頸損だより2010夏(No.114) 2010年6月20日発送

障がい者制度改革推進会議報告



●今年から障害当事者委員が半数以上を占める「障がい者制度改革推進会議」が開かれています。5/17までに11回そして総合福祉部会なども開かれていますが、今回は第9回の様子を賛同団体メーリングリストに流れている情報からお伝えします。
(事務局:鳥屋)

■ 第9回障がい者制度改革推進会議 省庁ヒアリング
議論白熱「インクルーシブ教育」 (法務省、文科省、総務省)

 第9回障がい者制度改革推進会議が、4月26日(月)福島大臣の出席のもと行われた。

 この日は法務省からのヒアリングをまず最初に行った。中村政務官は「民事、刑事ともに手話通訳など障害者に対する適切な配慮をこれまで行ってきているが、みなさんから足りないところがあれば意見を出して頂ければありがたい」と述べた。
 東室長からは「そのような配慮は裁量で行っているのであり、法的な裏付けがあって行われているのではないのではないか」「差別禁止という視点できちんと明確化させたほうがよいのではないか」と総括的な提起がなされた。
 さらに、他の委員からは「手話通訳などの訴訟費用はどなっているのか」「通訳が付けられていないケースもある」また、「要約筆記も重要」「実態として知的障害者に対する適切な配慮がなされていない」などなどの発言が出た。
 これに対して法務省側は「手話通訳などは訴訟費用に含まれていて、敗者側負担」「通訳が付けられていない事例は承知していない」「知的障害者への対応は文書で指示している」などと噛み合わない回答が多かった。

 人権救済機関の設置については、「そう遠くはない時期に実現をするよう検討したい」と述べた。

 続いて文部科学省のヒアリングに移った。
 高井政務官が出席し、「文科省としてはインクルーシブ教育と特別支援教育は矛盾しないし、両立するもの」との考え方を示した。一方で、「地域の学校を原則にした場合の予算は、特別支援教育を基本とした場合の約10倍のコストがかかる」という試算も明らかにした。   

 これに対して、東室長から総括的質問で「就学先の決定のあり方について、教育委員会の権限と保護者の権限とどちらが優先されるのか」「去年の民主党の政策では、インクルーシブ教育を進め、保護者本人の希望で学校を選択できるようにする、とあるが、この点についてどう考えるか」とした。これに対し、高井政務官は「保護者の意見を十分に聞きながら総合的に決めていくということであり、制度的には就学先の決定権は教育委員会にある」と答えた。
 福島大臣も「障害のある子が地域から排除されている実態がある。文科省は考えてほしい」と異例の注文をした。それに対して、高井政務官は「そのような現実はあってはならないと考える」との認識を示した。
 地域の学校に子どもを通わせている親もヒアリングで発言「障害が重いからということで、親が付き添いを強要され、様々な場面で淋しい思いをさせられている」と述べた。
 その他、全国特別支援学校長会、全国特別支援学級設置学校長協会、全国特別支援教育推進協会が発言し、「就学先の一元化は混乱を招く」「特別支援教育は子どものニーズにあった教育をしている」と発言する一方で、障害児を普通学校へ・全国連絡会の徳田氏は「障害の重い子を持つ親たちは特別支援学校に行かなければならないというふうに行政から刷り込まれてしまっている場合が多い」と述べるなど、様々な立場からの意見が出されたが、文科省から改めて文書で回答をすることになった。

 最後に総務省。階政務官は「政権放送の字幕付きについては、原口総務大臣が参院選を前にNHKと交渉をしているところである」と語った。公職選挙法改正問題と絡み、微妙なニュアンスであった。成年後見を受けている人たちの選挙権を付与の問題は、「単にこれまでの経過の問題であり、本質的な問題ではない」という認識が明らかにされ、「検討していきたい」と述べた。
 
 最後に、尾上委員から「地域主権の考え方が内閣府などを中心に出されているが、障害関係法令も含まれており、重大なので、関係省庁とのヒアリングを行ってほしい」との提起があった。

 次回は第10回。5月10日(月)厚生労働省などとのヒアリング。


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