2001全国頸髄損傷車連絡会全国総会「京都大会」フォーラム
人工呼吸器使用者の自立
〜人工呼吸器使用者が完全参加出来る社会に〜
5月26日(土)、ぱるるプラザ京都6階会議室において、全国頸髄損傷者連絡会全国総会京都大会のフォーラム「人工呼吸器使用者の自立」が行われました。カナダからお招きしたウォルト・ローレンス氏の人工呼吸器使用者の自立生活における先進的な取り組みについてのお話は大変興味深いものでした。また、内外からの多くのご参加のほか、行政関係の方々のご来賓や、マスコミ関係者の取材もあり、広く社会に人工呼吸器使用者の生活向上をアピールするよい機会になったことと思います。詳しくは頸損だより2001夏(No.78)「ウォルト・ローレンス氏来日記念!!その素顔に迫る!」をご覧ください。
講演中のウォルト・ローレンスさん
- 第1部 基調講演 「私の人生」
- ピアカウンセラー ウォルト・ローレンス氏
- 1968年17歳の時、ダイビングに失敗し受傷されたC2.C3の頸髄損傷者です。長期の離脱訓練により睡眠時のみ人工呼吸器を使用しています。カナダのブリティッシュ・コロンビア州において自立生活運動のリーダーであり、リハビリテーションセンターの高位頸髄損傷者病棟の常勤ピアカウンセラーでもあります。
- 第2部 シンポジウム 「人工呼吸器使用者の自立」
- シンポジスト
- 後藤礼治氏
- 演題 「呼吸器からの離脱と社会生活」
- 1966年生まれ。34歳。鹿児島市在住。両親と3人暮らし。1985年の学生当時、交通事故で頚椎1-2番(歯状突起)を骨折する。当初、呼吸器官を含めた肩から下が全て麻痺し、人工呼吸器を使用していた。しかし、離脱のためのリハビリ訓練の結果、事故から約3年後、完全離脱に成功する。自宅のマンションの管理業務を口で操作するパソコンで手伝っている。「鹿児島ボランティアネットワーク」代表。車椅子障害者の社会参加や自立を支援することを目的に介助ボランティアの紹介を行う団体「ひまわり電車」の実行委員長。障害者とボランティア合わせて200人程で公共交通機関を利用し旅行を行うイベント。風船バレーボールチーム「BigWing」代表。
- 佐藤きみよ氏
- 演題 「ベンチレーターを付けての自立生活」
- 1962年札幌うまれ。障害名 進行性脊髄性筋萎縮症。12歳の時からベンチレーターを24時間使用する。90年より、長かった施設・病院での生活にピリオドをうち、自立生活を始める。97年、アメリカ セントルイスで開催された国際自立生活会議に参加。ベンチレーター使用者ネットワーク代表。自立生活センターさっぽろ代表。
- 宗近眞理子氏
- 演題 「人工呼吸器利用者が自分の生活を構築して行くためには?」
- 1985年、国立近畿中央病院付属リハビリテーション学院作業療法科卒業。小児施設や大学病院に勤務した後、1998年4月から1999年1月までカナダのG.F.Strong Rehab Centre.Mary Pack Arthritis Centre.B.C.Children's Hospitalにて研修。帰国後、現在は東京都内の診療所で訪問リハビリテーションに携わっている。
- アドバイザー
- 松井和子氏 浜松医科大学看護学科教授
- 演題 「日本のベンチレータ頸損者の社会参加に関する実態」
- 1965年東大医学部衛生看護学科を卒業後、同大学院博士課程を修了。1972年から25年間東京都神経科学総合研究所にて常勤研究員を務める。浜松大医学部臨床看護学教授を歴任し、現在は国立看護大学校看護学部長。頸髄損傷により中途外傷を負った人たちに対して専門家として自立に向けたアドバイスを提供するなど支援を続けている。
著書に「頸髄損傷−自立を支えるケアシステム」(医学書院刊)他。
- コーディネーター
- 日時:2001年5月26日(土)
- 会場:ぱるるプラザ京都 6階会議室 電話:075-352-7444
- 資料代:500円
- 主催
- 共催
- 後援
- 京都府、京都市、京都商工会議所、京都新聞社会福祉事業団、(株)京都放送、NHK京都放送局、京都府医師会、京都作業療法士会、京都理学療法士会、京都府社会福祉協議会、京都市社会福祉協議会(予定)、京都府教育委員会(予定)
- 協力
- 運転ボランティア友の会、京都中ロータリークラブ、インフォメーションオフィス・ライザー、(株)オムロン、(株)京セラ、グランヴィア京都ホテル、(株)サンワ、(株)ジェイティービー、新都ホテル、(株)任天堂、(株)フジ・アールシー、(株)松永製作所、(株)YAM、(株)ワコール
- 来賓
- 厚生労働省政務官 奥山茂彦氏
- 京都府知事 荒巻禎一氏
- 京都市長 桝本頼兼氏
フォーラムの趣旨
私たち頸髄損傷者(以下、頚損者)は、突然の交通事故やスポーツ事故、労災事故などによって頸髄を損傷したため、身体に著しい障害を負っています。わずか30年前には余命数カ月といわれましたが、医療技術の進歩により、障害を持たない人と変わらぬ寿命となりました。この間に不完全ではあるが、従来と比べるとリハビリテーションのできる機関・福祉制度は充実してきており、多くの頚損者が自立し社会参加の機会が得られるなどの改善は見られます。しかし、頚損者の中でも(頚損者に限らず)、人口呼吸器を使用する人に対しては、受け入れる医療機関すら少なく生活環境は変わっていないのが現状です。欧米では人口呼吸器を使用する人でも、障害を持たない人と同様に自立生活を営み、職場・学校等へ通い自己現実を図っています。人口呼吸器を使用する会員から「受け入れてくれる医療機関がない、どこでもいいから入れてくれる病院はないだろうか、私たち(家族を含め)はこれからどうすればいいのだろうか」という相談を持ち掛けられた時、私たちは欧米との格差・立ち後れを感じざるを得ないのです。
このフォーラムでは、カナダのバンクーバーからウォルト・ローレンス氏を招いて、基調講演を行って頂きます。彼は人工呼吸器使用者であるとともに、ピアカウンセラーでもあります。また、「人工呼吸器使用者の自立」と題してのシンポジウムを開催します。会員をはじめとする頚損者はもちろんのこと、その他の障害者や行政・政治・医療・リハビリテーション関係者、さらにはボランティアや一般市民等様々な方の参加を募り、この問題をともに考えていきたいのです。そして、「人工呼吸器使用者が安心して入院できる病院の確立」と「人工呼吸器使用者が独立できる社会資源の確立」を実現したいと考えています。また、このフォーラムは、重度障害者の福祉の向上、ボランティア育成に向けての啓蒙・啓発をも大きな目的の一つと考えています。
京都頸髄損傷者連絡会