトなし
○ 介助人数は1人。
1.幅の広い布の端をマジックテープで止めた紐を用意します。(幅は約10cm程度が理想)
2.紐を臀部か腰部に敷き、膝にも紐をかけてマジックテープで止める
※膝にもベルトをかけると脚が開かないので、介助者もやり易い。
3.身体を起こし、この態勢から紐を臀部か腰部に結び、その紐を持ってお尻を浮かして、そのまま横付けした車いすに体をスライドさせて着地させます。(ズボンやパンツが股に食い込む事が無いので収尿器を付けていても安心)
※できれば紐を臀部に敷いた方が、座る姿勢のまま移乗できるので介護される側もシーティングポジションがとり易い。

A 氏
○ 介護リフトなし
○ 介助人数は1人。
○ スリングシートなどを設置する時間がかかるので、介助者にとっては直接移乗介助した方が楽との事で現在は床走行式リフトは持っているがほとんど使用しない。
1.この態勢から腰ベルトを持ってお尻を浮かして、そのまま横付けした車いすに体をスライドさせて着地させます

2人介助
○ 介護リフトなし
○ 介助人数は2人。
1.ベッドを車いすより高くして、降りるような状態で移動の準備をします。
2.背もたれを少し起し座位に近い姿勢にします。
3.上半身:腋に腕を入れて抱え込むようにします。下半身:ふくらはぎと膝を抱えるようにします。
4.タイミングを合わせて、車いすへ移動します。
※ポイントは、痙性がとても強く、時々、痙性でお尻が跳ね上がり滑り落ちそうになるので、ゆっくり膝を曲げ移動中も座位の姿勢を保ってもらいます。

I  氏
○ 介護リフトなし
○ 介助人数は2人。
○ リフトだと時間がかかるので尿漏れしてしまうかなと、腹圧もかかるし尿がでやすくなる。
  収尿器でレッグバッグに流しているので、お尻が下がって膝が上がると逆流してしまう。
  マンパワーだと一瞬で済むので漏れが殆どない。
1.移動方法は2人で一人は背後から両脇を一人は足を抱える。
※男2人だとベッドから離しているが、男女混合や女2人だと、ベッドにべた付け。車イスに体が当たらないように、右のアームレストを外す、後はヘルパーさん のやりやすいように。
ヘルプに来てもらう事業所、性別等バラバラなので微妙に違います。

Y 氏
○ 介護リフトなし
リフターは現在使用していません。ネットタイプのものを使用していましたが吊り上げると体が折り曲がり、呼吸ができなくなるからです。
○ 介助人数は4人。
○ 移乗はスライディングボード(ビニールを巻いたダンボール)を背中に敷き込んで4人がかりで滑らせて乗り移ったところでダンボールを抜きとっています

M 氏
○ 側方アプローチ  ベッドから車椅子・車いすからベッドに移乗する時
○ 移乗時の介助者なし
1.車椅子をベッドに横付けして、プッシュアップで移乗

M 氏の移乗時の工夫
○ 車いすを固定する為の工夫
車椅子の位置は必ず、ベッド柵と、ベッド本体?の隙間に着けています。
この隙間がなければS管フック(ベッドと車椅子を固定する道具)が必要です。
S管フックは円柱状の棒を、ベッド柵を取り付ける穴に差し込んで使用します。
現在、S管フックは使用していません。

N 氏
○ 側方アプローチ  ベッドから車いすに移乗する時  ○ 移乗時の介助者なし
1.自分で足をベッドの右端の方に移動させて、プッシュアップでお尻もベッドの右端の方に移動します。 
2.右手を車椅子のクッションの左端前に付いてプッシュアップでお尻をベッドの右端ギリギリまで移動させた後、右手を車椅子のクッションの右前横のフレームに付きます。
3.プッシュアップでお尻を車椅子のクッションに乗せ、その後プッシュアップでお尻を後ろに移動させて深く座ります。
4.左腕の肘の内側を車椅子の押し手(グリップ)に引っ掛けて身体のバランスを取りながら、右手首を右足の膝の下に引っ掛けて、手首の背屈を使って右足をベッドから車椅子のステップベルトに下ろします。左足を下す時は、4の逆パターンで。
5.介助者に靴を履かせてもらって、プッシュアップで自分の一番いい位置に座り直します。
○ 側方アプローチ  車いすからベッドに移乗する時   ○ 移乗時の介助者なし
1.一人の時は自分で靴を脱ぎますが、介助者がいる時は介助者に靴を脱がせてもらいます。
2.そっくりかえるようにして、お尻を車椅子のクッションのできるだけ前の方にずらします。
3.右腕の肘の内側を車椅子の押し手(グリップ)に引っ掛けて身体のバランスを取りながら、左手首を左足の膝の下に引っ掛けて、手首の背屈を使って左足を車椅子のステップベルトからベッドに上げます。右足を上げる時は、3の逆パターンで。
4.左手をベッドの真ん中辺、右手を車椅子のクッションの右前横のフレームに付き、プッシュアップでお尻をベッドに乗せます。ベッド上はプッシュアップで移動します。

