頸損だより事務局通信 No.1


大阪頸損連がパソコンをGet?!

連絡会では昨年秋から、電子メールを使って会員どうし情報交換が行えるようにと連絡会メーリングリストや、年4回発行の会報だけでは案内しきれない情報などを掲載するため連絡会ホームページの活用をはじめました。

最近では企業だけでなく、どこの一般家庭でも一台はパソコンを持っているという時代になってきています。パソコン普及率の著しさには目を見はるものがあります。

連絡会でも当然パソコンを使った作業がどんどん増えてきており、連絡会メンバー各自のパソコンだけでなく、連絡会で所有のパソコンが欲しいなあ、必要だなあ、と思っておりました。そんな思いの中、犬も歩けば棒にあたる?!協力会員の川野さんがいい話を持ちかけてくれました。

川野さんの勤める(株)NTTデータで、社員のボランティア活動を支援するというプログラムがあるとのこと。

頸損連で申請してみない?と言ってもらった瞬間に、ほなお願いします。と条件反射。「山」と言えば「川」、「ツー」と言えば「カー」、「あ」と言えば「うん」。そんな感じでした。

はじめは、世の中ボランティア活動をしてるグループは山ほどあり、まさかウチが選ばれんわなあと思っていましたが、あれよあれよという間に物資の支援が決定されました。

そしてついに3月、われわれの手元に届きました。

われわれが選定したパソコンは、IBMノート・パソコン(ThinkPad)CD-ROM・フロッピードライブ標準搭載のオールインワン・タイプ。おーっ、すぐれもの・・・。プリンタはエプソンのカラープリンタ(カラリオ)。ノートパソコンなだけに活用目的にあわせて持ち運びも可能。ひょっとすると行事の時にも姿を現す日がくるかもしれませんね。

まずは何をさておいても機関誌作りの作業にフル回転で使われはじめました。今後いかにこのパソコンを活用させていくか、みなさんからのご意見もお待ちしております。

パソコンの支給にご尽力いただいた川野さん、NTTデータの皆様、本当にどうもありがとうございました。




Newsあれこれ

大阪市営地下鉄車椅子に優しく変身

今春には全駅に乗降スロープ

読売新聞1999年(平成11年)2月16日(火曜日)




車椅子の人がホームから電車に乗り降りしやすいようにと、大阪市営地下鉄の各駅で、折り畳み式スロープ板の設置が進められている。私鉄に比べ対応が遅れていた市交通局が、障害者らの声にこたえた。今春までにはニュートラムも含め全百十九駅に計百七十台が備え付けられる予定だ。

設置を求めていたのは、小児まひの後遺症で電動車いすを使っている小田実治さん(淀川区木川西四)ら。

小田さんの話では、地下鉄を利用する際は駅員が介助してくれるが、電動車いすは車体だけで八十キロ近い重さがあり、駅員一人では抱えきれない。しかも、車両とホームとの段差は高いところで三十センチ近くあり、丁寧に降ろしてもらえなかった時は、その衝撃で首や腰に痛みが走ることがある。駅員から「腰に負担がかかってしんどい」という声も聞いた。

阪急電鉄がオーストラリア製の折り畳み式スロープ板を設置していたことから、一昨年八月、市交通局に「同じものを備えてほしい」と要望した。スロープ板は重さ六キロ。駅員が持ち運び可能で、地下鉄を利用するとき、ホームと車両の間に渡してもらえば段差を気にせずスムーズに乗り降りでき、介助に当たる駅員の負担も少なくなると考えたという。

これに対し、当初、市交通局の返事は鈍かったが、昨年五月になって、まず一台購入、梅田駅などでテストを重ねたうえ、地下鉄車両に合うよう改良した。すでに五十六駅に七十六台を置いており、今後、残りの全駅に広げ、台数も増やす計画だ。

同タイプのスロープ板は阪急、南海など主な私鉄はもちろん、京都市営地下鉄でも五年前から駅や車両に設置しており、小田さんは「なぜもっと早く、との思いは残るが、すべての駅にまで置いてもらえるとは思わなかった。交通局には感謝している。これが全国的に広がってくれれば」と話している

市交通局は「設置に向け検討をしている時に、小田さんをはじめ、いろんな人の意見を聞き、反映させた」としている。




今度の「街に出よう」が楽しみだあ。私の通学にも使えるかなあ。(鈴木千春)




春のフォーラム「障害者の就労あれこれ」盛大に行われる

3月22日に開かれたフォーラム「障害者の就労あれこれ」も連絡会外部の方を含め予想以上の参加者数でとても成果があったように思われます。詳しい報告は次回「頸損だより」に掲載を予定しています。

フォーラム開催前に3月15日付大阪新聞で扱っていただいた記事を紹介します。




中途障害者5人、就労体験を語る

情報交換と活発な交流期待




交通事故やスポーツ事故などによって頸椎や脊髄を損傷し、体に障害をもつことになった人たちのグループが二十二日、門真市なみはやドームで障害者の就労について考えるフォーラムを開催する。会のメンバー5人がパネリストで出席、働くことの意味と現状を討論する。会の大きな期待は、多くの人たちとの心通う交流だ。(芹澤隆子)




