頸損者の医療的ケアを考える

吉田氏質疑応答


2003年9月21日に行われた秋の講演会「頸損者の医療的ケアを考える」で、一部後日お答えすることになっていた吉田氏の質疑応答を載せました。


Q01,停電時の人工呼吸器のバッテリーはどうしているのか?

Q02,音声入力で日本語入力をしたときに誤字脱字などをどうやって修正するのか?

Q03,人工呼吸器の仕組みは?

Q04,在宅で受けている医療サービスは?

Q05,支援費の利用は?また、家族の負担は軽減されたのか?

Q06,今やっているリハビリとはどのようなものか?

Q07,車いす、ECSなどのフォローの相談はどうしているか?

Q08,今回の用意はすべてを1人で用意したものか?

Q09,今のモチベーションの原動力は何か?

Q10,呼吸器をつけていても普通に食事はできるのか?

Q11,今は幸せか?

A01,停電時の人工呼吸器のバッテリーはどうしているのか?

人工呼吸器の内蔵バッテリーは4時間持つので大抵のことはこれで対応できます。

今使っている呼吸器専用の外部バッテリーもあるにはあるのですが、直流と交流の変換ケーブルを使うことで自動車用の12ボルトバッテリーを代用品として使っています。汎用性もありますし何より安価です。

またこれなら地震が起きて電力が途絶えても近所の方にお願いして自動車からバッテリーを持ってくることもできます。


A02,音声入力で日本語入力をしたときに誤字脱字などをどうやって修正するのか?

その時はスイッチでマウスカーソルを動かして画面上のソフトウエアキーボードをクリックして1文字ずつ修正していきます。音声入力がうまく使えるようになるまでの修正作業はかなり手間取りました。


A03,人工呼吸器の仕組みは?

のどの気管の上の部分をカニューレという管を差し込んであります。カニューレは衛生上の問題と傷口の癒着を防ぐために隔週の割合で交換します。

カニューレについているカフは小さな風船になっていて気道につばや飲み込んだ食べ物が流れ込まないようにするため気道内部で膨らませます。また、肺から空気が逃げないようにする栓の意味もあります。

病院ではカフの空気を抜かないようにいわれます。病院で肺の内圧などの管理上の問題や飲み込んだものが気管に流れこんだりする場合はやむを得ないとして、在宅の人の多くは自分を含めて抜いているようです。カフの空気を抜くとすき間から空気が口の方に逃げるので慣れてくると自分で肺の内圧をコントロールできるようになるので楽になります。それから漏れた空気を使って声が出せるようにもなります。


A04,在宅で受けている医療サービスは?

気管に挿入しているカニューレを交換してもらうために2週間に1度の医者の往診を受けているだけです。訪問介護を利用したこともありますがうちにとって使いにくいものだったので今では利用していません。


A05,支援費の利用は?また、家族の負担は軽減されたのか?

自立支援センターのヘルパー派遣と登録ヘルパーを利用しています。人工呼吸器をつけていることなどを含めて市の方と協議した結果、今のところ220時間利用しています。ただし家に合わせた介護に慣れてもらうためのヘルパーの指導は家族がしなければならないのであまり負担は軽くなっていません。それとは別に呼吸器に対応している事業所がほとんどないため時間枠があってもサービスを受けられないこともあります。


A06,今やっているリハビリとはどのようなものか?

今やっているものは関節の拘縮を防ぐためで、機能回復を意図したものではなくリハビリというよりはストレッチと言った方がいいかもしれません。

一時期は呼吸訓練など試したこともありますが、思う通りの結果は得られなかったので今は残された機能を使って自分でできることを増やすようにしています。

機能回復のリハビリに興味があるのでしたらこちらのサイトは参考になるのではないでしょうか。

1度研修会に参加させてもらったことがありますが、なかにはかなり回復された方もいて驚きました。ただし良い必ず結果が出るものではないのでご注意ください。


【せきそんリハビリ連絡会】

http://scirehab.picot.ne.jp/


A07,車いす、ECSなどのフォローの相談はどうしているか?

簡単なところでは訪問リハビリで来てもらっている鍼灸師の先生が、以前は病院のリハビリ室に勤めていたのでよく話を聞いています。詳しいところになると福祉機器の業者に問い合わせたりしています。うちが利用しているのはこんなところです。


アクセスインターナショナル

http://www.accessint.co.jp/

身障者福祉機器の輸入販売


パシフィックサプライ

http://www.p-supply.co.jp/

福祉機器の総合商社


また、使い心地などの感想などはメーリングリストでも質問したりしています。


A08,今回の用意はすべてを1人で用意したものか?

原稿やスライドなどは独りで用意しました。誰も手伝ってくれなかったものですから……

およそ1月の間、毎日2時間くらいは何らかの作業をしていたと思います。

代わりにその他の広報や会場の設営やらは役員会の方におまかせです。


A09,今のモチベーションの原動力は何か?

多分、こういう性格なんですね。あとは強いて言うならこのまま人生を終わらせるにはあまりにつまらないので周りに迷惑をかけながら足掻けるだけ足掻いてやろう、という魂胆です。


A10,呼吸器をつけていても普通に食事はできるのか?

咀嚼と嚥下(読:えんげ、ものを飲み込むこと)が可能であれば問題ありません。ただし麻痺のレベルが上がってくると難しいかもしれません。


A11,今は幸せか?

・・・多分、障害者になって手足が動かなくなったことを指して、そのことを不幸ではないか?と尋ねられていると思うのですが・・・

確かにもしもあの時怪我をしなかったら・・・と思うことはしょっちゅうです。特にテレビなんか見ていると何かしらとても腹の立つこともあります。怪我をしたこと自体は人生最大の失敗だと悔やんでも悔やみ切れません。しかし、“株の損は株で取り戻せ”という格言があるように空けた損をどうやって取り戻すか頭の中はいっぱいで身の上に起きた不幸を嘆いている時間はありません。逆にそのことしか考えられなくなったときのことを思うと怖くてたまりません。そのような状態こそがまさに不幸だと考えています。

この際、幸せの形はともかくとして、どのような些細なことでも自分が不幸だと思い込んでしまえば間違いなくそれは不幸であるに違いないのでそうならないことこそが幸せになるための前提条件ではないかと・・・そうすればその後に幸せのひとつやふたつ転がり込んでくると信じています。


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