N 氏の移乗時の工夫
○ 車いすを固定する為の工夫
プッシュアップで移乗するので、車椅子をかなり横に押すことになり、プッシュアップ中に車椅子が動くと落ちてしまうので、車椅子が動いてベッドから離れないように、車椅子のフレームに引っ掛けるフックを作ってもらって使っています。
円柱状の棒を、ベッド柵を取り付ける穴に差し込んで、自由に回転するようにして使っています。
○ 移乗時のベッドと車いすの設置の仕方
車椅子の左前のフレームと、ハンドリムがベッドに付くようにするので、車椅子はやや斜め向いた状態です。
ベッドの方がちょっと車椅子の座面より高くしておきます。
車椅子が動かないようにフックを引っ掛けるのですが、一番前のフレームに引っ掛けると車椅子が動いて外れる可能性があるので、前から2番目のフレームに引っ掛けるようにしています。

S 氏
○ 側方アプローチ  車いすからベッドに移乗する時   ○ 移乗時の介助者1人
トランスファーボードで移乗のリハビリをしていたので、トランスファーボードの購入を考えましたが高価なので、ホームセンターで手頃な板を買い(300円ぐらい)角を削って使っています。裏側に滑り止めのゴムチップを貼って使用しています。
1.ベッドに座るため足の移動を介助してもらいます。
2.ベッド上のモンキーバーで上半身は自分で持上げている間に回転させてもらいながら足を床に下してもらう。
3.腕を引き上げて座らせてもらいます。(痙性が強いので滑り落ちないように注意します。)
4.右手はベッド柵へ、左手はベッド上へ誘導してもらい、車いすを身体の左手に着けてもらいます。
5.身体を少し右へ傾けている間に、ズボンが板の下敷きにならないように注意してもらいながら板を入れてもらいます。
6.板の上を滑らせながら移動します。膝を支えてもらいます。
7.奥まで座るために、プッシュアップの時に膝を押してもらいます。
8.右足の下から板を抜き取ってもらい、移動終了です。
○ 側方アプローチ  ベッドから車いすに移乗する時   ○ 移乗時の介助者1人
1.右太股の下に板を入れてもらいます。ズボンが板の下敷きにならないように注意してもらいながら板を入れてもらいます。
2.膝を支えてもらいながら、板の上を滑りながら移動します。
3.ベッドへ移動し終わると、身体を少し右へ傾けて板を抜き取ってもらいます。
4.ヘルパーさんに車いすを移動してもらいます
5.身体を自然に右側へ倒れ込むようにして横になります。して横になります。
6.同時に足をヘルパーさんにベッド上へ乗せてもらいます
7.ゆっくり足を下ろしてもらい、移動終了です。

斜め前方アプローチ
○ 斜め前方アプローチ  車いすからベッドに移乗する時
1.斜め前方アプローチ(車いすからベッド)では、足をベッドに上げます。基本は膝の下に手を入れて腕を曲げる力を利用して持ち上げますが、手で足あげが困難な場合は足あげ紐等を利用して行います。三角型トランスファーボードは手作りです。 足先にはスライディングシートを設置して滑りやすくしています。
2.体を前方に倒して手をボードまたは車いすのタイヤ周囲に置いて臀部を前方に移動します。
○ 斜め前方アプローチ  車いすからベッドに移乗する時  つづき
3.ベッドのマットレス上に臀部がのると側方に移動します。
※下記の前方アプローチでは移乗後90度方向転換が必要だが、これは方向転換角度が半分でよい。

前方アプローチ
○ 前方アプローチ  車いすからベッドに移乗する時
1.前方アプローチ(車いすからベッド)では、足をベッドに上げます。基本は膝の下に手を入れて腕を曲げる力を利用して持ち上げますが、手で足あげが困難な場合は足あげ紐等を利用して行います。車いすとベッドの間が開くため、トランスファーボードを使用します。障害の程度などによりボードの形状が異なります。足先にはスライディングシートを設置して滑りやすくしています。
2.体を前方に倒して手をボードまたは車いすのタイヤ周囲に置いて臀部を前方に移動します。
3.ベッドのマットレス上に臀部がのると側方に移動します。

2.製品紹介


◆トランスファーボード(標準型)
○ベッドのサイドレール取り付け穴に差し込んで使用します。
製造販売元: 株式会社 有薗製作所
ボード寸法: (幅×奥行×厚さ)
770mm×200mm×33mm
価格   : \39,900-(税込)

◆スライディングシート(移座えもんシート)
○シートを体の下に敷き込むのが簡単で、体を滑らせることで容易に体を動かす事ができます。
製造販売元: 潟c潟gー
サイズ  : 75×75cm
(両端ヒートカット処理)
価格   : \2,625-(税込)

製品購入に関しては、メーカーあるいは介護機器の販売・レンタル業者に問い合わせて下さい。
(メーカーに問い合わせ、最寄りの代理店を聞いて下さい。)
◆トランスファーボード
・株式会社 有薗製作所:北九州市八幡東区東田1-7-5 TEL 093-661-1010
※(最寄りの介護機器の販売・レンタル業者を聞いて下さい。)

◆移座えもんシート
・潟c潟gー 大阪営業所:大阪市鶴見区今津南3-5-8-101
TEL 06-4258-7105


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