門真市で22日フォーラム




「重度の障害をもつ者にとって情報の収集は、自分の生活を左右する重大な問題です。仕事をもったり、地域で普通に暮らしていくためには、障害をもつ者同士の情報交換はなくてはならないものです」

フォーラムを主催する大阪頸随損傷者連絡会の事務局メンバーとして、会報誌の編集やイベントの企画運営に奔走する鳥屋利治さんは、こう話す。

鳥屋さんの活動の足は車いすと愛車。アクセル、ハンドル等を一本の電子制御による操縦レバーで運転できるような装置を備え付けてある。鳥屋さんは現在、北区中之島の繊維メーカーに勤務して、コンピューターによる情報処理を担当している。

同会は全国組織の頸随損傷者連絡会の大阪支部として現在ボランティアも含めて約二百人の会員が参加している。会ではこれまでにも「自立生活あれこれ」「障害者の性について」など、関心の高い身近なテーマで勉強会を開いてきており、障害者自身ばかりではなく医療関係者やボランティアなどから大きな反響を得てきた。

今回のテーマは就労。「ほとんどの人が、仕事や勉強半ばにして突然障害者となった人たちです。不自由な部分はあっても働くことへの意欲は強いですね」鳥屋さん。

しかし、現実にはその機会は十分とはいえず、階段、トイレ、オフィス機器などの設備から「障害のある人に、どう接してよいか分からない」「分からないからできるだけ距離をおこう」とするなど心の問題まで、職場で直面する課題は多い。

今回のフォーラムのパネリストはすべて中途障害者。大企業の子会社として障害のある人を多く採用している特例子会社で働く人や、出版社に勤める人。事故に遭う前の会社に復帰した人や、公立のリハビリテーションセンターから企業に転職をはかった人など、その多彩な就労体験を語り合う。

「僕のような車いすの人が中之島や御堂筋を歩いているのが珍しくないような社会であってほしいですね。障害のある人もそうでない人も、社会で当たり前に働くことの意味を、いっしょに考えましょう」と鳥屋さんはフォーラムへの参加を呼びかけている。

また、同会では介助犬使用者のモニターを募集したり、福祉機器のレンタルや給付、補助の情報を提供し、その窓口となるなど、活発な運動を展開している。




追悼妙

読売新聞1999年(平成11年)2月14日(日曜日)

大阪府立大教授(社会福祉学)定藤丈弘さん(1月30日死去、56歳)

「車いす」の視点で新しい福祉提言




「障害を持つ大物理学者はいるけど、障害を持つ大福祉学者はいない。神様が君を選んで与えてくれたチャンスだよ」。七六年一二月。関西大学教授の一圓光彌さん(55)は病院で定藤さんに語りかけた。

高校以来の友人でテニス好きの気鋭の福祉学者定藤さんが、交通事故で首の骨を折り、四肢まひの障害を負った。ベッドにいるそんな彼を励ましたかった。

数か月後、一圓さんに手紙が届いた。「当事者の立場から福祉を考え、見直して新しい福祉を構築するために、後半の人生のすべてをかけたいと思います」

リハビリの合間に、きっと両手で鉛筆を挟んで書いたのだろう。少し乱れてはいたが、力強く丁寧に並べられた文字を、一圓さんは鮮明に覚えている。

定藤さんは、事故から十か月で復職を果たし、妻の邦子さんと二人三脚で研究に励んだ。八七年、障害を持つ人たちの自立生活運動の拠点、米・バークレーに留学した。この年の予定者は、里見賢治・現社会福祉学部長(56)の番だった。「いつ動けなくなるか分からない。先に行かせてもらえないだろうか」と頼んで譲ってもらった。

帰国後、重度障害を持つ学生のサポートシステムや障害者の包括的差別禁止法(ADA)の判定運動を伝えた。「電動車いすで自由に動ける街を、重度の障害があっても障害なく学べる大学を」。当事者の立場からの提言は共感を呼んだ。九二年、公共的な建物にスロープなどを義務づける福祉のまちづくり条例が大阪府にでき、全国に広がる。

自宅から最寄りの地下鉄の駅にも、エレベーターが設置された。「梅田の書店まで電動車いすで、一人で行けるようになったんですよ」。知人に弾んだ声で語ったという。そして、府立大は今年度、障害者特別選抜入試制度を導入した。

教会での前夜式と葬儀には、百人近い車いすの人たちをはじめ、約千人が参列し、建物の外にまであふれた。「重度障害者の自立生活と社会参加の機会平等の実現を」というメッセージが、障害を持つ学者によって、より多くの人々の心に刻まれた。そう実感させる感動的な光景だった。(森川明義)

写真は省略しました。

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